芭屋框組(はなや かまちぐみ)

残しておきたい情報や、知っておきたい事

台打ちをしてみての発見(その6)

2009-01-04 13:28:16 | 道具、砥ぎの話
手打ち台の効用:自分で台打ちをすると、前回に書いたような二度手間な手直しをせずに仕込みを進めていける。今回は台そのものについて少し書いてみたい。

大量生産の機械堀りの場合、9割方は機械で掘り、最後の仕込みを手作業で調整している。
だから、機械のセットも寸八を標準としたセットのままで他の刃巾にまで対応させている。この為、台厚や芯棒の太さは寸四だろうが、2寸だろうが同じで、好みの寸法にした場合どこかで無理が出る。

手打ちの場合は自分の好きな寸法の台を用意できる。又意外と取り上げられないが、屑たまりの部分の角度を70度に立てることによって穴掘り部分を小さくできる。(通常は60度)
この事は台の欠損を少なくし、狂いが出にくくなるし、穴が小さい分掘る手間も減って、一石二鳥の効果がある。また、好みの問題だが、見た目がよくなる。

板目か、柾目についてだが、私の経験上、柾目の方が断然狂いにくいと感じる。
さらに植物オイルを全体に塗ってやれば、より狂いが少ない。(※油台とは違う)

押さえ棒を付ける場合は、4㎜Φくらいに細くしたほうが見た目にも効き具合もよい。(3寸釘でもOK)


左が手打ち台、右が機械打ちで厚みを落とした物。屑たまりの角度や押さえ棒の太さの違いに注目


台打ちをしてみての発見(その5)

2009-01-02 16:38:49 | 道具、砥ぎの話
台屋さんが作る鉋台は通常、寸八サイズを基準に設定されているようだ。
その為、刃巾が狭くても同じ台厚になっていて、分厚く重いバランスの悪い鉋台しか市販されていない。

厚みで言うと、一寸二分(36ミリ)が標準厚。自分は指が短いので、この厚みだと厚すぎて握りこみにくい。

寸八サイズだと9分5厘(28ミリ)ぐらいまで厚みを落とさないと、使いづらい。
普段は寸四サイズを一番よく使い、台厚を一寸から一寸一分に落としている。
3ミリから6ミリといった数値的には少ない寸法だが、この差は大きい。

ところで、市販の台の厚みを落とす際に、大体巾方向に大きな隙間ができてしまう。(向こう側が丸見えになるくらい)

我慢して使えば使えなくもないが、やはり左右の遊びが大き過ぎるので、刃が傾きやすい。また、何といっても新品にもかかわらず、すでに残念な見栄えになっているのが、どうにも納得し難い。

市販鉋の場合、今まで書いてきた刃のひずみ直しや、片刃砥ぎになっているかのチェックはもちろんしていない。
刃裏の状態も100%自分で直さないとならない状態で、台屋さんが仕込んでしまうので、結構さかのぼって手直しをしないとならない。

自分で台打ちをするにせよ、人に任せるにせよ、順番としてはまず、鉋身を正常な状態にしてから台打ちをしないと、細かい点で、後からの直しが多くなるのが私の実感だ。




台打ちをしてみての発見(その4)

2009-01-01 15:25:19 | 道具、砥ぎの話
片刃砥ぎの弊害について:刃先が鉋身の中心線と垂直になっていない状態すなわち片刃砥ぎのまま刃を平行に出そうとすると、当然台に対して、鉋身を斜めにしないとならなくなる。

片刃砥ぎになっていることに気づかずに、仕込んでしまうと、鉋身の上の方の左右どちらかと、刃口側の上でつっかえている方と逆側の部分を落とさないと刃がまっすぐ出ない。
逆にあたっていない方の側は、上下共必要以上に隙間が出来ていく。

刃を出す時は常に頭の片方ばかりを叩くことになり、巾方向に隙間のあき過ぎた鉋が出来上がる。

 
片刃砥ぎの刃を左右並行に刃を出そうとした場合、上の様に斜めに刃がささっていることになる。 

 
刃の傾きに合わせて巾の当たる所を削っていくと、上側では右に隙間、刃口側は対角方向に隙間ができる。






台打ちをしてみての発見(その3)

2008-10-29 22:04:56 | 道具、砥ぎの話

鉋身のねじれや片刃砥ぎがどのような影響を及ぼすかについて、上の画像のピンクのラインがねじれた鉋身をそのまま裏押しした時の刃裏のライン。

画面左側はいわゆる縦裏といわれる木端にそって、縦方向にあらわれる接地面があるのに対し、画面右側は縦裏がなく代わりに刃横部分の接地面積が左側に比べ、大きくあきらかに左右非対称になっているのが写し出されている。

この刃がどうなっているかというと、右側の刃先と左側の縦裏部分が接地しており、左側の刃先と右側の縦裏部分は、浮いている状態。つまり鉋身がねじれているということ。

鉋の刃はご存知のように、左右の押さえ溝の仕込みが命といって良いほど重要なポイントである。刃裏の接地部分がこのように左右不均等ならば当然左右不均等に鉋台の方にも影響を及ぼす。

いくら表なじみをいじった所で、肝心の押え溝の硬さが左右で違っているのだから、刃が真っ直ぐ出入りしないばかりか、なおしてもなおしても、いつまでも台が狂うことは、容易に想像してもらえると思う。


もう一方の画像は、自身で砥ぎもされる鍛冶屋さんが作られた、裏刃の様子。刃のひずみは全く無く、裏の出具合も、もちろん左右均等で理想的な状態といえる。

次回へつづく

台打ちをしてみての発見(その2)

2008-10-05 20:51:11 | 道具、砥ぎの話
鉋身の状態チェックとしてまず、平な上板の上に刃先から換先まで(実際押え溝に刺さっている部分)を置いてみて、刃がねじれていないかを調べる。

かたつきが無く、ねじれがなければ次の段階に進む。もしねじれていれば、浮いている側の下に薄い真鍮版等をかまし、刃裏を上向きに平らな台の上に置き、当木をして、上から玄翁でたたく。

次に刃先の平行度を見るために、図のように方眼紙に刃表を上に鉋身を置く。
鉋身は刃先に行く程、巾が狭くなっており、両木端がテーパー状になっているので、木端にスコヤをあてても刃の平行は分からない。

この為今迄、刃がどれぐらい傾いているのか確認するのに手こずっていたが、この方眼紙の上に鉋身を置く方法だと一目瞭然で、刃先の平行がチェックできる。

刃先が平行、図でいうと、方眼紙の水平線と刃先の線が平行になっており、なおかつ左右の木端と垂直線の空きが、左右対称になっていれば刃が平行ということ。

平行でなければ荒砥やダイヤモンド砥石の300番で刃が平行になるまで刃先を修正する。(※切れる様に研ぐのは後の段階)

この後初めて、裏出し、裏押しを行い、切刃の方も最低でも中砥まで砥ぎあげ、台に仕込む作業を始める。

自分の持っている鉋の調子が、何かよくないあるいはしよっちゅう調子が狂う方は一度刃を外して上記のねじれと刃先の平行のチェックをしてもらいたい。
何故このようなチェックをするのか、又どういう事に影響してくるのかを次回のテーマにするということで、この章をくくりたい。

台打ちをしてみての発見(その1)

2008-10-01 22:46:46 | 道具、砥ぎの話
通常、新品の鉋を買うと、そのままでは刃も出ないし、刃先自体も研ぎ直さないとならない状態で、使用者が最終調整をして、使える状態にする、いわゆる仕込という作業をしなければならない。

一般的には、刃の方の仕込みとしては、裏だしや表刃砥ぎ、また台の仕込みとしては表なじみを削り合わせたり、台下端の調整しか紹介されていない。

運がよければ、その程度の仕込みで問題なく使える訳だがいろいろセオリー通りにやっていても何か調子がおかしい事か多い。

例えば鉋頭の真ん中だけを叩いて平行に刃を出したいのに、出ない。もちろん少し刃を引っ込めたい時も平行に引っ込まない。

また、しょっちゅう台がねじれるなど他にも細々とあるが、調整しようとして、表なじみを削りすぎたり、下端を削りすぎて刃がゆるゆるになってしまったりして今までいくつかだめにしてしまった道具がある。

今までは理由がよく分からずに、いじり過ぎてだめにするよりはあまり触りずきない方がいいといった感じで、とりあえず削れる状態になっていれば、台の方はなるべく触らないようにしていた。

去年の夏に機会があり、新潟の台打ち職人の人が講師となり、実際自分で台打ちしてみることとなった。結局その日は時間が足りず、未完成のまま続きをどうしていいのかもよく分からないので、そのままほったらかしていたのだが、これもたまたま知り合った方に別の台打ちの方を紹介してもらって、今度は新潟まで泊りがけで台打ちを習いに行ってきた。

一応その日には鉋くずが出る状態までになって持って帰ってきたのだか、台の厚みを薄くしたり、自分なりにいじくったりしたことや、気候、おそらく湿度の変化ですっかり調子がおかしくなってしまった。

ところが、台打ちする際にどこをいじったらどうなるかということが、以前とは雲泥の差で考えられるようになってきたのか、いろんな人からのアドバイスが知識ではなく実感として捉えられ、今まで「ふーん」と思って聞いていたことが、「ああこういうことだったのか」という連発になった。

そんな中で、あまり一般的には言われていないことや、自分であみだした発見を順をおって紹介していきたい。言い出すと長い話になりそうなので、今回のポイントとしてはただ刃を研いで仕込んだだけでは不十分だということ、その前の段階にさかのぼって仕込みをやっていかないと本来の調子がでない。ということだけお伝えして次回につなげたいと思う。

刃物砥ぎ修行中

2008-09-27 20:12:01 | 道具、砥ぎの話
もともと道具いじりには、興味があってこの世界に入った訳ですが、入門当時は既に替刃のご時勢。
現場で手道具を使う機会も少なく、技術専門校等で砥ぎを習った訳でもないので
素人同然のまま、ついこの間まできてしまいました。

独立後、杉材を触るようになって、刃物砥ぎの重要性を思い知らされました。
一からやり直すつもりでいろいろな人から教わった事、見せてもらった物の紹介をしていこうと思います。