配当権限を株主総会から取締役会に移行,定款変更相次ぐ YOMIURI ONLINE
記事にもあるとおり,定款変更の要件のひとつに「取締役の任期の末日が選任後1年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるものでない」がある。
この種の定款変更を行った場合,株主は,取締役の選任決議時に候補者に対し剰余金配当に係る意思表明を求め,また,利益を生み出せない取締役らを不再任とすることにより,自己の権利を守ることになる。これは,取締役の選任決議が剰余金配当に係る決議の代替機能を果たすことを意味する。
何にせよ,露骨な「定款変更で株主提案を防ごう」式の発想は,機動的な配当決定といった制度導入に係る会社法の狙いからは少しばかりずれているように思える。大和総研某統括次長の指摘はもっとも。
会社法の関連条文
(剰余金の配当に関する事項の決定)
第四百五十四条 株式会社は,前条の規定による剰余金の配当をしようとするときは,その都度,株主総会の決議によって,次に掲げる事項を定めなければならない。
一 配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額
二 株主に対する配当財産の割当てに関する事項
三 当該剰余金の配当がその効力を生ずる日
2 前項に規定する場合において,剰余金の配当について内容の異なる二以上の種類の株式を発行しているときは,株式会社は,当該種類の株式の内容に応じ,同項第二号に掲げる事項として,次に掲げる事項を定めることができる。
一 ある種類の株式の株主に対して配当財産の割当てをしないこととするときは,その旨及び当該株式の種類
二 前号に掲げる事項のほか,配当財産の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは,その旨及び当該異なる取扱いの内容
3 第一項第二号に掲げる事項についての定めは,株主(当該株式会社及び前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては,各種類の株式の数)に応じて配当財産を割り当てることを内容とするものでなければならない。
4 配当財産が金銭以外の財産であるときは,株式会社は,株主総会の決議によって,次に掲げる事項を定めることができる。ただし,第一号の期間の末日は,第一項第三号の日以前の日でなければならない。
一 株主に対して金銭分配請求権(当該配当財産に代えて金銭を交付することを株式会社に対して請求する権利をいう。以下この章において同じ。)を与えるときは,その旨及び金銭分配請求権を行使することができる期間
二 一定の数未満の数の株式を有する株主に対して配当財産の割当てをしないこととするときは,その旨及びその数
5 取締役会設置会社は,一事業年度の途中において一回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当(配当財産が金銭であるものに限る。以下この項において「中間配当」という。)をすることができる旨を定款で定めることができる。この場合における中間配当についての第一項の規定の適用については,同項中「株主総会」とあるのは,「取締役会」とする。
(剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定め)
第四百五十九条 会計監査人設置会社(取締役の任期の末日が選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるもの及び監査役設置会社であって監査役会設置会社でないものを除く。)は,次に掲げる事項を取締役会(第二号に掲げる事項については第四百三十六条第三項の取締役会に限る。)が定めることができる旨を定款で定めることができる。
一 第百六十条第一項の規定による決定をする場合以外の場合における第百五十六条第一項各号に掲げる事項
二 第四百四十九条第一項第二号に該当する場合における第四百四十八条第一項第一号及び第三号に掲げる事項
三 第四百五十二条後段の事項
四 第四百五十四条第一項各号及び同条第四項各号に掲げる事項。ただし,配当財産が金銭以外の財産であり,かつ,株主に対して金銭分配請求権を与えないこととする場合を除く。
2 前項の規定による定款の定めは,最終事業年度に係る計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合に限り,その効力を有する。
3 第一項の規定による定款の定めがある場合における第四百四十九条第一項第一号の規定の適用については,同号中「定時株主総会」とあるのは,「定時株主総会又は第四百三十六条第三項の取締役会」とする。
(株主の権利の制限)
第四百六十条 前条第一項の規定による定款の定めがある場合には,株式会社は,同項各号に掲げる事項を株主総会の決議によっては定めない旨を定款で定めることができる。2 前項の規定による定款の定めは,最終事業年度に係る計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合に限り,その効力を有する。
会社計算規則の関連条文
第百八十三条 法第四百五十九条第二項 及び第四百六十条第二項 (以下この条において「分配特則規定」という。)に規定する法務省令で定める要件は,次のいずれにも該当することとする。
一 分配特則規定に規定する計算書類についての会計監査報告の内容に第百五十四条第一項第二号イに定める事項が含まれていること。
二 前号の会計監査報告に係る監査役会又は監査委員会の監査報告の内容として会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認める意見がないこと。
三 第百五十六条第二項後段又は第百五十七条第一項後段の規定により第一号の会計監査報告に係る監査役会又は監査委員会の監査報告に付記された内容が前号の意見でないこと。
四 分配特則規定に規定する計算関係書類が第百六十条第三項の規定により監査を受けたものとみなされたものでないこと。
記事にもあるとおり,定款変更の要件のひとつに「取締役の任期の末日が選任後1年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるものでない」がある。
この種の定款変更を行った場合,株主は,取締役の選任決議時に候補者に対し剰余金配当に係る意思表明を求め,また,利益を生み出せない取締役らを不再任とすることにより,自己の権利を守ることになる。これは,取締役の選任決議が剰余金配当に係る決議の代替機能を果たすことを意味する。
何にせよ,露骨な「定款変更で株主提案を防ごう」式の発想は,機動的な配当決定といった制度導入に係る会社法の狙いからは少しばかりずれているように思える。大和総研某統括次長の指摘はもっとも。
会社法の関連条文
(剰余金の配当に関する事項の決定)
第四百五十四条 株式会社は,前条の規定による剰余金の配当をしようとするときは,その都度,株主総会の決議によって,次に掲げる事項を定めなければならない。
一 配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額
二 株主に対する配当財産の割当てに関する事項
三 当該剰余金の配当がその効力を生ずる日
2 前項に規定する場合において,剰余金の配当について内容の異なる二以上の種類の株式を発行しているときは,株式会社は,当該種類の株式の内容に応じ,同項第二号に掲げる事項として,次に掲げる事項を定めることができる。
一 ある種類の株式の株主に対して配当財産の割当てをしないこととするときは,その旨及び当該株式の種類
二 前号に掲げる事項のほか,配当財産の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは,その旨及び当該異なる取扱いの内容
3 第一項第二号に掲げる事項についての定めは,株主(当該株式会社及び前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては,各種類の株式の数)に応じて配当財産を割り当てることを内容とするものでなければならない。
4 配当財産が金銭以外の財産であるときは,株式会社は,株主総会の決議によって,次に掲げる事項を定めることができる。ただし,第一号の期間の末日は,第一項第三号の日以前の日でなければならない。
一 株主に対して金銭分配請求権(当該配当財産に代えて金銭を交付することを株式会社に対して請求する権利をいう。以下この章において同じ。)を与えるときは,その旨及び金銭分配請求権を行使することができる期間
二 一定の数未満の数の株式を有する株主に対して配当財産の割当てをしないこととするときは,その旨及びその数
5 取締役会設置会社は,一事業年度の途中において一回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当(配当財産が金銭であるものに限る。以下この項において「中間配当」という。)をすることができる旨を定款で定めることができる。この場合における中間配当についての第一項の規定の適用については,同項中「株主総会」とあるのは,「取締役会」とする。
(剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定め)
第四百五十九条 会計監査人設置会社(取締役の任期の末日が選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるもの及び監査役設置会社であって監査役会設置会社でないものを除く。)は,次に掲げる事項を取締役会(第二号に掲げる事項については第四百三十六条第三項の取締役会に限る。)が定めることができる旨を定款で定めることができる。
一 第百六十条第一項の規定による決定をする場合以外の場合における第百五十六条第一項各号に掲げる事項
二 第四百四十九条第一項第二号に該当する場合における第四百四十八条第一項第一号及び第三号に掲げる事項
三 第四百五十二条後段の事項
四 第四百五十四条第一項各号及び同条第四項各号に掲げる事項。ただし,配当財産が金銭以外の財産であり,かつ,株主に対して金銭分配請求権を与えないこととする場合を除く。
2 前項の規定による定款の定めは,最終事業年度に係る計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合に限り,その効力を有する。
3 第一項の規定による定款の定めがある場合における第四百四十九条第一項第一号の規定の適用については,同号中「定時株主総会」とあるのは,「定時株主総会又は第四百三十六条第三項の取締役会」とする。
(株主の権利の制限)
第四百六十条 前条第一項の規定による定款の定めがある場合には,株式会社は,同項各号に掲げる事項を株主総会の決議によっては定めない旨を定款で定めることができる。2 前項の規定による定款の定めは,最終事業年度に係る計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合に限り,その効力を有する。
会社計算規則の関連条文
第百八十三条 法第四百五十九条第二項 及び第四百六十条第二項 (以下この条において「分配特則規定」という。)に規定する法務省令で定める要件は,次のいずれにも該当することとする。
一 分配特則規定に規定する計算書類についての会計監査報告の内容に第百五十四条第一項第二号イに定める事項が含まれていること。
二 前号の会計監査報告に係る監査役会又は監査委員会の監査報告の内容として会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認める意見がないこと。
三 第百五十六条第二項後段又は第百五十七条第一項後段の規定により第一号の会計監査報告に係る監査役会又は監査委員会の監査報告に付記された内容が前号の意見でないこと。
四 分配特則規定に規定する計算関係書類が第百六十条第三項の規定により監査を受けたものとみなされたものでないこと。