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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 9月22日 木瘤

2014-09-22 14:43:15 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 9月22日 木瘤



 母が里帰りした時に、実家から木でできた置物をもらって帰ってきた。
母方の祖母はすでに他界しており、祖父は痴呆が始まっていた。
 置物は握り拳くらいの大きさのもので、何かを形取った彫り物ではなく、自然にできた木の瘤を切り取って磨いただけのもののように見えた。
欅っぽかった。
凹凸の加減と木肌の濃淡から、見ようによっては崩れた人の顔に見えないこともなかった。
 変だったのは、田舎の誰もその置物が誰のものか知らなかったことだ。
誰がどこで買ったのか、あるいは戴いたのか、伯母達も従兄夫婦も誰も知らなかった。

「 誰のか分からないし、持って帰っていいよ。」

と言われて母はもらって帰って来たのだが、物に執着のない祖父が珍しく、

「 それはだめだ、置いて行け。」

と繰り返したらしい。
だが周囲は痴呆の症状だろうと思って、適当になだめて母にそれを持たした。
 帰ってから、毎晩母の夢枕に祖母が立つようになった。
祖母はとても温厚な人で、子供である伯父伯母、母の誰も叱られたという記憶がない。
叱られないのだが、“こんなことをしたら母さんが悲しむだろうな”と言う気持ちが沸いて来て、自然と悪いことから遠ざかるようになったそうだ。
だが、夢枕の祖母は般若のような恐ろしい形相で母を睨み付け、見下ろしていたそうだ。
 祖父がその置物に執着していたことを思い出し、さすがに気持ち悪くなった母は、伯母に電話して、それを宅急便で実家に返した。
その日から祖母が母の夢枕に立つことはなくなった。


 気味悪がるといけないと思って母には話さなかったが、母が実家から戻ってから、私は毎晩金縛りに遭っていた。
 当時、私は部屋を借りて一人暮らししていた。
日中の仕事は極度の緊張状態が続き、夜になると体はヘトヘトだが、脳が興奮していてなかなか寝付けない。
 やっと、うとうとし始めたと思ったら、不意に全身総毛立ち、血流のゴーッという音がし始め、体が動かなくなる。
複数の子供がスリッパをはいて布団の周りを走り回るような音がし、

「 ○○ちゃん?○○ちゃん?」

と私を呼ぶ小さな子の声が聞こえる。
 布団の両端を何かが異常な力で引っ張って、体が掛け布団と敷布団に挟まれて苦しくなる。
そのうちに胸の上に何か(イメージとしては大型犬くらいの大きさのもの)がドスッと落ちて来る。
 記憶はいつもそこで途切れ、気が付くと朝になっていた。
同僚に話したら、疲労が原因だろうと言われ、自分もそうだと思っていた。
それがある日パタリと止んだ。
 次の日、母から電話があり、置物の話を聞かされた。
関連あるかどうかまったく分からないが、時期を同じくして起きたことだった。










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