極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

校舎の桜にケインズ

2013年04月13日 | 時事書評

 


   野島断層

早朝の地震で起こされ、暫くテレビで状況収集し、一時間ほどしてテレビのスイッチを入れそのまま寝
てしまい、学区のグランドゴルフ運営のアシストの仕事に気がついたのは集合時間より一時間都少し目
を覚まし、急いで会場に駆けつけるもこと既に遅し。詫びを入れ後片付けを手伝い帰ってきた。最高の
天候で、小学校の運動場の桜が余りにも素晴らしくデジカメし印象を切り取る。大阪の義姉のマンショ
ンでの揺れは半端じゃなかったと電話があり一週間前から愛犬がいつもと異なり怯えるように義姉の背
中に隠れるような仕草が続きこれが今朝の地震の予兆を感じていたではないかと伝えてきたという-そ
う彼女が話す。野島断層の南側が震源ということで、専門家の間では、阪神大震災の余震の可能性を巡
り議論されているという。今回の発生メカニズムは断層が縦にずれ動く「逆断層型」で、阪神大震災は
「横ずれ断層型」だったことから、「別の断層が動いた可能性」も指摘されている。「震源の場所から
みて、別の断層だとしても、大震災によるストレスを抱えていて今回の地震につながったとみるのが妥
当だ。大震災の余震の可能性も含め、大震災の影響によるものと考えてもおかしくない」と分析。現在、
国が対策の検討を進めている南海トラフ巨大地震との関連は、「南海トラフの地震を引き起こす海底の
プレートのなかで起きる地震ではないので、直接の原因にはなりえない」が「南海トラフの地震はいつ
起きてもおかしくない。その意味では前兆ではないと言い切れないのではないか」という。これほどの
表面波が頻繁に続く環太平洋のプレート移動現象を目の当たりにすると、気の抜けたサイダーのような
TPP通商貿易交渉問題?より、環太平洋諸国間に“地震災害連携会議”の設立が重要だと思ったりす
る。

 


     
                 城郭の 桜の上に かかる月 残す星霜 二人で惜しむ

 


 

 

 



  

  

【新たな飛躍に向けて-新自由主義からデジタル・ケイジアンへの道】

 

1.タブーと経路依存性
2.複雑系と経路依存性
3.複雑系と計量経済学
4.ケインズ経済学の現在化
5.新自由主義からデジタル・ケイジアン

 


 【ケインズ経済学の現在化】

さて、ケインズ革命の幕開けを予告した「生産の貨幣理論」と題する論文で、ケインズは古典派理論が
物々交換経済ないし実物交換経済のパラダイムに基づいているのに対し、彼の目指す分析対象が古典派
とは異なる原則と目的に基づいて組織された「貨幣経済」にあることを強調したと渡辺良夫はいう。貨
幣経済では貨幣が枢要な要因となっており、貨幣は経済主体の動機や意思決定に影響を及ぼす。こうし
た貨幣経済思想は、当然のことながら、『一般理論』に引き継がれ『一般理論』の序文や第1章におい
て、古典派理論の基礎となっている前提が現実の世界と大きく乖離しており、実際の貨幣経済の分析に
とって不適切であり、貨幣が「本質的かつ独特な仕方で経済機構に入り込む」貨幣経済の理論は、貨幣
が形式上存在してはいるが中立的な要因であるにすぎない実物交換経済とは、理論構成が根本的に異な
のであると指摘し、デヴィッドソンはケインズの流動性選好説を(新)古典派の効率的市場理論に対
する対抗
軸として捉えていると述べる。それでは、ケインズ理論の流動性選好説とはどのようなものか?

ケインズの貨幣の捉え方は、古典派理論が貨幣を瞬時に行なわれる交換プロセスに配流するのに対して
貨幣を「現在と将来を結ぶ連鎖」(『一般理論』P.293)として生産および投資プロセスに組み込むと
いうもので、貨幣経済において、企業家は不確実性に立ち向かって現在の貨幣を資本資産に投資し、時
間をつうじ資本資産が現在の貨幣額よりも大きな将来の貨幣額の流れを生み出すかどうかを推測する
。こ
うした企業家の投資決意やファイナンスは、不確実性から切り離して論じることができないし、不確実
性に対処するための流動性選好と不可分に結びついている。
これに対し、流動性選好説に冷淡な評価を下
したサムエルソン、クラインおよびヒックスによって開始された新古典派は、『一般理論』の貨幣経済理論を無時
間的な実物交換の一般均衡理論に歪曲(変質)。そのため流動性選好はたんなる貨幣需要という狭い範囲に閉
じ込められ、不確実性や流動性プレミアムについてほとんど言及せず、貨幣需要が利子感応的となりうることを
示す試みに限定されてしまう。その結果、貨幣の非中立性に関する議論は、経済主体が貨幣錯覚に陥いるか(
実質値のみ重要とする公理)、あるいは賃金・価格の硬直性など供給サイドの不完全性や情報の非対称性を想
定する場合に見られる、一時的な非中立性に限定され、長期非中立性のパラダイムは主流の貨幣理論により、
中立貨幣の公理で置き換えられるようになっという。

しかし、ケインズ本来の流動性選好説を追究するスタンスは、デヴィッドソンやミンスキーのようなポ
スト・ケインジアンによって受け継がれ、流動性選好説を『一般理論』第17章で展開された自己利子率
理論に沿って、貨幣から実物耐久財までを含む「貨幣的均衡分析」へ拡張され貨幣理論と資本蓄積理論
との統合される。
もしケインズの貨幣経済理論が流動性選好説を軸として動いていることを理解するには、自
己利子率理論にまで遡って検討しなければならず、自己利子率理論のフレームワークにおいて、さまざ
まな資産
は、それらが提供する貨幣的収益(qi-ci+ai)と流動性プレミアム(li)の組み合わせにした
がって、完全流動資産(貨幣)、流動資産および非流動資産に大きく分類される。貨幣(および他の流
動資
産)に対する収益は、名目価値の安定性からくる資産を自由に処分しうる力に対して、資産保有者が主観
的に評価する流動性プレミアムからなり、その意味で貨幣はきわめて素早く処分することができ、資本価値の損
失から免れるため、最も高い流動性プレミアムをもつ。これらの流動性プレミアムに関する期待は、さ
まざまな資
産の自己利子率の構成におけるliの大きさに依存して、諸資産の自己利子率(限界効率)に
対して異なったインパクトを与える。

 「貨幣的均衡分析と内生的貨幣供給」渡辺良夫、1992

たとえばいま、将来の利潤に関する長期期待に抱いている確信が高まるならば、この場合流動性に割り
当てら
れた主観的な価値評価=流動性プレミアムは低下するであろう。したがって、流動性プレミアム
に収益の多くを
依存する資産に比べて、非流動資産の現物価格は上昇し、その自己利子率=限界効率も
上昇するであろう。このように、現物資産価格が供給価格を超えるとき、たとえば裾野の広い自動車産業を例に
とれば、自動車生産に用いられる固定資本資産は新たに生産されるであろう。こうした固定資産に対す
る投資の増加は、次いで関連する部品産業における生産・雇用および所得を拡大する波及効果を引き起
こし、部品産業の固定資産に対する投資の増加を促す。現物資産価格の上昇によって始発された投資の
増大は、
関連産業だけでなくひいては経済全般に影響が及ぶ乗数効果を引き起こすとともに、資産市場
おけるさまざまな資本資産間の相対価格の調整を生じることになるのである。ケインズも述べているよう
に、「将来に対する期待の変化によって影響される現在の経済の動きを分析するわれわれの方法は、…価値の
基本理論と結び付いて」(『一般理論』P.xxii)、貨幣は産出量や雇用量の決定に深く入り込んでいる。
それゆえに、流動性選好説は資産価格の決定に関与することによって、有効需要の理論と不可分に結び
ついて
いるのである。ケインズ理論が貨幣経済理論であるといわれる所以は、たんに貨幣・金融的な用
語や概念
が用いられているからにとどまらず、貨幣が経済の長期的な状態にまで影響すると考えられて
いる点にあるという。


 デヴィッドソンは、非自発的失業の原因を厳密に評価することに多大な関心を払ってきた。セイ法
 
は、相対価格の適切な変化が経済主体に対して自己の所得から他人の所得ヘシフトさせるという
 意味で、すべての財が互換性のある代替財であるかぎり成立するであろう。消費に支出されない1
 円は、再生産可能な資産の購入に自動的に蓄えられる。すなわち貯蓄はそれ自らの投資をつねに創
 
造するであろう。したがって、粗代替性の公理はセイ法則を復位させ、非自発的失業が発生する論
 理的な可能性を否定するのである。非自発的失業は、実物財やサービスに対する制約された需要関
 数が
原因となって生じるのではなく、むしろ労働によっては生産不可能であるとともに、その需要
 が労働によって生産しうる諸資産に資源を注入させない流動資産に対する需要が原因となって発生
 するの
である。そこでデヴィッドソンは、ケインズが貨幣の基本的性質と呼んだ考えの重要性を強
 調することになる。

 生産弾力性がゼロということは、貨幣需要の増加がその生産への資源の転用を引き起こさない、と
 いうことを意味する。貨幣と生産可能資産との代替弾力性がゼロということは、その需要が増加す
 るとき、貨幣の相対価格の上昇はそうした需要を非貨幣的
な生産可能資産に転換させない、ということ
 を意味する。こうした独特な性質により、貨幣は価値貯蔵機能をもつのであり、こうした貨幣の基
 本的性質は粗代替性公理に対する対抗軸を示すとともに、非自発的失業が存在するための理論的な
 基礎をなしている。粗代替性の公理を拒否することによって明確になるのは、非自発的失業が硬直
 的な賃金が直接の原因となって生じる現象ではない
ということである。

                       ポール・デヴィッドソン著 小山庄三・渡辺良夫訳
                    『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』 


こうした競争的市場の情報をどのように処理して期待形成するかという点が問題となるという。そして、
効率的市場仮説では、経済主体は将来の事象に関する統計的に信頼しうる条件付き確率を割り出すため、
ファンダメンタルズ(基礎的諸要因)に関する情報を収集するものと考えられている。ここでいうファ
ンダメンタルズとは
、現在から将来にかけて企業が生み出す収益のことをさす。証券市場が効率的であ
るためには、株価の長期トレンドは不変の実物部門のファンダメンタルズによって決定されることを必
要とする。証券市場が効率的ならば、そのときに利用できるすべての情報は即座に現在の株価に織り込
まれるので、情報が公開されたあとでは誰も取引により利得を上げることができなくる。効率的市場仮
説によれば,すでに他の市場参加者たちにも利用可能になっている情報に基づいて投資をしても、投資
家にとっては市場の平均を超える利得を得る裁定機会がないということを意味する。

効率的市場仮説は、いわゆる「ランダム・ウォーク理論」と結びつけて考えられてきた。統計学では、
ある変数が上昇するのも下降するのも期待値でみて同じ幅であるという特性をもつ時系列変数は,ラン
ダム・ウォーク過程と呼ばれる。効率的市場では,株価はファンダメンタルズを反映しており一見でた
らめな動きをしているように見えても、実際にはあらゆる情報を織り込んで価格が形成されているので、
既存の情報を利用するかぎり、投資家は市場全体の平均を上回る利得を得ることができない。ランダム・
ウォーク理論では、情報がスムーズかつ即座に価格に織り込まれるので、このようにして形成される現
在の株価は将来の株価を予測するのに最も有用であると考えられている。それゆえに、株価がファンダ
メンタルズを十分に反映していることは、株価がランダム・ウォーク過程にしたがっていることと、株
式に関して市場平均を上回る収益を得る裁定機会が存在しないことを意味している。効率的金融市場モ
デルにおいて,短期のトレーダーは2つのグループ、すなわち合理的なスマート・トレーダーと愚かな
ノイズ・トレーダーからなる。ファンダメンタルズによって決定される本源的価値から乖離する観察さ
れた資産価格変動のボラティリィティーは、金融市場がどのように作用するかを知っていると過信して
ファンダメンタルズから正しい情報を人手しようとしないノイズ・トレーダーがいるために起こるとさ
れる。合理的なトレーダーは、絶えず誤りを繰り返すような非合理的なトレーダーをダーウィン流の経
済淘汰プロセスをつうじて排除するので、最終的には市場価格をファンダメンタル価値に戻すとされる。

指摘するまでもなく、流動性が重要な役割を演じるのは、将来が不確実性にさらされているような環境
においてである。ケインズ=ナイトにしたがうならば、不確実性は定量不可能な性質をもち、定量化し
うる保険数理的なリスクとは区別される。経済主体がこうした環境下で期待を形成しようとするさいに
は、不確実性に対処する「合理的」な方法のひとつは、金融市場参加者の大多数によってとられている
「慣行」に従い、市場で成立している「平均的な期待」に自らを委ねることである(『一般理論』pp.
151-152).。実際の金融市場はさまざまな不確実性にさらされてはいるものの、ケインズによれば、わ
れわれが慣行の持続性を信頼することができるかぎり、こうした慣行的な価値評価は金融市場取引のか
なりの連続性および安定性と両立するのである。もレ贋行の維持を頼りにすることができるならば、組
織化された金融市場における役資家たちは近い将来における情報の変化の危険のみを処理すればよく、
連い将来における投資価値をどのように評価するかという問題からひとまず解放されるであろう。こう
した慣行が破綻しないものと信頼できるならば、役資家たちが期待を修正し意思決定の変更の余地が残
されているものと見なしうる場合、彼らは投資物件の購入がかなり安全なものと考えるようになるであ
ろう。これによって、社会全休としては固定している投資も、投資家個人にとっては流動的な対象物と
なる。このような手続きに基づいて主要な投資市場が発達してきたというのがケインズの見方であり、
市場における投資価値の評価は、企業家の真正な長期期待によるよりも、慣行を頼りに行動する投資家
たちの「平均的な期待」によって支配されるようになる傾向がある。

ケインズは、平均的期待の基礎にある慣行が恣意的で頼りにならないため急激な変化を被りやすいとい
う性質に注目している。こうした慣行の頼りなさを生じさせるものは、専門的な知識をもたない大衆投
資家の増
加、金融市場の過剰反応、市場における群集心理の作用、および玄人投資家相互間の高次元の
期待形成であ
る。よく知られているように、ケインズは、投機という用語を金融市場の心理を予測する
活動を表わすの
に用い、企業という用語を資産の全存続期間にわたる予想収益を予測する活動を表現す
るために充てた
(『一般理論』P.158)。金融市場における活動は基本的に投機的であり、実物資本へ
の投資額や証券の
新規発行額から概ね独立している。組織化された金融市場における取引コストはきわ
めて低いので、投
資家の関心は近い将来の資産価格変動によるキャピタルゲイン(ロス)に絞られるよ
うになった。玄人
筋の投資家は一般群衆の不適切な予想につけ込んだり、あるいは他の玄人投資家を出
し抜くことに主た
る関心をもつようになった。よく組織された流動的な投資市場は、こうした玄人投資
家が群集心理の産
物として生み出される慣行的な価値評価に起こるであろう将来の変化に賭けさせるよ
うになったのであ
る。

ケインズは、こうした流動的な金融市場における投資家たちの虚々実々の駆け引きを、有名な「美人投
」の比
喩にたとえて説明した。すなわち、「玄人筋の行う投資は、投票者が百枚の写真[株式]の中
から最も容貌の美しい6人を選び、その選択が投票者全休の平均的な好みに最も近かった者に賞品が与
えられるという新聞投票に見立てることができよう。この場合、各投票者は彼自身が最も美しいと思う
容貌[株式]を選ぶのではなく、他の投票者の好みに最もよく合うと思う容貌を選択しなければならず、
しかも投票者のすべてが問題を同じ観点から眺めているのである。ここで問題なのは、自分の最善の判
断に照らして真に最も美しい容貌を選ぶことでもなければ、いわんや平均的な意見が最も美しいと本当
に考える容貌を選ぶことでもない。われわれが、平均的な意見はなにが平均的な意見になると期待して
いるかを予測することに知恵をしぼる場合、われわれは3次元の領域に到達している。


さらに4次元、5次元、それ以上の高次元[の予想]を実践している人もあると私は信じている」(『
一般理論』P.156)。この比喩が意味することは、流動的な金融市場における資産価格形成を理解するた
めには、その投資家の将来利得に関する期待だけでなく、他の投資家が抱いている予想についても理解
することを必要とする。ということであろう。ケインズは、「美人投票」の比喩によって自己の期待と
他者の期待が相互に作用し合う様を巧みに表現した。市場参加者たちは、平均的な期待がどのように形
成されるかについていかなる確信の程度をもっても知り得ないし、また平均的な期待に関する他の市場
参加者たちの期待も確実に推測することなどできない。このように、市場参加者たちが形成する期待は
相互に依存しており、それらをつうじて形成される平均的期待は群集心理や慣行といった脆い基礎の上
に成り立っているのである。

もしポートフォリオを処分しなければならない時期について不確実性が存在するとき、流動性があると
いうことは待別に高い価値を待つであろう。その場合、流動性に価値を認める資産保有者は、得べかり
し収益を手放してでも、流動性を維持するために高いプレミアムを進んで支払うであろう。このように、
不確実性が高まっていると知覚することは、流動性に対する事前的な価値を高め、各種の資産からなる
一定のストックについて、流動性選好が異なった種類の資産に対する需要表のシフトを引き起こし、主
として流動性プレミアムを求めて需要される資産の価格を、流動性の低い資産の価格に比べて、上昇さ
せることを意味する。たとえば、何らかの理由により貸し手リスクが高まるとするならば、貸し手は相
対的に低い流動性を体化した危険資産から相対的に高い流動性を体化した安全資産に乗り換えようと試
みるであろう。デヴィッドソンが強調しているように、こうした通貸間や資産間で起こる「質への逃避
は、いまや流動性選好が高まるさいの典型的な現象として理解することができる。と、こう解説する。

                                       この項つづく

 

 

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