世界遺産に選ばれた富士山は、確かに姿も美しく、日本人の精神的な支えになっていると思う。ただ、やっぱり私が好きなのは鳥海山だ。四季を通じ、日々に表情を変える鳥海山は、今更ながらに美しい。雪解けの頃に見える種まきじいさんは農業の時を知らせ、夏の万年雪は涼しさを、秋は山が燃え、冬の凛とした姿は何ものにも代え難い。単なる地元民の贔屓の押し倒しかも知れないが、東日本大震災を経験し、ふるさとの有り難さを再確認した身ではなおさらに感じるのだ。大好きなふるさとが消えてしまった人達の、胸をえぐられる気持ちが伝わってくる。それに比べて、何と有り難いことか。
鳥海山を仰ぎ見る庄内平野では、今稲刈りの真っ最中である。稲穂は頭を垂れ、赤や青色の大きなコンバインが、見事に稲を刈っていく。
鳥海山は私に限らず、地元の人達に愛されている。新山はご覧の通りに高く美しいが、左側に笙ゲ岳があるので、富士のような姿にはならない。それでも鳥海山を巡る人々は自分の場所から見えるのが、一番美しいと思って自慢する。ここは十二の滝に向かう海ケ沢から見た鳥海である。
いつか、飛島に渡って、鳥海山の写真を撮りたいと願っている。酒田市民でありながらなかなか海を越えられないのと、船も山も天気に左右される所が難しいと思う。