日々の恐怖 6月23日 誘引のお話 (3)
でも、もう友人はこっちの話を聞こうともしない。
「 止まった!!今、扉の前にいる!!!」
俺が、
「 じゃぁ、開けて見てこようか?」
っていうと、激しく止めてきた。
「 止めてくれ!開けないでくれ!!
いるんだ、そこにいるんだ!!」
「 大丈夫だろ!何も無いじゃないか!」
こっちも語気を荒くしてなだめようとする。
すると、急におとなしくなったかと思うと、友人はこう言った。
「 ・・・ダメだ、ずっとこっちを見てる。
もう、逃げられないよ。」
「 おい、何言ってるんだ!?
何も無いだろう!?
大丈夫だろ!?」
友人の一言が、異常なほど恐怖心を駆り立てた。
友人は、
「 ああ・・・、叩いてる!
扉を叩いてるよ!!」
って言ったかと思うと、
「 うわあああああああ・・・・・・・!」
と叫びながら、扉に向かって走っていった。
あまりの突然のことに、俺は体が動かなかった。
友人は叫びながら、扉を開けて外へ出て行った。
俺も慌てて追いかけたが、間に合わなかった。
友人は踊り場から身を投げた。
訳が解らなかった、何が起きたのか。
記憶に残ってるのは、その後の警察の取り調べからだった。
何が起きたのか、どういう状況だったのか、自分の覚えてることを全て話した。
意外なことに、警察はあっさりしていた。
もっと疑われると思った。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ