極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

最新無隔膜電解工学Ⅰ

2018年01月10日 | デジタル革命渦論

  

        離婁(りろう)篇    /    孟子  

                                 

      ※  なさざることあり: 人は、なすべきでないことをわきまえてこそ、
     なすべきことをやりとげられる。

   【解説】 悪いと思ったことは絶対しない。そのくらいの決心がなければ、
        よいと思ったことに死力を尽くすことができない。

   ※ 大人とは:大人は、おのれの発言に必ず忠実だというわけではない。
     また、おのれの行為を必ず遂行するというのでもない。言葉にしろ行
     為にしろ、ただ義のあるところに従うのだ。

     大人(だいじん)とは、嬰児のときの、あの純真無垢な心を持ちつづ
     けている人のことをいうのだ。

   ※ 自得:君子が、より深く道を究めようとしてけっしてやかことがない
     のは、自ら体得したいからだ。体得したものならば、確固として揺ぐ
     ことがない。揺ぐことがなければ、それを基礎に、さらに深く達を究
     めようとする。深く究めれば、どんな卑近なことをとりあげても、す
     べてその本源に到達できる。君子が、道を体得しようとするゆえんは、
     まさにここにあるのだ。 

     
     
 No.127

【水素エネルギー篇:最新無隔膜海水電解技術】

今夜は、昨年12月20日に記載したこのシリーズ No.119「海水電気分解配備メガフロート」で紹介
したコロンビア大学の研究グループの開発した「無隔膜(メンブランレス)電解装置Ⅰ」をさらに、
改良し三次元プリンタで電解槽(「無隔膜電解装置Ⅱ」)――2017年12月15日、同研究グループが、
ポンプや無隔膜でシンプルで低コスト型浮体式太陽電池による海水電解水素造デバイスの開発したこ
とを公表。デバイスレベルの研究の2つの重要側面は、❶電気化学的/光電気化学的試験容器と反応
器開発加速に重要な付加装置(スリーディプリンタ)と、❷これらのデバイスの窓および電気化学セ
ンサを組み込みことにある。前者は高速ビデオを用いて装置内の流体力学と動的発泡の観測評価が特
徴――を作製した話題を取り上げた。

 Dec. 15, 2017


その前に来るべき水素エネルギー社会について考えるところがあり、この構想を自分なりに膨らませ
てみた(お陰で随分と手間どる)。従ってこのブログにそれを掲載しきれないとき連載になるかもし
れない。さて、風力、ソーラーの再エネ(再生可能エネルギーの略)で水素を海水電解製造しても液
化/貯蔵/搬送までのコスト/保安は大きくなる(手許に資料がないのでまとまり次第公開したい)
。それなら、水素をプロトンと言い換え「固体プロトン」「液体プロトン」に事業分類。ここで「固
体プロトン」とは水素吸着材で固定したものや海水電解水素あるいは酸素を燃料電池/内燃機関/ガ
スタービンで発電しそれを世界共通企画させた高密度/軽量固体蓄電池に貯蔵し直接消費ポイントに
配送/交換すればいいのではと考えた(尚、世界の電気消費量は2万5千テラワットアワー、平均単
価20円/キロワットアワーで金額にして25兆円/年、将来10分の1に価格下落したとして2兆
5千億円/年と試算)。

出典:世界の電力消費量 電力消費量  Enerdata



次に、メガ/ギガフロートの分類を考えてみよう。嘗てブログの「縄すてまじ」で考察したように自
律航行型/繋行・繋留型フロート(浮体)の分類、あるいは下図(詳細はクリック参照)のような円
形など形状による分類が考えられる。多目型/専用型の用途からの分類も考えられる。

 ❏ 参考:特開2016-141983 浮体式海洋構造物の海上構築方法および浮体式海洋構造物

 【概要】

 従来の浮体式海洋構造物の施工方法では、以下のような問題があった。 すなわち、ジブクレーンを
浮体構造物上に設置して所定の高さのタワー部の躯体を施工し、完成後に躯体の構築と海中への下降
を順次繰り返して施工している。そのため、高層または超高層となるタワー部の場合には、外径寸法
も大きくなり、1層あたりの施工に時間がかかることから、工期の短縮が求められており、その点で
改善の余地があった。た、上述したような大規模の浮体式海洋構造物では、有効的な空間を確保する
目的でタワー部の外周からタワー軸に直交する径方向に張り出す外周構造物が設けられる構造が知ら
れている。このような外周構造物は、タワー部の躯体全体を浮体構造物上に自立させた後に、施工さ
れるため、作業員や資材を高層部に搬送する必要があり、しかもクレーンの高所への移設作業などが
生じることになり、作業効率の点で課題があった。本発明に係る浮体式海洋構造物の海上構築方法は
海上に浮かぶ浮体構造物と、該浮体構造物に支持され、平面視で中心に中空部を有する筒状のタワー
部と、該タワー部の外周部に径方向の外側に広がる外周構造物と、を備えた浮体式海洋構造物の海上
構築方法であって、前記タワー部を上下方向に挿通可能に配置する挿通孔が形成された前記浮体構造
物を水面上に浮かべて係留する第1工程と、前記挿通孔において、前記タワー部における所定高さの
躯体を施工する作業、および施工した前記タワー部を下降させて海面下に沈める作業を順次繰り返し、
前記タワー部の全体を施工し、該タワー部の上部を残して海面下に沈降させる第2工程と、前記第2
工程の後に、施工済みの前記タワー部を浮力により引き上げ、前記タワー部における前記外周構造物
の接合部分が前記浮体構造物上に浮上した状態で引き上げを停止し、該浮体構造物に前記外周構造物
を施工する第3工程と、該外周構造物の全体を施工した後に、残りの前記タワー部を引き上げて前記
浮体構造物上に自立させる第4工程と、を有することを特徴としている。



● 隔膜の有無の理由

海水電解を隔膜なしの電解槽で行う理由は構造の簡素化と高価な隔膜と膜交換などのメンテナンスを
なくすことで、電解水素/酸素の製造コストを引き下げることにあるが、電解電流密度や電解液(海
水)の流路間隔(イオン移動時間)がキーパラメータの阻害要因であれば逆効果となり、それら含め
システム全体の総合的なイニシャル/ランニング費の計算により決定される(下記の資料参照)。

W.G., James, B.D., Moton, J.M., Saur, G., Ramsden, T. (2014). Techno-economic Analysis of PEM Electrol-
 ysis for Hydrogen Production in Electrolytic Hydrogen Production Workshop. NREL, Golden, Colorado. Ava-
 ilable online:

S. Dillich, T. Ramsden and M. Melaina, Hydrogen Production Cost Using Low-Cost Natural Gas, U.S. Depar-
 tment of Energy Hydrogen and Fuel Cells Program, 2012. Available online:
H2A Production Model. Available online:
U.S. Energy Information Agency, U.S. Natural Gas Industrial Price. Available online:
U.S. Bureau of Labor Statistics CPI inflation calculator. Available online:

● 無隔膜水電解装置の特徴と技術事例

無隔膜(メンブランレス)電解装置の実用の典型事例として、東陶株式会社の「特開平05-245473
解イオン水生成器」に求めることができる(世界初かどうかは別として)、それを参考に米国でも特
許公開されている。下記に参考事例として掲載する。

❏ 特開平05-245473 電解イオン水生成器

【概要】

従来、イオン水生成器は対設した電極の中央を不織布、素焼き板等の水の通過を一部制限する隔膜で
仕切り、両電極に電圧を印加することで水の通過を制限しつつイオンを電界の作用で該隔膜を通過さ
せて夫々の電極に吸引して酸性イオン水とアルカリイオン水とに電解するようになしている。しかし、
隔膜を使用したイオン水生成器の課題は、該隔膜に細菌・微生物が付着繁茂する恐れを有し、さらに
は長期の使用によって該隔膜が絶縁物によって目詰まり発生し、電流の流れを遮断して電解効率を低
下させることである。すなわち、水で濡れる隔膜には大腸菌等の細菌等が棲息しやすく、また、隔膜
は電極に吸引されて陰極側に向っては陽イオンが、陽極側に向っては陰イオンが通過することになる
が、このイオンは水酸基イオンや水素イオンに限られるものではなく、水に含まれるカルシウムイオ
ン、マグネシウムイオン、珪素分をも含み、珪素分はそれ自体絶縁物であるし、カルシウムイオン、
マグネシウムイオンは隔膜に付着して炭酸マグネシウムイオンや炭酸マグネシウムイオン等の不溶性
で絶縁性の物質となって堆積するためである。 そこで、本発明は上記課題を解決するためになされた
もので、隔膜を省略して細菌・微生物の繁殖源を有さず、効率的な電解を長期間に渡って保証できる
イオン水生成器を提供することを目的としたものである。 


【符号の説明】

1 電解槽 1a 一方側容器部 1b 他方側容器部 2 水道水流入口 3 酸性イオン水流出口 
4 アルカリイオン水流出口 5 堰 6 タンク室 7 電解槽室 7a 電解流路 8 陽極電極板 9
陰極電極板 10 スリット状狭窄流路

【図面の簡単な説明】

【図1】本発明イオン水生成器の主要部である電解槽の正面図
【図2】電解槽の他方側容器部1bの正面図
【図3】A-A線断面図
【図4】実施態様に使用される水圧スイッチ部の断面図
【図5】電源回路図

❏  US 5534120A Membraneless water electrolyzerメンブレンレス水電解槽


【概要】

アルカリ性水と酸性水とが互いに分離される流路の下流領域において乱流の形成を抑制するか、または
少なくとも最小限に抑えることができる独立した回復のために。本発明の他の目的は、薄層の酸性水
を層流の残りから選択的に分離して殺菌および細菌の消毒の目的で殺菌水として使用できる高酸性水
を回収することができる改良された無隔膜電解槽を提供することである。さらに別の目的は、高度にア
ルカリ性の水を回収することができる改良された無電解電解槽を提供することである。更なる目的は、
無電解電解槽の種々の水圧パラメータを最適化して、アルカリ水及び酸性水の分離効率を高め、高度
の電解を達成することにある。また別の目的は、水を電気分解して、電極間に膜を置くことなくアル
カリ水および酸性水の流れを形成することができ、それでもアルカリ水および酸性水の流れを効果的
に分離することができる水電解方法を提供することである。互いに形成されている。その最も単純な
形態では、本発明による無電解電解槽は、水入口と、一対の対向する表面によって画定された狭い流
路とを有するケーシングを含む。流路表面は、水が流路を流れるときに層流を確立するのに十分に近
接して配置される。一対の平面状電極は、その作用面が流路面と同一平面上に配置され、水が層流の
形態で流路を流れる際に電解することにより、層流に沿って流れる酸性水の層を生成するアノード -
水界面と、カソード - 水界面に沿って流れるアルカリ水の層とを含む。電極間に膜は設けられていな
い。

主な特徴は、酸性またはアルカリ性の水の層が分離され、層流が流路内で維持されている間に、層流
の残りから剥離されることである。この目的のために、一方の流路面には、流路の下流端の上流に位
置するスリット状開口が設けられている。この構成では、流路表面の1つに沿って流れた酸性または
アルカリ性の水の層は、乱流の形成を誘発することなく、層流の残りの部分から層流に垂直な方向に
円滑に除去される。本発明の好ましい実施形態では、流路の下流端は、流路の流速に比べて十分に大
きな容積を有する第1のバッファ貯蔵チャンバと連通している。同様に、スリット状開口部は、開口
部の流量に比べて十分に大きな体積を有する第2のバッファ貯蔵チャンバと連通することが好ましい。
これらのバッファ貯蔵チャンバは、有利には、分離点における乱流の形成を低減するのに役立つ。好
ましくは、これらのバッファ貯蔵チャンバの深さは、流路の幅およびスリット形開口の6倍よりも大
きい。スリット状開口の幅は、流路の幅の3倍未満であることが好ましい。流路内に強く発達した層
流を確立するために、流路の横方向の広がりは、好ましくは、流路の流速の0.09倍より大きい、
より好ましくは0.14倍より大きい(詳細は下図クリック参照)。

 

US 9011651 B2 Apparatus and method for the electrolysis of water : 水電気分解装置および方法


【概要】

水素ガスは、多くの産業用途に大量に使用されている。特に水素が理想的な燃料源として追求される
につれて、水素の需要が増加している。水素ガスを製造するための最も一般的なプロセスは、化石燃
料の反応と分解である。これらのタイプのプロセスのいくつかの例には、天然ガスの水蒸気改質およ
び石炭ガス化が含まれる。しかし、これらのプロセスは、再生不可能で汚染性の高い資源に頼ってい
るという重大な欠点を有する。特に、大量の一酸化炭素および二酸化炭素は、一般に化石燃料に基づ
く水素製造方法で製造される。従って、大規模な水素製造のためのより清浄な方法を見出すことには
かなりの関心がある。1つの可能な代替方法は、水の電気分解である。水の電気分解は、有毒で環境
に優しい副生成物を生成することなく、水素および酸素ガスを生成する。さらに、電解方法は電源を
電力源として使用するので、炭化水素プロセスに対する電解プロセスの別の利点は、太陽光、風力ま
たは水力などの再生可能な電源から電力を受け取ることができることである。

水の電気分解は、逆極性の電極を横切って水に印加される電圧(すなわち、電流)の作用によって、
水が酸素および水素ガスに分解(すなわち、「分裂」)することを含む。陰極(陰極)には水素が生
成され、陽極(陽極)には酸素が生成される。陰極(陽極)には、以下の周知の化学式で示されるよう
に酸素が生成される。

・陰極(還元):2H +(aq)+ 2e H 2(g)
・アノード(酸化):2H 2 O(1)→O 2(g)+ 4H +(aq)+ 4e .-

電解プロセスは、よりきれいに水素を生成するという利点を有し、再生可能な供給源によって給電さ
れることができるが、電解プロセスは、従来の電解槽の労働集約的で材料コストのために、従来の炭
化水素プロセスと比較して非競争的であり、当該技術分野の電解槽で使用される現在の貴金属電極(
例えば、複雑な白金板またはハニカム)のコスト。従って、化石燃料から水素をより手頃な価格で製
造することができるため、水素を製造するための電解プロセスは、一般に、小規模な操作に限られて
いた。しかし、将来の水素経済においては、今日の最大規模の10~100倍の電解槽が必要とされると
推定されている(Ivy、J.、「電解水素製造の概要」、国立再生可能エネルギー研究所、NREL / 560-367
34)。
さらに、このような大規模電解槽は、現存する水素製造技術の代わりに現在非常に有益であろう。
明らかに、最先端の電気分解技術は、このような大量の水素と酸素をきれいで費用対効果の高い方法
で製造するにはかなり不足している。

第1の態様では、本発明は、水を水素および/または酸素ガスに電気分解するための装置に関する。い
くつかの実施形態では、本明細書に記載の電解装置は、表面上に複数の微細化された触媒電極(すな
わち、微小電極)を利用する。他の実施形態では、微小電極のアレイによって提供されるのと同じま
たは同様の利点を達成するために、微小電極の機能的模倣物(例えば、触媒ホットスポットの分布)
がバルク電極上で使用される。マイクロ化された触媒電極またはその機能的模擬物は、カソード(す
なわち、水素が生成される)またはアノード(すなわち、酸素が生成される)として機能することが
できる。特定の実施形態では、マイクロ化電極の各々は、独立してアドレス指定可能であり、すなわ
ち、独立して電力供給され、調整され、および/または監視される。

第1の特定の実施形態では、電解装置は、(i)表面を有する少なくとも1つのリソグラフィ的にパタ
ーニング可能な基板と、(ii)表面に埋設され、触媒アノード電極または触媒カソード電極のいずれ
かである複数の微細化された触媒電極と、(iii)表面に近接しているが表面にはない少なくとも1
つの対電極であって、微視的触媒電極が触媒アノード電極である場合には少なくとも1つの触媒カソ
ード電極を含み、または対極が少なくとも1つの触媒アノード電極を含む場合、微細化された触媒電
極は触媒カソード電極であり、(iv)放出された水素および/または酸素ガスを回収する手段と (v)
複数の微小化された触媒電極と少なくとも1つの対電極との間に電圧を印加するための電力供給手段
と(vi)水性電解質を保持し、複数の微細化された触媒電極および少なくとも1つの対電極を収容す
る容器である(詳細は下図クリック参照)。



つぎに、電気分解された水素/酸素の使途を考えてみよう。生成された水素を分離精製し吸着あるい
は液化する方法については、「オールソーラーシステム」として特許研究室に保管ないしはこのブログ
でも掲載しているのでそちらを参照(割愛)してもらうこととして、ここでは、プロトンの固体化(
=蓄電池)法として、①水素燃料電池、②水素/酸素の直接燃焼法(内燃機関/ガスタービン/水蒸
気タービン)による発電による蓄電池への充電方式を考察することにする。まず二次電池への充電法
としては、高エネルギー密度、大きい耐久性、火災・爆発リスクのない安全性、超軽量/コンパクト
化が求められる。

❏ 特開2017-142884 アルミニウム空気電池及びアルミニウム空気燃料電池   

【概要】

二次電池には、代表的なものとして、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチ
ウムイオン電池等があるが、電圧、容量、エネルギー密度の観点から、現在では、リチウムイオン電
池の用途が拡大しており、パソコンや携帯電話等のあらゆる携帯機器に採用されている。今後は、電
気自動車の電源、震災等の緊急時のライフライン確保のための非常用電源、定置用電力貯蔵として、
その役割が一層重要となってくるものと推測される。そのため、容量やエネルギー密度の更なる向上を
目指した電極材料、電解質、セパレータ等の要素技術開発が継続されている、このようなリチウムイ
オン電池にも、解決することが困難な問題がある。①第一に、エネルギー密度に限界があり、電気自
動車等には不十分であるという性能の問題である。②第二に、正極材料にリチウム(Li)やコバル
ト(Co)等のレアメタルを使用しなければならず、高価であるというコスト及び資源枯渇の問題が
ある。?第三に、リチウム(Li)やコバルト(Co)は毒性があり、環境の二次破壊を引き起こす
可能性がある。第四に、電解液として非水系の有機溶媒を使用しており、内部短絡で高温になると発
火・爆発するという安全性の問題がある。第五に、従来の二次電池では繰り返し使用するためには充
電を必要とし、充放電を繰り返すことによる電池の劣化が著しく進行し、最終的には廃棄処分もしく
はリサイクル処理が必要になるという問題がある。そこで、革新的二次電池として期待されているの
が、金属空気電池及び金属空気燃料電池である。これは、次のような根拠に基づいている。まず、従
来の2次電池と異なり、メカニカルチャージという負極金属や電解質を機械的に外部供給する方式で
発電で消耗した金属であるアルミニウムを交換するという、いわゆる、充電ではない方法で容量回復
を可能にする。更に、燃料となる金属であるアルミニウムを化学反応させない方式で保管することが
でき、これまでの二次電池の課題の一つである自己放電による容量の減少を発生することがない。そ
の他に、従来の二次電池の性能、コスト、資源、環境、及び、安全性の問題を理論的には解決できる
可能性がある。例えば、金属空気電池のエネルギー密度は、理論的にはリチウムイオン電池の数倍以
上、すなわち、リチウム(Li)-空気電池で、11,400Wh/Kg、アルミニウム(Al)-
空気電池で、8,100Wh/Kgと計算されており、ガソリン車のエネルギー密度(12,722
Wh/Kg)に肩を並べることができる。又、正極の活物質は大気中に無尽蔵に存在する酸素(O2
であり、負極の活物質は地球に広く分布している鉄、亜鉛、マグネシウム、及び、アルミニウムのよ
うに安価な卑金属材料を用いることが出来る。電解質は反応性が高いリチウムやナトリウムでは使用
できない水系を用いることができるため、発火、発熱、爆発の心配がなく、安全性が高い。

更に、金属空気電池は、フランスのフェリーが1900年代初期に考案し、ル・カーボン社が改良し
て製造した亜鉛空気電池で、一次電池として利用されていたが(非特許文献7)、1996年、米国の
Abrahambにより、リチウム空気電池が蓄電池として機能することが報告されて、二次電池を目的とし
た金属空気電池の開発が活発化し、次世代の二次電池として期待されるようになった。特に、金属空
気電池に特徴的なことは、従来の充電方式だけでなく、再生可能な電解質及び金属電極を入れ替える
メカニカルチャージを採用することが可能で、一種の燃料電池ともなる。

しかしながら、金属空気電池には、負極材料の金属の種類、電解質の種類(有機系又は水系)、及び
、正極材料の種類に応じてそれぞれ克服しなければならない課題を数多く内在している。特に、空気
極と、安価なアルミニウム又はアルミニウム合金とする負極と、安全性を確保できる水系電解質とか
らなるアルミニウム空気電池の場合、電極反応及びそれに付随する化学反応等に起因する種々の問題
が生起する。
自己腐食や分極等の問題を解決し、エネルギー密度や電圧等の電池性能に優れ、寿命が
長く、安全性の高いアルミニウム空気電池及びアルミニウム空気燃料電池を提供することを目的とす
る。アルミニウムまたはアルミニウム合金を活物質とする負極と、酸素を活物質とする正極(空気極)
と、中性水系電解質とからなるアルミニウム空気電池及びアルミニウム空気燃料電池において、電解
質が中性水系電解質に有機脂肪酸塩を溶解したものであることを特徴とする。【選択図】図2



                                  
                                       この項つづく                                                                                   

  

 

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