極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

NMBインパクト

2012年05月09日 | EMF安全保障

 

 

 

    妹に逢わずあらば 爲方無み 岩根踏む 生駒の山を 越えてそ吾が来る / 遣新羅使人

        たらちねの 親のかふ蚕の 繭ごもり いぶせくもあるか 妹に逢はずて / 柿本人麿

 

 

 

限られたエネルギー資源を効率良く利用するため電気自動車や余剰電力を有効的に使うことを目的に電力スマー
トグリッドシステムなどの技術開発が日夜展開されて、太陽光、風力など自然エネルギーの有効利用に、高度な
蓄電技術に期待がかかる昨今。電気自動車や自然エネルギーの積極利用の根幹技術である「蓄電池」。現在、蓄
電池としてリチウムイオン蓄電池が広く利用されている。電子機器用の小型電源 (~10 Wh) 、電気自動車用の
大型電源 (~20,000 Wh)に利用されている。リチウムイオン蓄電池はエネルギー密度から有力な方式だが、リチ
ウムイオン電池のリチウムは地球の地殻中にわずか 20 ppm (0.002 %) 程度しか存在しない元素=レアメタルで
リチウム資源で、コバルト、ニッケル、銅などのレアメタルも輸入に依存しているという問題を抱えている。結
果として、余剰電力や自然エネルギーの蓄電目的 (~1,000 kWh クラス) のリチウムイオン蓄電池は、コスト、
資源においても制約を受ける。

東京理科大学・総合研究機構 藪内直明講師、同理学部第一部応用化学科 駒場慎一准教授らの研究グループは、
ナトリウムイオン電池用電極材料としてレアメタルを必要としない新規鉄系層状酸化物の合成に成功しという。
それによると現在高性能電池に広く用いられているリチウムの代わりとして、資源が豊富なナトリウムを電気エ
ネルギー貯蔵に利用するという基礎研究を2005年から進めており、これまでに炭素材料と層状酸化物を用いるこ
とにより、リチウムを全く用いずに常温で作動する新しいエネルギーデバイス「ナトリウムイオン電池」の立証
に世界ではじめて成功したという。なお、今回の研究成果は、東京理科大学と株式会社GSユアサの共同開発。

今回の発明の何がインパクトなのか? リチウムやコバルト、ニッケルといったレアメタルを一切必要としない
鉄、マンガン、ナトリウムという資源豊富な元素を組み合わせ(NMB:ノーマルメタルバッテリー=レアメタ
ルフリーバッテリー)で実現したこと。それだけではなく、さらに、これまでの材料と比較して電池のエネルギ
ー密度を向上させる可能性があることだ。この実験に大型放射光施設SPring-8 (ビームライン: BL02B2) のフォ
トンファクトリー (ビームライン: BL-7C) の設備が貢献していることも見逃せない。 

上の図はナトリウムイオン電池の動作概説図と試作品(右/左はリチウム)の写真だが、それではどのようにし
て発明されたのか? これまでは、鉄系の層状酸化物としてアルファ型のナトリウム含有鉄酸化物(NaFeO2)が
知られていたが、エネルギー密度は低く、一般的なリチウム電池用の正極材料と比較して6割程度のエネルギー
密度しかなく、電池寿命も十分でなかった。今回の研究では、鉄を50%ほどマンガンで置換することで、従来型
の層状酸化物(下図左)と 今回発見された新規Fe系層状材料(右)の比較概説図のナトリウムイオンの酸素の配
位環境が異なり、P2型呼ばれる分類可能な層状材料の合成に成功する。 この新規鉄系材料(Nax[Fe1/2Mn1/2]O2
のナトリウム電池のエネルギー密度(正極重量ベース)を評価したところ、電気自動車用のリチウム電池で広く
用いられているスピネル型リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)やリン酸鉄リチウム(LiFePO4)に匹敵するか、
それ以上のエネルギー密度である500mWh/gのエネルギー密度が得られることがわかったという。

 

 





このことで、これまでに報告されているナトリウムイオン電池用の正極材料として最も高い値で、さらに、電池
に求められる繰り返し特性にも優れ
ることがわかっているという。これらの研究成果は将来的にはリチウムやコ
バルト、ニッケルといったレアメタルを一切用いることなく、現状のリチ
ウム電池に匹敵する高エネルギー密度
の蓄電池が実現可能であることを示す。レアメタルフリーと高エネルギー密度が両立可能なナトリウムイ
オン蓄
電池は、将来的には自然エネルギーの有効利用、スマートグリッド用の定置用大型電池、さらには電気自動車用
の電源としての実用化が
期待されている。



 

 



今後どのような展開をみせるのか、わからないものの「レアメタル代替電池」という対立(対抗)概念を止揚す
る概念・理論の誕生の一翼を担うことは確かなんだろうと思わせる発明事例-話題のネオジウムを新概念・理論
で人工的につくることができる時代-のように思えるから不思議で面白い。

話は飛躍。自然界では存在しないと思われる合成物質を生み出す探求のエネルギーは、この膨大な宇宙のそれに
比して微塵は優に満たぬ。さりとて、そのパッションもアクションも凄いものではないかと感心し、だからこそ、
遊び心は忘れず探求のエネルギーを燃やし続けるねばと、万葉の色恋に例えて二首を選じた。

コメント
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