ONE FINE DAY

「昨日のことは忘れてほしい」
「もう遅い。日記に書いた」

ミュンヘン

2006-02-24 | 映画
ミュンヘン」を姉と見る。

予告編を見たときに内容はある程度予測できたので、
映画館まで足を運ぶかどうか迷ったけれど、見てよかった。
もう一度見たいとは思わないが、それでも見てよかった。

そぼ降る雨の中、暗澹たる気持ちで帰途についた。
解決の兆しもないまま、
報復に次ぐ報復のテロが繰り返される今のこの世界で、
「繰り返されるテロのさきに平和なんてあるはずがない」という、
メッセージを投げかける意味は大きいと私は思う。

それをスピルバーグのような監督が作った。
「スピルバーグの映画なら見に行こう」と、
一人でも多くの若い人がこの映画を見て、
今この世界で起きていることに関心をもち、
疑問を抱くようになって欲しいと心の底からそう思う。
きっとスピルバーグもそれを願ってこの映画を作ったのだろう。
「シンドラーのリスト」を見たときにも感じたが、
彼の中に在る映画人としての誠実さ、真面目さ。
「宇宙戦争」を撮りながら、一方でこういう作品も撮る。
興味深い。

エリック・バナの演じたアブナーという男は、
イスラエル機密情報機関“モサド”の一員だ。
組織されたテロ集団のリーダーであり、唯一のイスラエル人。
報復のテロを遂行することに迷いはない。
ただし一般市民や標的の家族を巻き込むことには抵抗がある。
一人、また一人と殺していく過程で、次第に冷酷非情になり、
人間として壊れていく。
到底共感できるような人間ではない。
たとえ、家に帰れば普通の家庭人であるとしても。
その彼にこの映画の核心を語らせたことに若干の違和感を覚えた。
彼が語らなくとも十分にメッセージは伝わった。

役者たちがいい。
特に印象に残ったのは、フランス人親子。
政府に情報は売らないと、まるでレジスタンスのような口をきく。
一体何者なんだ?
不気味さという点では圧倒的存在感だった。