極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

三重水素事変前夜

2013年09月19日 | 時事書評

 

 

 


東京電力福島第1原発の地上タンクから汚染水が漏れた問題で、東電は14日、タンク北側約
20メートルの観測用井戸で13日採取した地下水から、トリチウムを1リットル当たり15万ベ
クレル検出したと発表。8日採取分と比べると濃度は5日間で約36倍上昇。地下水のトリチ
ウム濃度は日を追うごとに高まっている。地下水調査が始まった8日に、1リットル当たり
4千2百ベクレルを検出。10日には法定基準値6万ベクレルを超える6万4千ベクレル、11
日は9万7千ベクレル、12日には13万ベクレルだった。東電は「タンクから漏れて土壌にし
み込んだ汚染水が、地下水に到達し、量が日ごとに増えている」とみている。一方で、東電
はタンクの近くを流れる排水溝から13日採取した水で、ストロンチウムなどベータ線を出す
放射性物質の濃度が1リットル当たり940ベクレル検出したと発表した。6日採取分(1リッ
トル当たり120ベクレル)から約8倍に上昇している。排水溝では7日から、高圧洗浄機を使
った排水溝の除染作業をしており、東電は「除染作業で事故の際に飛び散った周囲の放射性
物質が集まった可能性がある」と説明している。また、安倍晋三首相は今日、東京電力福島
第1原発事故対応に効率的に取り組むため、同原発の5、6号機を廃炉とするよう東電の広瀬
直己社長に要請し、広瀬社長は「取り扱いは年内に判断する」と応じた。首相が同原発を視
察後、記者団に明らかにしたという。東電は、放射能漏れ事故を起こした同原発1~4号機の
廃炉を決定しているが、停止中の5、6号機の扱いは決めていない。広瀬社長に「事故対処に
集中するため廃炉を決定してもらいたい」と伝えるとともに、(1)廃炉に向けた予算確保、
(2)期限を決めてタンク内の汚染水を浄化するよう求めたとも。 

ポスト福島第一原発事故の原発政策は、このブログで掲載してきたので“いまさら書けない
ポスト福島第一事故のエネルギー政策”として横に置いておいて、トリチウム流失あるいは
希薄トリチウム排水の海洋放出について考えてみる。トリチウムについてはネット検索すれ
ば解ることなのでここでは(1)リスク評価を通底する考え方と(2)そこから導き出され
る解決策を考えてみる。調べてみて気がついたのは、規制基準(排水)の根拠が頭に入って
こないことだ(もっとも、頭の悪さや、昨今のバイオリズムの不調も大いに関係しているの
だが)。さて、単独 トリチウムとしての国の排出および環境規制基準はない。そのかわりに、
原子力発電所から放出される放射性物質については、法令により年間の綴量限度か1mSVと定
められているからこれに準拠させているのが現状である。国の指針では、法令により定めら
れた年間線量限度を下回るように、放出される放射性液体・気体廃棄物による一般公衆への
綴蓋「目標値」として、年間0.05mSVを定めている。参考として、中部電力のトリチウムに関
する記載されている説明書きは以下のようにある。

■浜岡原子力発電所では、指針に定められている年間の線量「目標値」を十分満足できる値
として、原子 炉施設保安規定において、①裁射性希ガス、②放射性ヨウ素およひ、③トリ
チウムを除く放射性液体廃棄物の3種類について、年間の放出管理「目標値」を定めて管理
している。■トリチウムは、発電所周辺に住んでいる人々に与える影響か非常に小さいこと
から、放出管理「目標値」は定められていない。ただし、トリチウム(液体状)の放出量の目
安値として、放出管理「基準値」を定めて管理している。また、トリチウム(気体状)につい
ては、放出管理「目標値」や放出管理「基準値」を定めていないか、気体中に含まれる水分
の一部を定期的に採取・測定し、有意な変化かないことを確認している。■気体の粒子状物質
は、発電所の各建物の排気系の出口に設置されているフィルタにより捕集、十分に低減でき
ることから、放出管理「目標値」や放出管理「基準値」を定めていないが、定期的に排気系
の出口で気体を採取・測定し、検出されないことを確認している、と。

 

要するに、以下の要件を掲げ、トリチウムは安全サイドにあると喧伝されている。 

① 宇宙や、海や、大気、水にも含まれている
② 微量なβ線なので外部被曝のような影響はない
③ 水なので、体内に留まらず排出される
④ 1Bq飲み込んだ場合、カリウム40との係数比較が0.003
⑤ 保安規定に示された放出基準値(事故前)22兆Bq/年
⑥ レントゲンやその他との比較

これに対し懐疑論/慎重論といえば、「トリチウムのオンタリオ州飲料水質基準に関する報告と助言
」から引用される。それによれば、2009年5月カナダ・オンタリオ州の飲料水諮問委員会は州
環境省長官に対して飲料水に含まれるトリチウムの上限値を1㍑あたり、20Bqとする内容の
報告書を諮問委員会委員長がオンタリオ州環境省長官に提出。補足すると、2009年5月の O
DWACの『勧告と助言』にいたる経過:まずカナダの核施設からのトリチウム健康被害の実

態があり、それに基づき1994年に「トリチウムに関する基準」の勧告が出されたが、カナダ
の環境保護団体である「カナダ・グリーン・ピース」が2007年に提出した報告に触発され、
同じく2007年にトロント市の医療健康局長がオンタリオ州の環境長官にもっとトリチウム基
準を厳しくするように要請する。この要請に基づいて環境省長官がODWACに「報告と助言」
頼したのがその経過。

このとき、オンタリオ州飲料水質・試験基準諮問委員会のジム・メリット(Jim Merritt委員
は、「この基準の提案価値に磨きをかけるという意味で、私たちはその他の法令基準、カ
ナダ健康省が使用しているアプローチを含みますが、で使用しているモデルのいくつかの多
様な数値と100万分の1のリスクに考慮を払いました。その多様な数値は1㍑あたり7Bqから
109Bqの範囲となると結論されました。現在の(トリチウムの)基準は1㍑あたり7,000Bqです。
この範囲で提案基準を同定するために、私たちは2件の鍵を握る利害関係者が提供する情報
に耳を傾けました。この利害関係者は1㍑あたり20Bqとしておりますが、運用上の年間平均
値を適用しており、実用的でもありかつ達成可能でもあります。実際のところ、オンタリオ
州のすべての自治体飲料水処理工場は、核施設のある地域も含めてすでにこの数値を達成し
ております。過去数十年にわたって、カナダ全体で規制されている核施設は、水路に排出す
るトリチウムのレベルをかなりの程度削減してきました。その結果、地方自治体あるいは共
同体からの飲料水からは、公衆の健康にとって受容しがたいリスクだとみなされるレベルで
のトリチウム被曝は誰もしなくなったのです」と述べている。

つまり、濃度の高い人工トリチウムは人体に入るとほとんど体の中に吸収する。そして普通
の水素のかわりに、人間の体を構成する重要分子の材料として使われる。(OH基=ヒドロキ
シ基など)こうしていわば誤って使用されたトリチウムが、もし細胞の重要構成分子である
さまざまな高分子を構成すれば、やがては元素転換してヘリウムとなり、高分子結合を担え
なくなる。高分子結合が破壊され、それはダイレクトに細胞損傷に直結する。これが、トリ
チウムによる内部被曝の細胞損傷モデルdとされる。従って、たとえばICRP(国際放射線防
護委員会)の被曝モデルを忠実に踏襲するATOMICAが指摘するような従来の「放射線内部
被曝の損傷モデル」が全く通用しないモデルとなる。 

さらに、この調査報告書には、オンタリオ湖のピカリング原発25km周辺の 出産障害、死産、
妊娠中、出産期、新生児、乳児の死亡を調査した。 ピカリング原発周辺で全てで死亡率の増
加の証拠は見つからず(すべての死亡原因がオンタリオの平均を下回ってなければならない
が)。ピカリング原発のトリチウムの空中の放出口と水中の放出口と 原発にいちばん近い町
のピカリングとエイジャックスの濃度との関係を調査。ピカリング原発からの大気放出がも
っとも多い5つの場所で中枢神経障害の増加との因果関係は見つかったが、トリチウム被曝
との顕著な統計的相関は見つからなかった。さらに米国厚生省の地質モニターリングデータ
でも調査を行なったがトリチウムと排出口との因果関係は見つからなかったが、ピカリング
でのダウン症発症率との統計的相関関係は顕著に増加していた。23例の先天的障害が起きて
いたのはトリチウム排出口だけで発生は明らかに増加。統計的に顕著ではないがトリチウム
の大気放出とダウン症との間に相関関係があるが、米国厚生省のモニタリングデータでは相
関は見
つけられなかった。 エイジャックスではピカリングのような顕著な相関は見つからな
かったが、正の相関はあるが、米国厚生省のモニタリングデータでは見つからなかった。最
初地域での大気排出レベルは、個人的な被曝とは無関係としていたが、地理的な交絡因子が
トリチウム放出平均値と先天的異常間に影響を及ぼす可能性があるという結果となった。




また、京都大学名誉教授 斎藤眞弘「トリチウム、水、そして環境」では、①胎児期に母体
を介して取り込んだトリチウムは4週間後(ヒトで言えば多分15歳くらい)には90%以上が
体外に排出されてしまう。一方、体内に残留するトリチウムを、自由水、たんぱく質、脂質、
DNAなどの成分ごとに計ってみたところ、たんぱく質やDNAなど有機成分に含まれるト
リチウムの割合が、時問とともに増えることがわかった。②生物学的に長く生体内に残るト
リチウムによる被ばく線量は、短い期間で体外に排出される自由水型トリチウムによる被ば
く線量に較べて無視できなくなる。③DNAに結合したトリチウムは、細胞核の外に存在す
るトリチウムに較べてより多くの傷害をDNAに与えることになるとその危険性指摘してい
る。


さて、トリチウムの海洋放出のリスクについての知識は、一知半解としても俯瞰できたとし
て、次にその除去法について東電の「トリチウムの処理方法」、2013.04.26からその種類と
特徴について看てみよう。

 ① 水蒸留法:H20、HT0、T2Oの蒸気圧の違いにより分離する方法で、理論的に環境レベルま
で除去することが可能だが、比揮発度がほぼ「1」に近いため、単位段数あたりの分離性能
は小さく、建屋を含め、非常に大規模な設備になる。エネルギー消費が大きいことに加え、
故障時の対策に十分な留意が必要。

② 深冷蒸留法:・水素ガス(H2、HT、T2)の沸点の違いにより分離する方法で、極低温に
する必要があり、エネルギー消費が大きく、処理量も小さく、冷媒喪失時のガス漏洩対策に
十分な留意が必要。

③ 水-水素交換法(気層法):触媒を用いて高温下で水素原子の置換反応を行う方法で、
高濃度トリチウムを対象とした技術で、ガス-ガス反応であることから多段効果を得ること
はできない。

④ 水-水素交換法(液層法):触媒を用いて低温で水素原子の置換反応を行う方法で、高
濃度トリチウムを対象とした技術で、塔内に液を均一に分散させるための内部構造が複雑な
ため、処理流量に上限がある。

⑤ 電解法:カソードで発生する水素ガスには電解液中の同位対比に比べ重成分が少なくなる
ことを利用し、エネルギー消費量が大きく、多段カスケードを構築するとその消費量は甚大
になる他、不純物の影響を受けやすく、当手法単独では不利。

⑥ 水-水素交換法(液層法)+電解法:二種類の技術を組み合わせたもので、高濃度トリチ
ウムを対象とした技術で、処理量に上限があり、「ふげん」で採用されたアルカリ電解槽は
アルカリを取り除く工程が必要。


⑦ 二重温度交換法:
高温状態と低温状態の同位体化学平衡シフトを利用した方法で、重水製
造を目的としたもので、トリチウムに適用する場合は濃度の制御や操作性に難点を持つ。

以上7種類の方式が紹介されているがこのほかによい方法があるかもしれないが、今夜のと
ころは時間切れの残件扱いとしておこう。好みとしていうなら、⑥の水-水素交換法(液層
法)+電解法がオールソーラーシステムの応用性があり面白そうだ。やり方は電力は、メガ
ソーラー+風力+蓄電池(レドックスフロー法、ナトリウム-硫黄電池法など)で供給すれ
ばよいのだから、この件も残件扱にする。さて、数10の核種を除去するが、比較的薄いトリ
チウムすなわち三重水素は残留するがこの処理は、コスト的に負担になるから、海洋の希釈
に期待し放出しようとする動き(原子力村+政府?+東電?)とこれを阻止しようとする勤
労国民が衝突する事態が懸念される。そう、あの水俣病闘争のような事態が再び福島で起こ
るかもしれない。そうなれば、我が国の国際的信頼性は失墜する。何としてもそれは避けな
ければならない。わたしたちは“三重水素事変前夜”に立っている。

                                     

 

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