ショパン ピアノ協奏曲1番から

2016-10-22 17:03:51 | 音楽の魅力

あのショパンコンクールの決勝に

勝ち残ったピアニストのほとんどの方が

演奏曲目に選ぶという「ピアノ協奏曲1番」。

出場者は、ショパンという偉大な作曲家に

人格もピアノの演奏技術も乗り移って

演奏する必要性を強く感じてきたのでしょうか?

このコンチェルトの1番は、2番と共に、

ショパンが祖国ポーランドにいた時代に作曲

されました。当時のポーランドは、プロシア、

ロシア、オーストリアに分割統治され、

1番は、亡国同様となった故国を離れる哀しみと、

片思いの人への恋慕の情を深くにじませた

協奏曲になったと言われています。

そんな過酷な状況から天才が生み出した

協奏曲には、興味深い面が随所に現われて

くるのは単なる偶然でしょうか。

先ず、第1楽章の序でオケが奏でる部分。

これは、お決まりのように長めですが、

どこかモーツァルトが作ったオペラ

『ドン・ジョバンニ』の序曲に曲想が

似ている気がします。

心の中に罪悪感と寂寥の思いがない交ぜになった

何とも言えない鬱屈した音を感じました。

深刻なんです。希望が見えてこない。

ショパンが故国を離れる気持ちにオーバーラップ

します。

そこへ、主役のピアノの強い音。

両手を真上から鍵盤に向かって

雷のように強く打ちつける力強さがくる

場面です。最初の音は、特に強い!

ショパンの作った曲の中で、こんな力強い

始まりは他にあるのか分かりませんが、

とても珍しい激しさを表現しています。

ここは、ベートーベンの『運命』を

想起させてくれます。

このように、感情の深いうねりの中から

ショパンらしい美しいメロディが

まもなく登場します。

ここは、演歌♪北の宿から♪からの

出足のメロディと音階(9音)が

全く一緒です。驚きでした。

ここからは、ピアノが持つ可能性を

極限まで繊細に表現していきますが、

オケはあくまで脇役で、その表現を

きわだたせるための仕事をするのに

とどまってくれているようです。

国の運命をそのまま背負ったショパンが、

国民のために悲しいけど、いつか独立して

幸せになれるような願いを込めて作った

コンチェルトのようにも思います。

それだけスケールが大きく、主役となる

ピアニストは、大役を任された

舞台俳優さんのように思えてしまいます。

ロマンチストのメロディメーカー、ショパンは

こんな故国の悲しい境遇を経験したからこそ、

ウィーン、そしてパリ、マヨルカ島などで

数々の名曲を生み出せたように思います。

故郷への思慕は、彼の音楽の原点なんでしょうね。