極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

木質バイオマスの資源化

2014年08月31日 | 新自給自足時代

 


【木質倍バイオマスの資源化と放射能汚染対策】 


 

昨夜の【オールソーラーシステム完結論15】(『二酸化炭素の資源化』)の時に、そういえば木質バイ
オエネルギー利用技術の技術課題はどんなふうになっているのだろうか考えた。その時の要点が、(1)
タール除去と(2)射性セシウム汚染物質の除去の2つであった。周知の通り、木質系バイオマスガス
化は部分酸
化や蒸気加熱などにより可燃ガスを製造し同時に生成するタール分を後処理で触媒や、高温水
蒸気など
により改質除去することが行われているが、従来技術の触媒法だと、タールを含んだ可燃ガスを
触媒を高温域まで加熱昇温したり、蒸気改質にして千℃程度の高温水蒸気を必要とし、簡単な構造の装置
にはほど遠いものであった。

これに対し「特開2005-089519  木質系バイオマスガス化におけるタール除去方法と装置」で提案されて
いる事例では、「上部の燃焼層で燃焼用空気により原料を乾留炭化し、生成した可燃ガスやタールを含む
乾留ガスを下部の燃焼層に誘引し、燃焼用空気により炭化物と共に高温で酸化分解すると下部の還元層で
生成されたガスはガス化炉出口においてタール分を殆ど含まない可燃ガス」にできると開示されてはいる
が、「特開2014-001324 可燃性の燃料ガスを生成するガス化炉、及び、その制御方法」では、この構造
では、空気吹き出し部材が燃焼スペースにおける径方向中心部に配置されいるから、燃料ガスに残存する
タールが、継続使用によっては、空気吹き出し部材の一部に付着すると、周方向における空気の吹き出し
量がばらつき、タールの低減効果が損なわれ、一旦ばらつきが生じてしまうと、このばらつきを調整する
ことが難しいと指摘している(下図参照クリック)。
 

  

このため、上図4のように、ブリケットを筒状燃焼部22の内部空間22Aに供給し、空気量を制限しつ
つ燃焼させることで、可燃性の燃料ガスを生成するガス化炉11の、内側空間22Aを上下方向に長い縦
長形状に形成、その下側空気導入部27で、22Aの高さ方向中央よりも下側の位置に外周側から空気を
導入し、上側空気導入部28で、22Aの高さ方向中央よりも上側の位置に外周側から空気を導入する構
造に改良
することで、可燃性の燃料ガスを生成するガス化炉で、燃焼スペースへの空気の供給を確実に行
なえるようにし、
タールの分解を長期間に亘って効率よく行えると提案している


下図7に、燃焼試験の試験結果。温度欄には「既設」及び「新設」と記載されているが、既設は下側温度
計33での
測定結果を示し、新設は上側温度計37での測定結果を示す。これは、ガス化炉11が、既存
のガス化炉に上側筒
状部材30を追加改造を施して作製。すなわち、下側筒状部材29は既存の部材であ
り、上側筒状部材30
新設の部材であり、温度実績欄には「最大」及び「最小」と記載されているが、最大は測
定箇所における最大温度を示し、最小は測定箇所における最小温度を示す。そして、各部の温度データは、ガス
化炉11の運転開始から停止まで20秒毎に1回の頻度で採取。 

次に、この試験における判断基準について説明する。温度に関し、タールの熱分解温度は一般に700~
900℃と
いわれているが、この試験でガス化炉11の後段設備への影響やタールの色を見ると、900
℃程度の温度が必要であった。このため、上側温度計37による測定温度(新設温度)で900℃以上を
◎とした。なお、1000℃を超えるとガス化炉11を構成する材質の耐熱温度を超えるため、設備保護
の観点から1000℃を超える可能性のあるケースは×とした。 

タールに関し、定量分析(濃度分析)は行わず、定性分析(色)に基づいて判断をした。すなわち、燃料ガスを実際
に採取し、その色具合によりタールの影響なし(無色透明)であったものを◎とした。 次に、冷ガス効率について説
明すると、冷ガス効率は前述の式(1)に基づいて算出。ここで、一般的な木質バイオマスの冷ガス効率
は70%という知見
が得られている。一般的な木質バイオマスとの比較から、冷ガス効率が60%以上の
ものを○とした。

試験結果について考察する。タールの発生状況に関しては、弁開度を第1パターン(下側全開,上側全閉)
に設定
した場合、全てのケースにおいて燃料ガスが濃褐色又は淡褐色となり、相当量のタールを含有して
いることが確認
された。一方、弁開度を第2パターン(下側20%,上側全開)に設定した場合、全ての
ケースにおいて燃料ガスが無色透明となり、タールが十分に除去されていることが確認された。なお、各
ケースの燃料ガスは、いずれも無色
透明であったが、その中でもガス流量を40m3,50m3に設定した
2つのケースについて透明度が高かった。 タールの発生状況と燃焼炉の温度とを対応付けて検討すると、
タールの発生が確認されたケース、弁開度を第1パターンとするとともにスクリューコンベア24の周波
数を20Hzとし、ガス流量を30m3,40m3,50m3と変化させた3つのケースにおいて、上側温
度(新設温度)の最大値は何れも100℃以下と低温であった。これに対し、下側温度(既設温度)の最
大値は何れも670℃以上であった。特に、ガス流量40m3,50m3の2つのケースでは約760℃及
び約85
0℃であり、何れもタールの燃焼に十分な温度を示していた。それにも拘わらずタールの発生が
確認された理由と
しては、高温の温度範囲が狭かったため、タールが十分に燃焼されなかったことが考え
られる。

一方、タールが十分除去されたケース、詳しくは弁開度を第2パターンとするとともにスクリューコンベ
ア24の周波数を12Hzとし、ガス流量を30m3,40m3,50m3と変化させた3つのケースは
、上
側温度の最大値は何れも360℃以上であり、下側温度の最大値は何れも680℃以上であった。これら
の結果より、燃料ガス中のタールを抑制するためには、下側空気量調整弁と上側空気量調整弁36をとも
に開放し、上側温度を360℃以上、下側温度を680℃以上にすればよいといえる。そして、ガスサイ
クロン12やスクラバー13といった後段設備の動作や燃焼ガスの透明度の高さを考慮すると、上側温度
900℃以上、下側温度を680℃以上にすることが好ましいといえる。なお、筒状燃焼部22の素材
を考慮すると、1000℃以上の高温を長時間に亘って維持することは、耐久性の面から好ましくない。
この点も考慮すると、上側温度を900℃以上950℃以下の範囲に定めることが好ましいといえる。 

従って、今回の燃焼試験では、弁開度を第2パターンとするとともにスクリューコンベア24の周波数を
12Hzとし、ガス流量を40m3に定めたケースが最も好ましいといえる。冷ガス効率に関し、ガス流
量を30m3に定めたケースでは60%以下となり、基準を満たさなかった。一方、ガス流量を40m3
50m3に定めたケースでは60%~70%となり、木質バイオマスの一般的な冷ガス効率と遜色ない結
果となった。以上より、冷ガス効率に関しては、ガス流量を所定値以上(本実施形態では40m3以上)
に定めることで必要な冷ガス効率を得られることが確認できた。と、説明されている。

 

現在、福島原発事故由来の中間貯蔵施設の建設実行計画が急ピッチで行われているが、当初から、わたし
(たち)は木質バイオマス発電(ボイラー)を兼用した放射汚染物質の減容・昇華回収設備の充填配置推
進――除外集積汚染物質の運搬・拡散を封じ込めを提案していた。その観点に立てば1~2年程度遅れた
のではと看ている。ここではそのことはさて置き、その除外設備の具体的事例を下図の「特開2014-085329
放射性セシウムおよびストロンチウムの捕集材および捕集方法
」研究してみた。

この新規提案は、放射性物質に汚染したバイオマスや木材瓦礫、農業廃棄物を改質反応、ガス化反応と焼
却する炉内に充填した捕集材にガス化および改質ガス、燃焼ガスの還元性ガス雰囲気下でセシウムとスト
ロンチウムを高効率で濃縮捕集し、さらにガス化炉や焼却内に残存する炭化物や焼成灰などから捕集材を
遠心分離サイクロンあるいは磁性分離操作で選択的に分離回収して、必要に応じて回収された捕集材を循
環利用して最終的に濃縮捕集材を分離のうえ安全に貯蔵および保管することが出来、さらに。汚染された
森林廃材や農産物より放射性セシウムおよびストロンチウムを高密度に濃縮分離回収すると同時に、ガス
化炉や改質反応炉で製造されるバイオマスガスを利用して電力・熱およびアルコール合成燃料など、エネ
ルギーやバイオ燃料を地域社会・産業に提供することができるもの――チタン、ジルコニウム、タンタル
、モリブデン、タングステン、ニッケル、コバルト,鉄、およびランタン、イットリウム、ネオジム、セ
リウムなどの希土類金属の複合金属酸化物、およびそれらの金属塩をシリカ、アルミナ、炭素担体に担持
する放射性セシウムおよびストロンチウムを捕集する捕集材とセシウムおよびストロンチウムを捕集する
(図1参照)。
 
この新規考案の実施例が以下の通り、良好な結果が記載されている。

【実施例1】

捕集材の製造(1):エトキシチタン((C2H5O)3Ti)492g、モリブデン酸アンモニウム(
(NH4)2Mo2O7)560g、
メタタングステン酸アンモニウム水和物((NH4)6H2W12
O40xH2O)125g、硝酸セリウム(Ce(NO3)3xH2O)185g、塩化ニッケル(Ni
Cl2)25gを均一に混合したエタノール水溶液を用いて、シリカ・アルミナ担体(3mm顆粒Al2
O335%)1Kgに含浸担時して120℃で6時間の乾燥処理を行った。乾燥空気の1L/min流量
下で成形物を最大650度Cで5時間焼成した。粒子集合体が緻密で強度が高い捕集体を調整した。酸化
チタン10重量%、酸化タングステン8重量%、酸化モリブデン5重量%、酸化セリウム5重量%、酸化
ニッケル2.5%を含む捕集材A(表面積320m2/g)を1.5Kg製造。

【実施例2】

捕集材の製造(2): 塩化チタン(TiCl3)520g、塩化ジルコニウム(ZrCl4)365g、
酸化モリブデン(MoO3)350g、酸化ネオヂム(Nb2O3)236g、塩化コバルト(CoCl
2)250g、塩化鉄(FeCl3)360gおよびグラファイト酸化物600gを機械的に練り混合し
た後、n-オクチルアミン0.5L中で60℃、10気圧のオートクレーブを用いた加熱反応を15時間
行った。得られたグラファイト酸化物層状物質と鉄粉200gをポリビニルアルコール0.5%溶液と
50:50重量%で均質に混合してスラリー溶液を製造した。前記スラリー溶液を空気噴射下で乾燥過程
を経て捕集材ペレット1.5Kgを成形した。

【実施例3】

ガス化炉を用いる捕集試験1: 50KBqCs付着の1kg杉材(5cm角ペッレト、10kg)を用
いて、図1に示したガス化炉内捕集工程フローにおいてキルン式ガス化炉20内に杉材ベレットを1Kg
/hで投入し、これに前記実施例1で調製した捕集材A1Kgを加えて650℃および600℃において
ガス化反応を行い、また改質ガスに随伴する副生タールは、捕集材A1Kgを充填する高温改質反応炉
50内で850℃の改質反応により出口ガスは1時間当り7.5Nm3の改質ガス(45%H2、25%
CO、8%メタン、2%エタン、15%CO2;窒素バランス)が得られた。ガス化炉内で捕集材Aに対
する放射性セシウムの捕集量の測定を1時間間隔で行った。Ce核種の放射能測定は核種対ミリオンテッ
ク社製HDS-GN放射線測定器を用いた。本捕集試験での捕集効率の結果を表1(上図1/表/上欄)
に示す。出口改質ガスには放射性CsおよびSrは検出されなかった。

【実施例4】

ガス化炉を用いる捕集試験2:0.2%重量比のCeOHおよびSrCl2で汚染した稲わら破砕試料(
5kg、5~10mm粉体)を用いて、前記実施例2に記載の捕集材B500gを充填する外熱式ガス化
炉を用いて850℃でガス化反応を行った。生成した毎時6.5Nm3の原料ガス(48%H2、26%
CO、6%メタン、14%CO2)が得られた。投入した稲わらに当初付着のCeおよびSr総量に対す
る捕集材Bに捕捉されたCeおよびSr量を分光化学分析し、その捕集効果の結果を表2(上図1/表/
下欄)に示す。

【実施例5】

捕集材の製造(3):テトラエトキシチタン((CO)Ti))270g、テトラエトキシジル
コニウム((CO)4Zr)847g、塩化ランタン(LaCl)106g、メタタングステン
酸アンモニウム水和物((NH1240xHO)125g、塩化イットリウム(YCl
75gのエタノール水溶液をシリカペレット(3mm顆粒)1.5Kgに噴霧担持した。120℃で6時
間の乾燥過程を経て成形物を乾燥空気下において450℃、2時間および600℃3時間の焼成処理によ
り捕集材C(表面積550m2/g)を2.6Kg製造した。

【実施例6】

ガス化炉を用いる捕集試験3:広葉樹葉支枝1kg当り180kBqの放射性セシウム(Cs137)で
汚染した葉支枝試料(10Kg:2~5ミリ角に切断破砕)を用いて前記実施例3において調製した捕集
材Cを用いて、外熱式キルン式ガス化炉(650℃)および高温改質反応炉(820度C)で毎時6.5
Nm3の改質ガス(38%H2、26%CO、8%メタン、エチレン5%、16%CO2)が得られた。
CeおよびSr核種の放射能測定は核種対ミリオンテック社製HDS-GN放射線測定器で行った。その
結果、広葉樹葉支枝10kgを用いた本試験でのガス化炉で発生した放射性セシウムおよびストロンチウ
ムはフィルター捕集材Cによりそれぞれ90%および85%が捕集された。出口改質ガス中の放射性Cs
およびSrは検出限界以下であった。

【実施例7】

捕集材の相構造分析:実施例3において揮発性セシウムおよびストロンチウムを捕集後の捕集材Aおよび
Cについて分析するために、X線回折分析(XRD、島津製作所製)を行なった。得られたX線回折ピー
クの解析により揮発性Cs、Srは相当するタングステンプロンズ塩(Cs-x(Sr)1-xWO
0<X<1)、モリブデン酸ブロンズ塩(Cs2-x(Sr)1-xMoO,0<X<1)あるいはモリ
ブデン酸塩(Cs(Sr)Mo12)およびチタン酸塩(Cs(Sr)TiO)および一部は
担体のシリカ、アルミナとの熱化学反応で形成されたアルミノシリケート塩(CaAlSi、Sr
AlSi)が検出された。


以上、バイオマスエネルギーと触媒から最新の技術開発事例を俯瞰してみた。上述した事例2件とも持続
可能社会の実現に欠かせないものである。

 

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