極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

雪を巻きあげ日本快走

2012年12月10日 | 政策論

 

 

 

      一九九四年初動なる高速増殖炉はいまだ立ち直らざるなり / 柏原宗一

 

ここで詠まれている増殖炉は福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の高速増殖炉のもんじゅのことで
あるらしい。「もんじゅ」の名は仏教の文殊菩薩に由来し、若狭湾に面する天橋立南側にある天橋山智恩寺
の本尊から来ているといわれる。「もんじゅ」「ふげん」の由来は「文殊、普賢の両菩薩は、知慧と慈悲を
象徴する菩薩で、獅子と象に乗っている。それは巨獣の強大なパワーもこのように制御され、人類の幸福に
役立つのでなければならない」「もんじゅ」の命名は、他の新型動力炉「常陽」「ふげん」とともに動力炉・
核燃料開発事業団(動燃)の副理事長・清成迪が発案したというが、その発案に当たっては、当時の仏教学
界や国文学界の首脳とも相談したということが当時の広報室長、関根瑛應の証言で判明している。仏教学界
では宮本正尊、国文学では土岐善麿の名前が挙げられているといわれる。この一首は「プルサーマルの火」
から、淡々と事実のみを詠みあげるだけで、寒風吹きすさみ吹雪の若狭湾にひっそりと灯りがともる発電所
のなかで仕事する関係者の光景を浮かび上げた。


  

 


【国政選挙の論点 その3】

 

政権交代、マニフェスト選挙、二大政党制のこの三大テーマを実現させた日本国民は、多くの期待を寄せた。
とというよりも、淡い期待と感じつつもこの閉塞感を抜ける道を模索したというのが偽らざる真意であった。
それは、千年に一度という東日本大震災に罹災する前から以外とアッサリと裏切られる。いわいる、鳩山由
起夫総理の沖縄普天間基地であり、菅直人総理の消費税増税であり、罹災以降の野田佳彦総理の党分裂とい
うことが次々と起きた。また、それに加え、竹島・尖閣・北方四島問題にみられる外交と円高対応・金融政
策、あるいは震災復興にみられる経済のオペレーションの非力さを目撃する。それでもわたしは‘判官贔屓’
?なところもあり、菅直人などの原発推進から縮原発への政策転換の素早さなどは評価している。

  
 現在のわが国は、破綻の危機にひんしている政府財政の再建、経済のマクロ的停滞状態からの脱却に
 よる国力の振興と貧富の格差問題の克服、年金制度など社会保障システムの整備、自然環境の改善、
 ハブ空港の建設など社会資本のいっそうの充実、そして、なによりも、防衛力の拡充、等々、の重要
 な国家政策の遂行を急がねばならない状況にある。近時、「もはや、国の政策には頼らない!」とい
 ったことが叫ばれ、あたかも、そのようなスタンスが美徳であるかのごとく、もてはやされている。
 しかし、自由放任的な市場経済のもとでの民間の個人や個々の企業がどのように奮励努力しようとも、
 それだけでは、これらの重要な国策の実現は、ぜったいに達成されはしない。すなわち、どうしても、
 政府による財政・ 金融政策-事実上のケインズ的政策-の大規模な発動が必要なのである。


                    丹羽春喜『深憂! 重要国策の遂行が不可能にされている』


上記のハブ空港の建設による対費用効果などの議論はさておき、ここでは、菅直人らが推進しようとしたか
の楽市楽座にあやかっての‘プロジェクト「双頭の狗鷲」’(『デフレギャップとギリシャ国債』)でも掲
載したことがある「高速道路無料化」について評価してみる。結論から先に言うと、マニフェストに掲げら
れた高速道路無料化」は、無料化の社会実験段階、つまりは2011年12月09日の第15回高速道路のあり方検討
有識者会で活動停止中である。この高速道路無料化問題は、1949年の道路局企画課長を務めた佐藤寛政らの
働きかけからはじまる。


 「道路は文化、文化は道路だ」とは故田中角栄の口癖だった。1949年当時、新潟県内の国道舗装率は
 4.1%で、全国平均の1/5にすぎなかった。冬の間、雪に閉ざされる集落では、人々が力を合わせて手
 掘りのトンネルを掘って「道」を確保していた。小学校時代の恩師・金井満男は、田中が語ったひと
 言ひと言が、今も鮮やかに脳裏によみがえってくるという。「先生、私の考えはまちがっているかも
 しれませんが、先生も応援してくれるでしょう。明治以来の政府は、日本海側に金を、びた一文出し
 ていません。こんなばかげた政治家、政治なんてあったもんじやない。だから私の生きているかぎり、
 今日から日本中の金は全部、日本海側につぎ込もうと思っています」道路整備は、今のように限られ
 た財源の中で分け合っているかぎり、いつまでたっても、地方、特に日本海側に金がまわってこない。
 もっと道路財源全体を増やすことを考えなければ、らちがあかない。そう考えていた田中自身にとっ
 
ても、ガソリン税法は何としても成立させなければならない法律だったのである。

                             
  北山敏和『田中角栄と道路建設


このような背景として「道路整備特定財源制度」が成立し、戦後の道路整備が進み、ひいては日本の経済・
社会の発
展を支えるが、道路整備が進んだ近年ではその必要性への疑問や重税感を訴える主張、固定化し現
状にそぐわなく
なり抜本的改革が必要との主張も見られるようになり、それを背景に、小泉内閣が打ち出し
た聖域なき構造改革で見
直しの対象となったが、見直しが完遂されることなく小泉政権は終了する。現在で
は一般財源化(総合財源化)などが
議論され、ガソリンの本体価格以外にガソリン税そのものにも更に消費
税が課税されているという二重課税について
は税金の二度取り批判がでてくる。道路特定財源の一般財源化
(総合財源化)は安倍政権にとって小泉政権から引き継いだ「宿題」の一つとなっていたが参議院選挙を控
え(道路整備の未充足な)「地方への配慮」から自民党が一般財源化に難色を示していた。法改正の必要の
ない自動車重量税の一部の一般財源化(総合財源化)が妥協点とも見られていたが、2006年11月に塩崎恭久
官房長官はいったんは「本丸」ともいえる揮発油税も含めた一般財源化(総合財源化)を表明。
結局、政府・
与党は12月7日に2008年の通常国会で所要の法改正を行う方針で合意。税収の全額を道路整備に充てる現行の
仕組みを2008年度に見直し、道路整備費を上回る税収分を一般財源化(総合財源化)する方針を明記。2008
年度の高速道路通行料金引き下げの原資への充当も検討項目に盛り込む。「必要な道路はつくる」ことが確
認され、一般財源化反対派も矛を収める。

そのような中、マニフェスト選挙ともいわれる前回の国政選挙で民主党は「高速道路無料化」を掲げ政権を
獲得してい
く。この政策のコアメンバーである経済評論家、総務省顧問であり、成長戦略総合研究所理事長
の山崎養世は今日までの経過を批判する。彼は、
2001年4月に誕生した小泉純一郎政権に深く失望。小泉改
革は、大企業の日本脱出を支援するけれども、地方の衰退を加速する。特に、道路公団民営化という名の、
世界一高い高速道路の料金の永久化が、便利な大都市への集中、不便でコストが高い地方の過疎、というい
びつな国土を固定してしまうため
太平洋ベルト地帯からの輸出国家」という、失われた国家モデルを転換
できない。戦前のドイツが世界初の無料の高速道路アウトバーンを造って地域経済を結びつけて失業者を600
万人から30万人に低下させ、そのドイツに学んだ米国が戦後全国に造った無料高速道路インターステートハ
イウェーが、黄金の50年代、60年代と呼ばれる年率3%の高度成長に貢献した例を挙げ、日本の高速道路は、
20世紀中に無料にする約束を破り、世界一高い料金を取り続け、地方では利用できずに宝の持ち腐れになり、
経済の分散化や構造転換が一向に進まない日本の地方(日本の国土の8割は、自動車しか日常の交通手段が
ないクルマ社会)の高速道路を建設当初の約束通り無料化するのが、地方で生活と仕事ができるための最低
条件だが、例えば本四架橋を使えば神戸から淡路島を通って70キロ、1時間足らずで着くのに、6000円もの
通行料を取られると。

そして、めざすべきポスト工業社会のモデルとしてドイツを挙げ、ドイツでは、世界で最初の無料の高速道
路網(アウトバーン)が張り巡らされ、多くの町の中心はクルマ乗り入れ禁止。車道の横に歩道と自転車道
があり、路面電車も発達し、この頃は全国に新幹線網も整備され、地方に住んでいても、交通は便利であり、
人間と環境重視しで日本の大都市のような通勤ラッシュや地価高や物価高とも無縁。緑の森や田園はすぐそ
ばにある。便利で豊かなうえに、時間と人生にゆとりがある生活が、小さな町がある分散型の国土と経済を、
ドイツは高速道路からつくり上げ無料の高速道路というネットワークが地方を結びつけたが、日本の本当の
構造改革も、高速道路無料化から始めるべきだとして下図の提案を行う。

 また、山崎養世は『日本列島快走論』のなかで(1)高速道路は無料化が原則であるのに道路公団の民営化
はそもそも法律から逸脱している。(2)また、「全国プール制」は受益者負担原則と償還主義から逸脱す
(田中角栄の当初目的を是正)と原理的に批判した上で、

1.高速道路をプロの物流ルートから「生活道路」に変える
2.低金利の借り換えで、基本法にそって無料化を現実のものにする
3.国債の返済と新路線の建設財源は無料化することで一般道路の新規建設を抑制
4.道路の権限と財源を都道府県に移す
5.戦略的に"世界一のクルマ社会"をつくる

以上の5点に要約し、ほぼ全ての国民に大きな利益となる政策で、道路族議員と中央官僚の意識転換を促せ
ば、数年以内の実現が可能。国民全員にわかりやすい魅力的なプランだと主張。東京湾をまたぐ「アクアラ
イン」(料金片道3000円)の羽田-木更津間15kmが無料化で首都圏のヒトとモノの動きは一変し、新幹線と
並ぶ戦後日本の社会資本の代表である高速道路を地域の普通の人びとの手に取り戻し、ささやかな夢を全国
で実現してゆく起爆剤になる高速道路の無料化を変革の突破口とする位置づける。

 




ドイツのモデルは、「環境リスク本位制時代」にあっては、脱原発、持続可能な社会建設、再生エネルギー
社会政策
推進に参考になるものだと考える。製材所経営者の従兄弟の話(北欧のホワイトウッドの価格が奈
良→東京運送賃より安い)もあり、また、ドイツの50キロ圏内バイオマス循環社会の実証の先駆例もあり
説得力がある。また、京都の半導体製造装置メーカの若い技術者のドイツ駐在話では、高速道では制限速度
どはないが、一般道路の制限速度は厳格に遵守され、学校や幼稚園周辺以内最高速度制限の表示信号配備が
徹底しているという。亀山の通学途上の小学生の交通事故死などはもってのほかで、事故発生以前の問題で
日本の家庭・地域教育の品位の低さを物語っている。また、今回の無料化実験で、一般道との接続区間の混
雑への懸念は該当地区住民などの学習能力や走行慣習の対応可能部分があり、かつまた、フェリーなど競合
異種交通機関へのリスクヘッジ策をきめ細かくすれば対応できる。いずれにしても、民主党の高速道路無料
化政策は、小泉内閣時の猪瀬直樹らの民営化や新自由主義的手法の矛盾を炙りだしつつ、道路特定財源制度
の矛盾をも炙り出しつつ、旧大蔵(財務)官僚や族議員の跋扈、抵抗、縫合実体を照射し、かつまた、民主
党内部の抗争をも詳らかにする。わたしも山崎養世(般社団法人太陽経済の会 代表理事でもあるのだ!)
の影響を受け「高速道路無料化」を強く支持、なおかつ、社会資本(社会保障)の充実と経済成長の双方の
両立政策も似通っていることをこの作業で確認する。




それにしても凄い雪だ。大規模気象変動はこんなところにも顕れているのかも知れないと、部屋から空を眺
めていると、ジェロの「海雪」の歌が遠く若狭の海から聞こえてくるような気がする。

 

 

 

 

 

 

 



 

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