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聞こえにくいのに、言の葉を

2017-07-24 | 本を読みます
聞こえにくい子供たちに言の葉を ――ともに輝きつづけるために、聾・難聴児教育の現場から―― 加藤和彦さんから、いただいた本である。タイトルに見られるように、国語科目の教育実践をつづっている。生徒児童は聴覚を持たない、あるいは失って、聾教育、養護教育を受けるか、普通教育を受けている。
この著作は、著者による願いである。子たちの声を聴きたい、子たちが持つ発想を知りたい、子たちが言葉を紡ぎだすのを知りたい、それを方法とすると、一言でとらえるのは難しいが、子たちに描画を以て、ときには略画で子たちの声を引き出そうとする試み、挿し絵を読む方法である。
しかし、声が聞こえないのであるから、その子の発想に触れて、その子たちの持つ言葉を引き出すには、脳内言語の教育をどうすればよいかと問いかけることになる。おそらく著者は、聾者に対する言語教育の方法について、自らの信念で子供の思考に寄り添うことを主張している。
おそらくというのは、そうでない教育方法を批判して、自らの授業を実践し続けているからである。そのそうでない教育とはどんな教育方法か、それが著者の批判対象となった方法であるだろうが、それはこの著作には語られていない。
しかし、生徒児童における国語教育とは何かを問い続けている。ここであえて、国語に対する批判に、読者なりに感想として述べると、言語教育としての音声、文字のいっぽうを欠く児童に対する方法がないなら、音声指導に準ずる形での補償教育の方法についての不完全さにあることを、まず考えなければならない。
音韻をとらえきれていない教育現場である。言語のイメージにある、文字は手話教育で成り立つことがある。文字はまた文学教育としての学習の素養にある、イメージを伴う解釈が求められて、それを得意とする教師、生徒児童は限られることである。
くわえて、国語のしつけはアイデンティティーの確立に寄与する教育であるから、国語そのものを拒否する結果となる障碍者には、それはしつけ教育の段階から音声言語を持たなければ、その学習が非常に困難になることである。
 著作を読んですぐにもある映画を思った。クリニクラウンである。臨床道化師というそうだが、その医者と患者の立場を公平にする治療法はそれまでの医学、医学研究にはとても実現しえない方法であった。何しろピエロの鼻で患者と対面する方法だからである。映画は、パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー 、1998年である。
 その映画を鑑賞しての感想は、わかりにくいということであった。製作はその演技力と物語展開で何かを知らしめてはいたが、結局、その医師免許の認定には問題が残る。医療の方法にあるものはなにか、医療技術そのものがないか、ということである。治療についての結果は問わないからである。

 

>発売日: 2014年10月
著者/編集: 加藤和彦
発行元: 杉並けやき出版
発売元: 星雲社
発行形態: 単行本
ページ数: 233p
ISBNコード: 9784434197758

【目次】(「BOOK」データベースより)
1 子どもの思考に寄り添うこと/
2 生活と学習の場と心に染みいる教育活動を求めて/
3 伝える力と自信に満ちた笑顔を願って/
4 「子を見つめ、個と集団を伸ばす指導を考える」/
5 授業実践を検証し、認識や思考に裏打ちされた国語教育をめざして/
6 どうしたら深く読みこむ力を伸ばせるか?/
7 まとめにかえて おわりに

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
加藤和彦(カトウカズヒコ)
1957年生まれ。広島大学教育学部聾学校教員養成課程卒業。元筑波大学附属聾学校文部教官教諭。元愛知県立千種聾学校教務主任。元愛知県立一宮聾学校自立活動主任。元愛知県尾張地区難聴児在籍小中学校通級指導(巡回教育相談事業)担当。元名古屋医専療法学部言語聴覚学科(聴覚障害分野)教官。前中部学院大学通信教育部人間福祉学部兼任講師。現在、下田看護専門学校講師、教育福祉医療系大学キャリア講座講師、東京アカデミー講師、公務員試験セミナ講師、第一学院高等学校専攻科講師等(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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