研究によると、英語を含む現代インド=ヨーロッパ語族の起源は、約9000年
前のトルコだという。この研究成果は、インド=ヨーロッパ語族が5000年前に
ロシア南西部で起こったとする従来の説とは異なる。
ニュージーランドの研究者らは、ウィルス性伝染病の研究用に開発された
手法をつかい、古代および現代インド=ヨーロッパ語族の系統樹を作成、イン
ド=ヨーロッパ語族が最初に起こった場所と時期を特定した。
インド=ヨーロッパ語族には、ドイツや北欧諸国のゲルマン系言語、イタ
リア語やスペイン語、フランス語などのラテン系言語、ロシアや東欧などの
スラブ系言語、ヒンディ語やペルシャ語などの南西アジア系言語を含めて400
以上の言語があり、現在少なくとも60ヵ国で話されている、世界でもっとも
大きな語族である。いまグローバル言語になっている英語は、大きな目で見れば
この多様な言語群の一つに過ぎない。
「英語の起源はトルコにあり」・・・。どうしてこんなことがわかった
のか?その秘密は、生き物の進化の研究を応用したユニークな分析
手法にあった。たとえば、英語のwaterとドイツ語のwasserと似ている。
これから、両者の語源が同じ(cognate)と推測できる。
進化生物学では、いろいろな生き物の遺伝子を解析して、そのなかに同じ
ものがどの程度あるかによって、種として近縁か、祖先が近いかどうかを判断
する。そこで同語源の言葉をいろいろ捜して、それらを「同じ遺伝子」に
見立てていくと、いろいろな言語のルーツが浮かび上がる、というのだ。
このような方法で、「インド=ヨーロッパ語族の起源はアナトリア地方(現在
のトルコ)」という「アナトリア仮説」が、今回改めて裏づけられたと言うのである。