極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

季節は異常気象と戦争②

2024年08月08日 | マネー行動学

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる招き猫と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦
国時代の軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと
)と兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ-。




わたしの経済論:「交換価値至上主義」とは②
1332夜 『グローバル資本主義の危機』 ジョージ・ソロス を踏まえ

8/7(水) 日経平均株価の終値414円高い3万5089円62銭 市場関係者「
不安定な局面続く」7日の日経平均株価の終値は、前日の終値よりも
414円16銭高い、3万5089円62銭。 7日は大幅反落して前日比553円安
で取引が始まり、一時900円以上値を下げたものの、日銀が午前10時
半に、函館で行われている金融経済懇談会での内田副総裁の挨拶要旨
を公表した直後から一気に上昇に転じ、一時1100円以上の値上がりを
見せた。発言要旨の中で内田副総裁は、「引き続き政策金利の引き上
げ、金融緩和の度合いを調整していくという考えをしました」と述べ
た上で、「この考え方は、その前提として『経済・物価の見通しが実
現していくとすれば』という条件がついています。この点で、ここ 1
週間の株価・為替相場の大幅な変動が影響します」と、先週以降の平
均株価の乱高下に言及。金融「資本市場が不安定な状況で、利上げを
することはありません」とさらなる追加の利上げに慎重な姿勢を強調
した。市場関係者からは、「ひとまず株価は戻したが、アメリカ景気
への警戒感から不安定な局面が続く」との声があがっている、(FNNプ
ライムオンライン)

「市場で表現される個人の意思決定と政治面で表現される集団的意思
決定とのあいだには、おそろしいほどの不均衡がある。」これを回避
する技術思想(制度設計)が不可欠となる。(経済を社会に埋める))

 ソロスが第二段階で主張したことは、次の三点だ。

 ①経済価値と社会価値はなかなか合致するものではない、
 ②資本とりわけ金融資本は特権的なもので、他のどんな生産要素
 より儲かるところへ移動する、
 ③市場は資本の動向と商品の動向を分離する。

 多くの経済理論は、市場参加者の価値観と選好を所与のものとす
 る。そのため価格メカニズムが需要と供給の曲線の交差によって
 ほどよく決まっていくというふうについつい見がちになる。ソロ
 スからすると、そんなことはない。仮にそのようなことがときど
 きおこるからといって、それが社会の価値観の何かをあらわして
 いるなどということは、あまりない。まして価格メカニズムがほ
 どよく決まっていくということのほうが稀なのである。そんなこ
 とはタンザニアとウズベキスタンとサンチャゴの生活用品の価格
 をくらべてみれば、すぐわかる。一方、資本はどんな生産要素よ
 りも移動性が高い。とりわけ金融資本は直接投資よりもずっと移
 動性が激しい。すぐに儲かるところに移っていく。そこで各国は、
 その移動先をそれぞれの事情に応じた経済繁栄の先駆けやベンチ
 マークとして引き寄せようとする。そのため各国に出向く金融機
 関やコングロマリット(多国籍企業グループ)に次から次へと資
 本が蓄積され、その蓄積のプロセスを金融市場が恣意的にコント
 ロールするという「独占」がおこる。

だから各国の社会と経済のあいだで歩みと歪みの著しいズレがおこり。
その各国間のズレや歪みを調整が、当該国の経済政策とIMFや国連
などの国際機関だが、とうてい調整しきれるものではない。ソロスが
タイ・バーツやロシア・ルーブルの混乱を予測して“暗躍”したかの
ように思われているのも、このすばやい移動性を先駆したから「膨大

な金額」をてにいれたというわけだ、

 自由市場を否定したらどうなるかといえば、それがソ連をはじめ

 とした社会主義諸国が「計画経済」や「統制経済」の名のもとに
 やってきたことだったわけだけれど、ご覧のとおり失敗した。い
 まやロシアも中国も自由資本主義市場の大幅な導入で、大胆な旋
 回をしつつある。先ごろは北朝鮮も、そうなった。

 ソロスが第二段階で主張したことは、次の三点だ。①経済価値と社
会価値はなかなか合致するものではない、②資本、とりわけ金融資本
は特権的なもので、他のどんな生産要素より儲かるところへ移動する
③市場は資本の動向と商品の動向を分離する。

 多くの経済理論は、市場参加者の価値観と選好を所与のものとする。
そのため価格メカニズムが需要と供給の曲線の交差によってほどよく
決まっていくというふうについつい見がちになる。ソロスからすると、
そんなことはない。仮にそのようなことがときどきおこるからといっ
て、それが社会の価値観の何かをあらわしているなどということは、
あまりない。まして価格メカニズムがほどよく決まっていくというこ
とのほうが稀なのである。そんなことはタンザニアとウズベキスタン
とサンチャゴの生活用品の価格をくらべてみれば、すぐわかる。

 一方、資本はどんな生産要素よりも移動性が高い。とりわけ金融
 資本は直接投資よりもずっと移動性が激しい。すぐに儲かるとこ
 ろに移っていく。そこで各国は、その移動先をそれぞれの事情に
 応じた経済繁栄の先駆けやベンチマークとして引き寄せようとす
 る。そのため各国に出向く金融機関やコングロマリット(多国籍
 企業グループ)に次から次へと資本が蓄積され、その蓄積のプロ
 セスを金融市場が恣意的にコントロールするという「独占」がお
 こる。

 このような状況下では、グローバル経済はグローバル社会と同一歩
調をとってはいない。いや、とれないままにある。なぜなら政治・経
済・文化の基盤はかつてもいまも、それぞれ個々の国民国家(ネーシ
ョン・ステート)の上にあるからだ。だから各国の社会と経済のあい
だで歩みと歪みの著しいズレがおこっていく。その各国間のズレや歪
みを調整するのは、当該国の経済政策とIMFや国連などの国際機関
であるはずだが、とうてい調整しきれるものではない。
 他方、金融市場はそんな事情におかまいなく、いつでも、こうした
国家の混乱や国際機関の歩みと歪みをこえて、行きたいところへさっ
さと移動する。つまりは経済の本質は各国の政治や社会の動向とはほ
ぼ無縁に動くのだ。有名な話だが、ソロスがタイ・バーツやロシア・
ルーブルの混乱を予測して“暗躍”したかのように思われているのも、
このすばやい移動性を先駆したからだった。

 資本と市場は勝手なふるまいをする。勝手だからこそ、市場におい
て経営と商品の自由競争が許容されているわけで、それが市場のおも
しろさになっている。企業の基本的活力源にもなっている。消費者も
それによって高くたって品質のいい贅沢ができたり、ジャンクな安い
買い物ができたと言って、大喜びする。だから、この自由競争を否定
しないかぎりは、勝手なふるまいは収まらない。
 それなら、自由市場を否定したらどうなるかといえば、それがソ連
をはじめとした社会主義諸国が「計画経済」や「統制経済」の名のも
とにやってきたことだったわけだけれど、ご覧のとおり失敗した。い
まやロシアも中国も自由資本主義市場の大幅な導入で、大胆な旋回を
しつつある。先ごろは北朝鮮も、そうなった。



カール・ポランニーKarl Polanyi
1886年10月21日 - 1964年4月23日)

 このままいけば、おそらく資本主義に代わる経済システムは当分生

まれそうにはないが、ポランニーは、「経済は社会に埋め込まれるべ
きだ」と言うのだが、そして、それはまったくそのとおりなのだが残
念ながら資本主義市場だけは社会から極端に突出してしまったのだ。
 そこで、このように突出した経済システムをどうにか管理・監督・

規制するために、ケインズこのかた経済システムの研究と予測と誘導
とが試みられるようになってきた。その行き着く先のひとつがフリー
ドマンらの新自由主義であり、金融工学だった。しかしだからといっ
てとソロスは警告するのだが、そこに資本と商品の流れを連携的にあ
らわすインディケータなどはいつまでたっても見当たらないと思うべ
きなのである。そんなことを科学的に予測することは不可能だと思う
べきなのだ。資本は資本の一元性を好み、商品は商品の多様性を好む。
 経済と社会はこの不幸な関係をいつまでも続けていていいかといえ

ば、むろんそんなことはない。ということで、第三段階でソロスがい
よいよ強調するのが、カール・ポパーの『開かれた社会とその敵』(
未來社)の考え方と、そこからソロスが導き出して中心に据えた「リ
フレクシビティ」(reflexivity)というコンセプトになっていく。

 【3】ポパーが提案した「開かれた社会」(open society)は、も
ともとはファシズムが「閉じられた社会」をめざしたことに対する
反撃の狼煙として提唱したもので、のちにはもっと柔らかい「社会の
改良に向かって開かれている社会」という意味に広がった。ソロスは
これを理念にまで高め、やがて「グローバル・オープン・ソサエティ
」を唱えて、その財団までつくった。
 リフレクシビティのほうは、これまで「再帰性」とか「相互作用性

」とか、ときに「相互干渉」などと訳されてきたので、ややわかりに
くいかもしれないが、一言でいえば、再帰的相互性ということだ。シ
ステムにはそこに関与した者の認知バイアスがかかる、また関与した
者の思考にはシステムからの影響が免れない。だからそこに再帰的相
互性がおこる。
 システムとその帰属者は両者ともに織りこまれた関係にあるものな

のだから、そこをシステム(たとえば市場や政府や企業)とユーザー
(たとえば投資者や経営者や消費者)を分けすぎたままに、システムの
自立性だけを強調するのはおかしかったのである。
 システムとユーザーはつながっている。つながっているだけではな

く、「ゆらぎ」「誤謬」「負」をかかえたまま、全体と部分が、領域
と参加者が、制度と実態が、互いで互いをハウリングしあっている
そこにはフィードバック・ループがはたらいている。それがリフレク
シビティという言葉があらわしたがっている意味なのである。
  いったんシステムの内から外に出た情報が、どこかでシステムの中

に再帰し、その再帰した情報が外の観測者に影響を与えているわけな
のだ。それが複雑にくりかえされている。ソロスはそこに何かの“真
実”と“正体”を見た。たんに「インタラクティビティ」(相互作用
)と言わずに、あえて「リフレクシビティ」と言ったのは、この再帰
的で相互干渉的な意味合いを含ませたためだったろう。
 リフレクシビティがどのように金融市場や投資家をゆさぶるのかと
いえば、一般に、金融市場の参加者たちはつねに市場価格の動きを予
測しようとする。むろんある程度の予測はできる。観測可能なことは
いくらもある。けれども、その予測に参加者のバイアスが投入されて
いくことを予測することは難しい。
 それでもバイアスをバイアスとして見定めたいのなら、バイアスに

汚染されていない何かの他の変数が必要になる。そのため一般の投資
理論やエコノミストたちは、この変数を長らくファンダメンタルズ(
財務的基本要素)に求めるようにしてきた。
 話をややこしくしないために株式市場に限ると、企業はBS(貸借

対照表)とPL(損益計算書)で財務の是非を見る。企業はそれにも
とづいて借入れをしたり、配当を払ったりする。それゆえ市場価格は
、これらのファンダメンタルズに関しての支配的な期待値をあらわす
はずである。ソロスはこの見方にすでに限界があると見ているが、少
なくともここまでは、参加者のバイアスを推量するにはまあまあの出
発点になる。もし、均衡というものがあるとすれば、この時点での参
加者の見方とファンダメンタルズが一致したときだけなのだ。

 しかし、投資者にとって重大なのは将来のファンダメンタルズだけ

なのである。株価が反映しているはずのファンダメンタルズは前年度
のバランスシートや収益や配当ではなく、将来の収益・配当・資産価
値の動向などだ。これは所与のものではない。したがって、それらは「
知識の対象」ではなく「推測の対象」である。


ハウリングの原因と抑制
(電子音響事例:ヤマハ)

  ここにおいて、将来のことがらがそれがおきる時点で、その前にお

こなわれた推測によって影響(再帰的ハウリング)をうけてしまうと
いうことになる。「将来を織りこむ」ということには、いくつものフ
ィードバック・バイアスがかかるのだ。そのためその推測が株価にあ
らわれ、その株価がファンダメンタルズに影響をあたえるというふう
になっていく。
 ソロスはこのような事態の例として、『ソロスの錬金術』(総合法
令出版)のなかでは一九六〇年代末のコングロマリット・ブームがク
ラッシュしたときの抵当信託の例をあげている。ヤバイ連鎖は次のよ
うにおこる。
 ①初期に抵当信託に対する過剰評価がおこる。②次にそれによる価

格高騰に引きずられて新株発行をする。③それが過剰評価を正当化し
たと思ってしまう。④しかしこれに追随した投資家たちにはすでに儲
ける機会が縮減してしまっている。⑤以上がだんだん重なっていく。
⑥それでどうなるかというと、広範な連鎖的倒産がおこっていく。
 これはリフレクシビティがはたらかなくなった不幸な連鎖の例であ

る。ここには「資産効果」というさらに厄介な計測しがたいファクタ
ーが加わって、不幸をもっと悲劇的なものにする。
  リフレクシビティの機能不全は、周知のごとくサブプライム・ロ

ーンに端を発したアメリカ金融界の大失態にまで受け継がれていった。
いまさら説明するまでもないだろうが、ソロスは『世界秩序の崩壊(
ランダムハウス講談社)では、住宅産業に対する投機のしくみのすべ
てが短期回路に集約されすぎた「資産効果」の計りまちがいとして露
呈したと分析した。アメリカの不幸な中産階層は、トレーダーたちの
「資産効果」についてのマジカルな説明に騙されたのである。むろん
日本にもこんなことはしょっちゅうおこっているけれど、幸か不幸か、
それが大量きわまりないデリバティブ(金融派生商品)として売り出
されたことはなかった。
                                                  この項つづく

 
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