ONE FINE DAY

「昨日のことは忘れてほしい」
「もう遅い。日記に書いた」

ヴェネチア派②

2012-10-30 | 美術
ヴェネチア派二人目の画家は、

マンティーニャ(1431-1506)

ドナテッロが師匠。
古代ギリシャ・ローマについては師匠から教わりました。
師匠は彫刻家ですから、
彼の絵は、ミケランジェロとは違った意味で彫刻的です。

先生曰く。
「マンティーニャはすぐわかります。山や岩肌を見れば。」




おっしゃるとおりです。
2枚ともオリーヴ山の祈り(ゲッセマネ)ですね。
ジーザスの苦悩をよそに弟子たちすくすくと寝入っています。

この、おもいっきり短縮されたジーザスも有名ですね!


画家としての視点がユニークですね!

そして、
お待たせしました!
マンティーニャが大好きなテーマ、
「聖セバティスアヌス」
セバスティアヌスは、ローマ兵でありながら、熱心なキリスト教信者で、
奇跡を行って多くのひとを改宗させ、
時のローマ皇帝の怒りを買い、
全身を弓矢で射られ(実はこれでは死ななかった)殉教した聖人。

彼は、一見して怪しすぎると誰もがわかるように、
歴史上もっとも初期のゲイアイコンでもあります。





先生「当時、美少年ヌードを描きたければセバスティアヌス!」だったそうです。

はらりと落ちてしまいそうな腰布。
傷口からすーっと滴る血。
射られた矢で薄く盛り上がった皮膚。

妖しすぎますよね!

マンティーニャは、
当時ヴェネチアの画家と言えばベッリーニ!
といわれた名門一族の娘さんと結婚してるのですが、
彼の絵を見る限りゲイ疑惑(笑)は拭えませんね。

セバスティアヌス、
たくさんの画家が描いています。

グイド・レーニ
三島由紀夫が同じポーズで写真に撮ったことで有名な一枚。


ルーベンス
さすがですね!
要するにセバスティアヌスの絵は売れたんでしょうね。


エゴン・シーレだって描いてます。


ほぼ裸で、痛々しい姿のセバスティアヌス。

ラファエロはこう描きました。
これが一番好きかな。








ヴェネチア派 ①

2012-10-30 | 美術
ヴェネチア・ルネサンス、面白いです。

フィレンツェでルネサンスが花開いていたとき、
ヴェネツィアではどうだったか?
同じイタリアでも違うのです。

北に位置するため、
ヤン・ファン・エイクなど北方の画家の影響色濃く、
油彩画も早くから試みている。
驚くばかりに緻密な表現もあり。
また、古くから東方との交易もあり、
その影響か、色彩が豊かで明るい。

今回特に印象的だった画家をふたり。

まず、
アントネッロ・デ・メッシーナ(1430?-1479)


「受胎告知をうけるマリア」
マリアだけをえがいた珍しい絵ですね。
北方色の濃い、静かなる無表情私は大好きです。
私はずっと、この絵は北方の画家が描いた絵だと思ってました。

このマリア様人気があったようで何枚か描いています。
こちらはちょっと動揺するマリア。


「読書する聖ヒエロニムス」


横20センチくらいの小さな絵。
床とか窓の外の風景とかすごすぎます。


こんな面白い(でも美しい)聖母子もあります。
イエスも天使も「小さいですね。
マリア様もおめずらしいタイプで新鮮。

そして、人気のテーマ「聖セバスティアヌス(セバスチャン)」

このテーマについてはあとでまた。




若者の肖像

2012-10-25 | 美術
昨年、ルーヴル美術館で見たこの絵。



たいへん心惹かれる絵で、
スタバのカップにも印刷して、
映画でも、講座でもどこでも持ち歩いているお気に入り。



それまで聞いたこともなかったパルミジャニーノという画家の名も覚えた。

彼の絵を検索してみていたら、
数年前に行ったカポディモンテ美術館展で
この絵は見たことがあると気が付いた。




大きな絵で迫力があり、圧倒的に美しかった。
脳裏に刻まれる絵。

パルミジャニーノ20才の時の自画像も、
1520年代としては凸面鏡に自分をうつしていて風変りで有名らしい。



20才の若者にしてはずいぶん幼い印象だが、
端正で、優美で、この若者が野心満々なのはうかがえる。

それはさておき、
私がルーヴルで心惹かれたこの絵を見て、
娘は「これはコレッジョの絵だよね?」と言った。

調べてみると、たしかにある。

コレッジョ作の「若者の肖像」



パルミジャニーノのそれとは
額縁が描かれていることが明らかに違う。
しかし絵はそっくりだ。



コレッジョはパルミジャニーノの師匠。
それははっきりしているのだが、
この若者はパルミジャニーノ、
つまり本人が描いているのは自画像?という説もあって、

どちらかが模写であるのは確かだが、
一体どちらが先に描かれた絵なのか、

誰か知っている人がいたら教えてください。

2作ともルーヴル所蔵品。




ヘラクレイトスの謎

2012-10-22 | 美術
靴のゴム底が無残にも剥がれ落ち、
家に帰りつくころには、
靴はぺったんこになった。

もう10年くらいはいている古靴。
よりによって東京まで出ていく日になぜはいていったのか?

そんなこともすっかり忘れさせてくれるくらい、
今日の美術史の講義は興味深いものでした。

ラファエロ2回目は、
ヴァチカン教皇庁の署名の間に描かれた4作についての講義でした。

特にあの有名な「アテナの学堂」の解説が、
美術史って最高に面白い!と思わせてくれる内容でした。
先生の話に私はすっかり魅了されてしまいました。



古代ギリシャの哲学者、科学者が一堂に会した様子が描かれている。

たとえば、
中央のこちらに向かって歩いてくる二人は、
左がプラトン、右がアリストテレス。



プラトンのモデルは、
ラファエロが敬愛してやまないレオナルド・ダ・ヴィンチであることは、
一目瞭然といっていい。

右のアリストテレスのモデルは諸説あるが、
ミケランジェロだという学者もいるらしい。

アリストテレスの足もとにだらしなく横たわっているディオゲネスの逸話など、
それだけでも一時間じゃ足りないよというくらい面白いし、

左側の下のほうに白い服を着てすくっと立っている女性のように見えるのは、
「アレキサンドリア」でレイチェル・ワイズが演じたヒュパティアで(?)
しかしそのモデルは、この絵を描かせたユリウス2世の甥っこで、
じゃあ男じゃないのってそのあたりも興味深い。

この絵が描かれて500年経った今では、
一体誰なのかわからない人も結構いて
(モデルが誰なのかということも含めて)、
研究者泣かせというか、研究者喜ばせというか。

そんな中でもはっきりわかるもう一人は、
右端でこちらを向いているラフアエロ自身。
古代ギリシャの有名な画家アペレスに自分をなぞらえている。
相変わらず自信満々だ。



さて、一番の謎は、

階段下に座り、頬づえをついている筋肉質な男、ヘラクレイトス。
モデルはどう見てもミケランジェロ。




このヘラクレイトス=ミケを描き足したのは一体誰か?という問いが
今日一番のミステリー。

え?ラファエロに決まってるでしょ?

そうかな?本当にそうかな?
これだから歴史は面白くてたまらない。


「アテネの学堂」にはラファエロの描いた下絵が残っている。
そこにはヘラクレイトスは描かれていない。

1510年にこの絵が完成したときは描かれていなかったヘラクレイトス。

さて1510年といえば、
同じヴァチカンはシスティーナ礼拝堂で、
独り黙々と天井画を描き続けている男がいた。

そう、ミケランジェロ。

しかしいまさらですが、すごい時代ですね!
(1510年といえば、ボッティチェリが亡くなった年でもあります。)

ある晩、ミケが家族に会いにフィレンツェに帰郷しているすきに、
建築家で大聖堂の設計もしていたブラマンクが
教皇すらなかなか入れてもらえない礼拝堂にラファエロを連れて行った。

ラファエロは天井を見上げて衝撃を受けた。打ちのめされた。

そこで彼は決めた。
今描いている「アテネの学堂」に天才ミケを描き入れよう!
ヘラクレイトスがいいだろう!
あのすばらしい天井画に描かれていた、
預言者エレミアのポーズをとらせるのはどうだ?



いやいやまてよ。
最近見たデューラーの「メランコリア」も素晴らしかった。
ただ考え込んでいるだけじゃなく、
ペンを持って何か書いているポーズがふさわしいんじゃないか?




と、先輩諸氏から学ぶことの大好きだったラファエロは考えた。
フィレンツェでの4年間、このローマにきてからも、
なにかとライバル視され続けてきたが、
偉大なる先輩に敬意をはらういい機会ではないか?

そうして加筆されたのが階段のヘラクレイトス=ミケ。
というのが、一般的な、誰もが納得できる解釈。



しかしいまから数十年前、それに異議を唱える学者が現れた。

プラトンが歩いてくるその前に邪魔するように位置する不自然さ。
着ているものも他の者たちと明らかに違う。
これは石工の服装だ。
なにより、その肉体表現。
腕とひざだけしか見えなくとも、
その肉体のたくましい表現は圧倒的。
などなど。

では、ラファエロが描いたのではないとしたら、
一体誰が描きたしたのか?

教皇のプライベイトな部屋に入れる画家はおのずと限られる。

え?ミケランジェロ本人?
しかし一体何のために?

どうですか、みなさんの想像力一気に広がっていきませんか?

ぼろぼろ剥がれ落ちる靴底のことも忘れて、
帰りの電車の中、今から500年前のローマに思いをはせる私でした。

ちゃんちゃん。















浮遊する天使

2012-10-17 | 美術
昨日の受胎告知については言葉足らずでごめんなさい。

ルネサンス期の勉強をしていると、
さまざまな画家の描き出す、
この劇的なドラマのとらえ方の多様さ、
面白さ、不思議さ、美しさに心奪われる。

ルネサンスは受胎告知というテーマを
さらに自由に開放した時期といってもいいのではないか。

そんな時代のど真ん中にあったにしては、
ラファエロの受胎告知はどうなんだろう?
と思っただけ。

たとえば、
私が好きな受胎告知といえば、
まずはフランドル派から。

1.Melchio Broederlam 1399


2.Robert Campin1425


3.Jan van Eych 1432




4.
Hans Memling 1467


5.Hans Memling 1482

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6.Jean Hey 1500


7.Gerard David 1520


圧巻ですね!

ダ・ヴィンチ、フラ・アンジェリコはちょとあとにして、

数枚あるボティチェリの受胎告知、







上の絵は有名ですね!美しい!!

でも一番のお気に入りはこれです。


浮遊する大天使。
いままさに足がつこうとしているのか?
言葉の発せられる寸前の緊張感がいい。





こんな大天使ばかり見てると、




ほぉ~っと驚きます。