法律の周辺

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貸金業者を「悪意の受益者」と推定されるとした最判について

2007-07-13 20:35:05 | Weblog
時事ドットコム 過払い金返還,利息付き原則=業者に厳しい初判断-グレーゾーン金利で・最高裁

 同旨の最判が2つ。
貸金業法第43条第1項の適用される可能性があることを認識している貸金業者は民法第704条の悪意の受益者にあたらないとした平成17(受)1970の原審の判断につき,第二小法廷は次のように判示。

 金銭を目的とする消費貸借において利息制限法1条1項所定の制限利率(以下,単に「制限利率」という。)を超過する利息の契約は,その超過部分につき無効であって,この理は,貸金業者についても同様であるところ,貸金業者については,貸金業法43条1項が適用される場合に限り,制限超過部分を有効な利息の債務の弁済として受領することができるとされているにとどまる。このような法の趣旨からすれば,貸金業者は,同項の適用がない場合には,制限超過部分は,貸付金の残元本があればこれに充当され,残元本が完済になった後の過払金は不当利得として借主に返還すべきものであることを十分に認識しているものというべきである。そうすると,貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。
 これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,貸金業者である被上告人は,制限利率を超過する約定利率で上告人に対して本件各貸付けを行い,制限超過部分を含む本件各弁済の弁済金を受領したが,少なくともその一部については貸金業法43条1項の適用が認められないというのであるから,上記特段の事情のない限り,過払金の取得について悪意の受益者であると推定されるものというべきである。
 そうすると,上記特段の事情の有無について判断することなく,貸金業者において貸金業法43条1項が適用される可能性があることを認識している場合には悪意の受益者ということはできないとして,同項が適用されない弁済について被上告人は訴状送達の日までは悪意の受益者であるということはできないとした原審の上記3(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるというべきである。


判例検索システム 平成19年07月13日 不当利得返還請求事件(平成17(受)1970)

判例検索システム 平成19年07月13日 不当利得返還等請求事件(平成18(受)276)


「貸金業の規制等に関する法律」の関連条文

(書面の交付)
第十七条  貸金業者は,貸付けに係る契約を締結したときは,遅滞なく,内閣府令で定めるところにより,次の各号に掲げる事項についてその契約の内容を明らかにする書面をその相手方に交付しなければならない。
一  貸金業者の商号,名称又は氏名及び住所
二  契約年月日
三  貸付けの金額
四  貸付けの利率
五  返済の方式
六  返済期間及び返済回数
七  賠償額の予定(違約金を含む。以下同じ。)に関する定めがあるときは,その内容
八  日賦貸金業者である場合にあつては,第十四条第五号に掲げる事項
九  前各号に掲げるもののほか,内閣府令で定める事項
2  貸金業者は,貸付けに係る契約について保証契約を締結しようとするときは,当該保証契約を締結するまでに,内閣府令で定めるところにより,次に掲げる事項を明らかにし,当該保証契約の内容を説明する書面を当該保証人となろうとする者に交付しなければならない。
一  貸金業者の商号,名称又は氏名及び住所
二  保証期間
三  保証金額
四  保証の範囲に関する事項で内閣府令で定めるもの
五  保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担するときは,その旨
六  日賦貸金業者である場合にあつては,第十四条第五号に掲げる事項
七  前各号に掲げるもののほか,内閣府令で定める事項
3  貸金業者は,貸付けに係る契約について保証契約を締結したときは,遅滞なく,内閣府令で定めるところにより,当該保証契約の内容を明らかにする事項で前項各号に掲げる事項その他の内閣府令で定めるものを記載した書面を当該保証人に交付しなければならない。
4  貸金業者は,貸付けに係る契約について保証契約を締結したときは,遅滞なく,内閣府令で定めるところにより,第一項各号に掲げる事項について当該貸付けに係る契約の内容を明らかにする書面を当該保証人に交付しなければならない。貸金業者が,貸付けに係る契約で保証契約に係るものを締結したときにおいても,同様とする。

(受取証書の交付)
第十八条  貸金業者は,貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは,その都度,直ちに,内閣府令で定めるところにより,次の各号に掲げる事項を記載した書面を当該弁済をした者に交付しなければならない。
一  貸金業者の商号,名称又は氏名及び住所
二  契約年月日
三  貸付けの金額(保証契約にあつては,保証に係る貸付けの金額。次条,第二十条及び第二十一条第二項において同じ。)
四  受領金額及びその利息,賠償額の予定に基づく賠償金又は元本への充当額
五  受領年月日
六  前各号に掲げるもののほか,内閣府令で定める事項
2  前項の規定は,預金又は貯金の口座に対する払込みその他内閣府令で定める方法により弁済を受ける場合にあつては,当該弁済をした者の請求があつた場合に限り,適用する。

(任意に支払つた場合のみなし弁済)
第四十三条  貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息(利息制限法 (昭和二十九年法律第百号)第三条 の規定により利息とみなされるものを含む。)の契約に基づき,債務者が利息として任意に支払つた金銭の額が,同法第一条第一項 に定める利息の制限額を超える場合において,その支払が次の各号に該当するときは,当該超過部分の支払は,同項 の規定にかかわらず,有効な利息の債務の弁済とみなす。
一  第十七条第一項(第二十四条第二項,第二十四条の二第二項,第二十四条の三第二項,第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十七条第一項に規定する書面を交付している場合又は同条第二項から第四項まで(第二十四条第二項,第二十四条の二第二項,第二十四条の三第二項,第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十七条第二項から第四項までに規定するすべての書面を交付している場合におけるその交付をしている者に対する貸付けの契約に基づく支払
二  第十八条第一項(第二十四条第二項,第二十四条の二第二項,第二十四条の三第二項,第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十八条第一項に規定する書面を交付した場合における同項の弁済に係る支払
2  前項の規定は,次の各号に掲げる支払に係る同項の超過部分の支払については,適用しない。
一  第三十六条の規定による業務の停止の処分に違反して貸付けの契約が締結された場合又は当該処分に違反して締結された貸付けに係る契約について保証契約が締結された場合における当該貸付けの契約又は当該保証契約に基づく支払
二  物価統制令第十二条 の規定に違反して締結された貸付けの契約又は同条 の規定に違反して締結された貸付けに係る契約に係る保証契約に基づく支払
三  出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律第五条第二項 の規定に違反して締結された貸付けに係る契約又は当該貸付けに係る契約に係る保証契約に基づく支払
3  前二項の規定は,貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定に基づき,債務者が賠償として任意に支払つた金銭の額が,利息制限法第四条第一項 に定める賠償額の予定の制限額を超える場合において,その支払が第一項各号に該当するときに準用する。

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