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読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

五重塔の話

2012-07-25 08:52:44 | 読書

五重塔の数は国宝十一基、重要文化財十四基を含め全部で四十七基ある。
単に観光用のものまで含めればもっと多くなる。
本来は、仏舎利塔でインドでは饅頭型だった。漢代に中国に伝わり、木造でも
作られるようになり、三重、五重のものも作られた。日本には朝鮮半島を
通り、伝わったが、現在では中国に一基、韓国に一基残っているに過ぎない。
日本ではそれが寺院だけでなく神社にまでつくられるようになった。
日本のような地震国に何故、これほども五重塔が出来るようになったのか。
地震国だからこそ塔の数が多いのではないかと思えるところがある。
一度、建てられて、これまでに無くなった塔は五基あるが地震で倒壊した
ものは一つも無く、取り壊されたものが一基、焼失したものが四基。
幸田露伴の小説「五重塔」のモデルとなった東京谷中天王寺の塔は
関東大震災や東京大空襲でも無事だった。が、なんと1957年の「放火心中事件」
で焼失してしまっているのである。
京都で最古の木造建築とされる醍醐寺の五重塔は阪神大震災でも、僅かに壁の
漆喰がはがれただけで済んでいる。
今回に東日本大震災でも、青森、岩手、宮城、福島にある五重塔は全て
無事であった。
玄侑宗久著「うゐの奥山」から

五摂家

2012-07-24 09:31:52 | 読書
五摂家とは藤原氏から分かれた近衛、九条、一条、二条、鷹司の五家を言う。
藤原鎌足から出た藤原氏は、式家、京家、南家、北家の四家に分かれ、
平安時代にはその中の北家が最も勢力を得、常に摂政関白の位に就いていた。
鎌倉時代には、藤原家から分かれた近衛基実の弟の兼実が摂政となり、九条家
を創立した。後、九条家からは一条家と二条家が分立し、近衛家からは、鷹司家
が分かれた。これらの五家は、常に勢力が均衡し、順次、摂政関白の位に就き
明治維新に及んだ。明治十七年の華族令により、いずれも公爵に列したが
公家社会における指導的役割は、昭和二十二年の華族制度廃止まで続いた。

落語

2012-07-14 10:58:22 | 読書
中国では漫才に相当する「相声」と言う演芸はあるが
落語の相当する語はないそうだ。
一人で何人もの人物を演じ分ける落語は世界でも珍しい芸だ。
黄遵憲は「日本国志」と言う書物で落語を次のように説命している。
落語は手で扇子を操りながら、泣いたり笑ったり、歌ったり、酔ったり
流し目をし、腰をくねらせ女の真似をしたり、「必ず人を捧腹絶倒せしむ」と

塩梅(えんばい)

2012-07-12 08:32:27 | 読書
梅は花に人気があるが、古代中国人は実の方に関心が有った。
「詩経」では梅の実を詠んだ詩はあるが、花を詠んだ詩はない。
「書経」説命(えつめい)に「和羹(スープ)を作るには塩と梅」
と言う言葉があり、梅は塩とともに調味料として使われていた
事がわかる。今は、味加減を言うとき塩梅を使い、あんばいと
読む。

香魚

2012-07-10 08:59:42 | 読書
アユは日本では鮎の漢字を当てるが、これは日本だけの用法で
漢語では香魚と言う。漢詩には殆ど登場しないらしい。
幕末の漢詩人、梁川星巌は岐阜は長良川の近くの生まれで
詩に多くアユを詠んでいる。
「香魚を食す」で
「芙蓉、紅浅くして雨初めて涼しくはつはつたる銀刀、夜
、梁に入る」が有る。

紫陽花(しようか)

2012-07-01 09:11:32 | 読書
漢字では「紫陽花」と書くがその名付け親は白居易である。
「紫陽花」と題する詩の序で、山寺で咲く名も知らぬ花を
見て、「色は紫にして気は香る」さまを愛で、この名を付けた。
アジサイは日本にも古くから有った花で「万葉集」では「味狭藍」
「安治佐為」などと書かれ、白居易の言う「紫陽花」とは
本来、別種類の花だった。
岩波新書「漢語日暦」興膳 宏著より

一家言

2012-06-16 09:54:11 | 読書
「一家言有る人」と言えば、独自の意見や見識を持つ
人を言う。「一家言」は元は司馬遷の「史記」に見える
言葉である。「太史公自序」でこの書を著した動機や趣旨
を述べ、先人の書の大要を網羅し「一家の言を成し」たと
言う。

福祉国家と言われるスウェーデンでさえ

2012-06-15 08:58:08 | 読書
元東京都監察医務院長 上野正彦著「死体を語ろう」時事通信社刊に出てくる話だ。
世界中の統計が老人の自殺の動機の70~80%が「病苦」にあると言うデーターになっているが
それは嘘だという。その裏側を見ないと老人問題は解決しないと彼は言っている。
彼の調査では三世帯同居の老人の方が自殺率が高いのだそうだ。
更に上野氏はこんな事も書いている。
『スウェーデンの福祉の専門家とお話をしたとき、こんな話を聞きました。
「母親は十二人の子供を育むが、十二人の子らは、一人の母親をもてあます」と言う
言葉がスウェーデンに有ると言う。人情は世界中同じなんだと言う事を知りました』と。

膾炙

2012-06-14 09:38:09 | 読書
膾炙と言う語は人に良く知られる事を意味する言葉だが
膾は刺身、炙は焼肉の事を意味する漢字である。
中国の古典「孟子」尽心篇にも出てくる。
弟子が膾や炙、羊、棗(なつめ)ではどちらが美味いでしょうと
聞かれた孟子は、それは膾炙だろう、と答えている。
古代の人にも、刺身や焼肉は人気料理だったらしく
広く人の口に好まれる事が話題となり、もてはやされる意味に
転化したのだと言う。
岩波新書「漢語日暦」興膳 宏著から

信玄の風林火山

2012-06-12 09:05:52 | 読書
信玄が「風林火山」の句を何故採用したのか、信玄が殊更、「孫子」を
愛読し、それを戦術に利用したのかと言えば、そうでもないらしい。
平田昌司の「孫子ー解答のない兵法」には日本での「孫子」の普及に
関して多くの解説がなされているが、それによれば、当時、臨済禅と兵法書
には深い繋がりがあるのだそうだ。禅僧は「孫子」をはじめ兵法書に関する
造詣が深く、信玄の「風林火山」の旗印も禅との結びつきによるのだそうだ。