法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

自治体の刑事告発の見送りについて

2007-10-05 19:04:13 | Weblog
asahi.com 自治体動かぬなら…社保庁が刑事告発 年金着服

 秋田県でも4市で着服事件が起きていると地元紙が報じている。男鹿市の着服額は194万円とか。

さて,自治体が着服した職員を告発しない理由は,概ね,「全額返還されており懲戒処分等の社会的制裁を受けている」というもの。
しかし,刑事訴訟法第239条第2項には「官吏又は公吏は,その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは,告発をしなければならない。」とある。「その職務を行うことにより」の解釈如何とも関係するが,少なくとも着服事件があった年金課等の責任ある地位にある者には告発が義務付けられていると考えるべきではなかろうか。
もちろん,同第248条には「犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは,公訴を提起しないことができる。」とある。具体的な事件処理として,犯罪の嫌疑はあるが訴追・処罰の必要がない場合は,検察官が起訴猶予とすることはあろう。
全額返還云々は訴追段階で考慮されるべき事情。これを理由とする自治体の告発見送り,問題があるように思われる。


刑事訴訟法の関連条文

第二百三十九条  何人でも,犯罪があると思料するときは,告発をすることができる。
2  官吏又は公吏は,その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは,告発をしなければならない。

第二百四十一条  告訴又は告発は,書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。
2  検察官又は司法警察員は,口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。

第二百四十七条  公訴は,検察官がこれを行う。

第二百四十八条  犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは,公訴を提起しないことができる。

地方公務員法の関連条文

(服務の根本基準)
第三十条  すべて職員は,全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し,且つ,職務の遂行に当つては,全力を挙げてこれに専念しなければならない。

(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)
第三十二条  職員は,その職務を遂行するに当つて,法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い,且つ,上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

(信用失墜行為の禁止)
第三十三条  職員は,その職の信用を傷つけ,又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする