日々の恐怖 6月26日 誘引のお話 (4)
意外なことはまだあった。
それは、警察官が呟いた一言だった。
「 またか・・・。」
“ またか・・・?
何だ?
またかって!?”
警察官の不自然な言葉を疑問に思って、俺は聞いてみた。
「 またかって、どういうことですか?」
「 あまりこういうことは言わないほうがいいかも知れないけど、君も関係者だし、知っていてもいいかもしれないし・・・・・。」
そう言いながら、警察官は話してくれた。
“ 友人のような変死が初めてではないこと。
同じ事が同じマンションの同じ部屋で何度か起こっていること。
原因が警察でも判らないこと。”
結局、友人の死はノイローゼによる突発的な自殺ということになった。
悲しみというより、驚きだった。
色々なことが、何がなんだか解らないまま終わっていった。
俺は、友人が何を聞いて、何に恐怖していたのか分からなかった。
すべて終わったと思ったとき、電話があった。
死んだ友人の母親からだった。
「 夜分恐れ入ります。
先日は、大変ご迷惑をおかけしました。」
俺は、
「 あ、いえ、こちらこそ・・・・。」
と、何を言おうかと言葉を探っていると、母親が言った。
「 あのぅ・・・、変なことを聞くかもしれませんが・・・。
家の息子は、確かに死にましたよね・・・?」
「 え・・・・?」
俺が、
“ 何を言ってるんだろう?
お通夜も告別式もやったじゃないか。
まさか、息子を亡くしたショックでおかしくなってなってしまったのか・・・?”
と思ってると、母親が続けて言った。
「 実は・・・、今、誰かが扉を叩いてるんです・・・。」
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ