ONE FINE DAY

「昨日のことは忘れてほしい」
「もう遅い。日記に書いた」

「ディオールと私」「パレードへようこそ」

2015-05-28 | 映画


「ディオールと私」
クリスチャン・ディオールの名前くらいは知っているが、
ラフ・シモンズというデザイナーは初めて知った。
このベルギー出身のデザイナーに、
よくありがちなエキセントリックさはなく、
淡々と誠実に仕事をこなしていく姿が
むしろ新鮮だった。

その彼が、
コレクション当日、
セレブ達が到着し、会場全体が異様な興奮に満ちていく中、
屋上に友人と佇み、感極まって涙を流すシーンが
とてもとても印象に残った。
その後は見ている私も一緒に泣きっぱなしだった。



もう1本は「パレードへようこそ」
「ビリー・エリオット」でも描かれていた80年代のイギリス、
炭鉱労働者のストライキの時代だ。

実話に基づいたストーリーらしい。
ある日、ロンドンに住むゲイの青年が、
ストライキのニュースを見て、
大きな権力と闘っているということでは、
差別されている俺たちゲイも、
炭鉱労働者と同じではないか、
彼らを支援しよう!と思い立ち、
素早い実行力で、
ウェールズのある炭鉱町に赴き、
予想される悲喜こもごもが素直に暖かく描かれて、
さすがイギリスなわけだが、

この映画の中に、
ファーストクラス・マインドを持った人が登場する。
それなんだ?と思われるだろうが、
こういう心を、信念を持った政治家が
日本に1人でもいてくれたら……と痛切に願いたくなるような、
清々しく、正直で、聡明で、輝く心を持った人。

特にこの青年。
映画の中で久々に出会った好青年だった。


帰りがけ、ふと思った。
私の母もかつて、
ファーストクラス・マインドを持った若者だったに違いないと。
そう思ったとたん、
何故か胸がキリキリ痛んだ。

微熱

2015-05-19 | 家族


微熱のため保育園に行けない末姫を預かる。
兄、姉がいて3番目の姫はおっとりとしている。

ママがいなくて淋しくて泣くにしても、
どこか遠慮がちでこちらが切なくなる。

そんな姫、ピアノが大好き。
ちょこんと座って現代音楽風な旋律を弾いている。


Casper David Friedrich

2015-05-18 | 美術
西洋近現代美術史(19世紀アート)
今日はドイツロマン主義のフリードリヒだった。

またナポレオンだ。
神聖ローマ帝国はナポレオンの侵攻によって
1806年に解体した。
フランスの統治下となる。
ナポレオン崇拝時期もあったベートーヴェンだって
複雑な心境だったに違いない。

1808-1810に描かれた「海辺の修道士」

画面の3分の2が空だ。
海辺に佇む修道士が暗い夜の海を見ている。

ベルリン美術館で上の絵と対に飾られているのが、
「樫の森の修道院」

破壊された教会に残ったのはファサードだけ。
そこをくぐって人々は祈りをあげようとしているのか?

ドイツの人々はこの対の絵の前にある椅子に座って
何時間もみているそうだ。

さてフリードリヒの作品に触れる前に、
実は先生は
数枚のレンブラントの風景画を見せてくれた。

レンブラント「エジプトへの逃避途上の休息」

当時絵画のヒエラルキーは歴史画、宗教画、肖像画に比べると
風景画はまだまだの時代。
風景画を描きたければそこに宗教的テーマを入れた。
(それはそれで美しいとおもうが)

レンブラント「長いアーチのある風景」

橋を渡ればもうすぐ我が家だ、
長い旅から家路につく者を木々は太陽をさんさんと浴びて出迎える。
これは希望を描いた風景画。

そして、
レンブラント「風車」

低地の苦しみながら、灌漑用水を作り土地を整えていったオランダ人の
心の象徴というべき水車。堂々と誇り高く描かれた。


こうしてレンブラントの風景画を見た後に
どこか寒々しく、死を思わせるようなフリードリヒの絵を見ると、
ちょっと見方が変わってくる。

「雪中の石塚」

樫の木はドイツの国の木だ。
石塚は墓とも思えるが、その上にたつ枯れ木の枝からは
新緑が出てきている。
これも希望を描いたのではないか?

「聖堂のある冬景色」

この絵にはとても惹かれる。
遠くに霞んで見えるゴシックの教会が美しい。
小さくてよく分からないが、
手前中央の岩に男が寄りかかっている。
手前に放り出された松葉杖をついて
やっとの想いでここにやってきたのだ。
彼が見つめているのが何かこの絵でわかるだろうか?
木に吊るされた磔刑のキリスト。
テーマはともかくこの絵の構図、色彩は本当に美しい。

フリードリヒがこれでもかと描く
凍てついた寂しい冬景色。
でもそれは国を奪われた悲しみばかりではなくて、
ドイツ人の精神を見据え、微かな希望を描いているのではないか。
風景画の決まりも、宗教画の決まりも飛び越えて、
新しい時代の絵となり得た。

こんなに美しい風景画も描いています。


50代になって19才年下の奥さんをもらって
こんな絵も描いています。


でも、変わった人だね。


二十日鼠と人間

2015-05-16 | 舞台


日本橋TOHOシネマズまで出かけて
ナショナルシアターライブ「二十日鼠と人間」を観る。
カンバーバチとジョニー・リー・ミラーが交代で演じた
「フランケンシュタイン」から始まってもう何本目かな。
前回観た「欲望という名の電車」はかなり面白かった。

さて今日の作品はというと、
スタインベックの名作中の名作なので、
私がどうこう言ってもしょうがないのだが、
なんだか釈然としない終わり方だった。

ちょっと頭の足りない大男を演じた俳優さんは、
ガッツのある映画「ブライズメイド」で、
主役の彼女の恋人候補の保安官を演じた役者だった。
今作でトニー賞にノミネートされたそうで、
かなり評価が高いらしい。
そして、ジェームズ。フランコだ。
見るたびに、
お願い、もう少し目を開けてと、
呟きたくなるアイツだ。
何故かラリったお兄ちゃんという印象のフランコ。
正統派舞台に挑戦してたんだね。

ロンドンやニューヨークまで行って生の舞台を観ることが
なかなかできない私たちにとって、
ナショナルシアターライブは本当にありがたい企画。
何より興味深いのは役者のみせる臨場感。
なのだが、
フランコさんはものすごく自然に舞台にいて、
演技をしてる感もなく不思議な存在感があった。