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「くらやみの速さはどれくらい」エリザベス・ムーン

2005年01月28日 | 
2005.01.28
 面白かった。アルジャーノンに似ている、と思う。僕が自閉症児の親であることが問題を複雑にしている。自閉症児(者)がこんなふうに考えない事は明らかだ。いかにもこんな風に考えそうだが。こんな風に考えるようになったらもう、自閉症児ではない。だからこんな話は絶対に成り立たない。
 読み始めて、違和感がぬぐえなかった。「これは絵空事だ」。しばらくして、気づいた、これはジャックロンドン、谷口ジローだ、動物小説のようなものなのだ。どちらも、言葉で考えないし、考えられるようになったら、根本的に違うものになってしまう。でも感じていることを言葉に変えれば(そんなことは不可能なのだが)こんな風なのに違いない。
 「アルジャーノンに花束を」を面白く読んだ人には、面白く読めると思う。実はアルジャーノンも僕は若干の違和感があった。これにもある種、違和感がある。自分が自閉症者の親だからなのかどうか、よくわからない。これを読んで自閉症のことがわかったように思われるのがもっとも困る。小説として楽しんで欲しい。

 結末のこと。
 小説の結末を書いてしまうことは不作法だ。不作法なことをしてはいけない、と教わった。多くの人が、最後にある、解説やあとがきから読むと聞いた。なぜ、あとがきから読むのだろうか。正常(ノーマル)な人のする事は理解できないが、それが普通のことなのだ。
 解説に「意外な結末というわけではない。」とあるが、結末は意外だった。いくつかの想定した結末の中の一つだったが、可能性が低いと考えたものだった。「ハッピーエンドに見える結末」とあるが、ぼくにはハッピーエンドかどうか、よくわからない。
「この結果の複雑さは、ちょっと例を見ない。」とあるが、いや、結果は単純だ。複雑なのは、読者の胸に去来するもののことだ。だから、良い結末、名作だと言えるのだろう。

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