俺は、眼を凝らして見た。
“ キツネだ。”
キツネは、由紀ちゃんの靴を咥えて靴箱の一段目に移動させた。
「 あれっ、靴、下の段にあるわ。
こんな所に入れた覚えが無いのに・・・・・。」
由紀ちゃんは屈みこんで、一番下の段にある靴を靴箱から出そうと手を伸ばした。
その寸前にキツネは、由紀ちゃんの靴を再度咥えて、靴箱の裏側に走って行った。
「 あれっ。
また、靴が消えた。
おかしいわ。
今、あったのに・・・・・。」
俺は、気が付いた。
“ 由紀ちゃんは、あのキツネが見えないんだ。”
由紀ちゃんは、靴箱の前を行ったり来たりしていた。
俺は、靴箱の裏にまわった。
キツネは、靴箱の隅っこの一番下に靴を入れていた。
俺は、キツネと眼が合った。
綺麗な金色の毛をした鼻筋の通ったイタズラ好きそうな子狐だった。
キツネは、キョトンと俺を見た。
俺は、キツネを追い払おうとした。
「 シッ!」
キツネは、“えっ、見えるのか”と言う顔をして俺を見た。
そして、キツネは、生意気そうに“へへん!”と笑って、玄関の扉をすり抜け校舎の外に走った。
そのキツネの姿が、走っている途中で輪郭が薄くなったと思ったら、ゆらゆらと揺らめきながら消えて行った。
“ あれっ、ひょっとして、こいつがゆらゆらしたヤツかな・・・?”
俺は、一瞬そう思ったが、それより由紀ちゃんだ。
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