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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 9月8日 最後の一言

2014-09-08 18:13:28 | B,日々の恐怖



     日々の恐怖 9月8日 最後の一言



 実体験話を一つします。
数年前大学卒業して某証券会社に就職しまして、福岡に赴任していた時の話です。
ちなみに女です。
まだ何とか20代です。
 会社の借り上げのマンションが市の中心部にあって、そこを寮扱いで借りて、毎日会社までは歩いて通勤していました。
 殆ど新築に近い13階建ての10階に住んでいました。
仕事は毎日忙しく、帰宅は夜の8~9時頃になってました。
各フロアに8部屋あって、私が住んでいたのはその10階の108号です。
一番奥の部屋で、エレベーターを降りたら、薄暗い照明を頼りに暗い渡り廊下を渡って帰る毎日でした。
 福岡の地元の方と言うのは、なかなか地元意識が強く結束も固く、言い換えればよそ者には馴染みにくい土地だったように思います。
だから私も友達は、福岡の方よりも同じ東京からや、別の地方から来てる友達が多かったことを覚えてます。

 ある日、同郷である東京出身の友達から、矢張り東京から転勤で来ている友達Aさんを紹介されました。
彼女は当時32歳だったでしょうか。
某有名化粧品店の新規店舗立上げの責任者として短期赴任されていた、儚い感じのロングヘアーで長身の美人でした。
私は彼女に気に入って貰えたのか、私たち酒豪の2人でよく飲み歩いていました。
 そんなAさんとの飲み会で帰りが遅くなったある日、彼女と別れマンションへ帰りました。
夜の12時頃エレベーターで10階につくと、薄暗い通路の先、丁度真ん中の104号室のドアの前で、ドアを背にし手すりに肘を付いてタバコを吸ってる中年男性がいらっしゃいました。
ほろ酔いの私は怪しむこともせず、

「 こんばんわ~。」

と言って会釈しました。
 ベランダには洗濯物を干す方も多いため、通路でタバコを吸う人は珍しくなく、その方もそんな一人だと思ったからでしょう。
いきなり酔っ払い娘に挨拶された男性は面食らったようで、それでも薄くなってそうな頭を丁寧に下げ、

「 こんばんは。」

と挨拶を返されました。

 その日からその男性を何度も見るようになりました。
と言っても、矢張り夜間に通路でタバコを吸っている男性と挨拶をするだけの仲でした。
次第に打ち解け、

「 こんばんわ~。」

と挨拶すると、

「 こんばんは、今日も遅かったね。」

などと言い合う、軽い交流が始まりました。
他所のもであり、多忙で家に居ないことも多いせいか、近所付合いも殆どない私は、挨拶出来るご近所さんが出来たことを、少なからず喜んだことを覚えています。

 それから暫くして、矢張りAさんと飲みに行ったとある土曜日です。
Aさんが家に遊びに来ることになりました。

「 Nちゃん(私です)ちって近いのね。
私これからちょくちょく遊びに来るわ、酒持って。」

なんて話しながらエレベーターを降りると、矢張りいつもの男性がタバコを吸ってました。
 酔っ払っていた私は、いつもの調子で、

「 こんばんわ~、吸いすぎは体に毒ですよ~。」

と挨拶しました。
男性も、

「 何いいようとって、飲みすぎだってよくないよ。」

なんて軽口を言い合い部屋へ戻りました。
その間Aさんは終始無言でした。
 部屋へ入るとAさんは、

「 Nちゃん、1週間くらい家を空ける準備出来る?
今すぐ、私ん家に少しの間、引越ししよう!」

と言い出しました。
 理由を聞いても教えてくれませんし、突然の理不尽な要求に???状態の私でしたが、彼女の気迫に根負けし、1週間分の下着と化粧品、その他身の回りの物とスーツ2着とパソコンをつかんでバッグに詰め込み、Aさんのお宅へやっかいになることにしました。
 バッグはAさんの持ち物であるかのようにAさんが持ち、私はちょっとタクシー捕まるまで送るよ的な体で彼女の後に続きました。
ドアを開けると男性はおらず、Aさんと二人でタクシーに乗り込みAさん家へ向かいました。

 翌日曜日の昼に追加で仕事着を取りに戻り、それからAさんの家で共同生活が始まりました。
それから暫くAさん家の広い1LDKへ行き帰りしていました。
 そしてその週の水曜日に会社へ行くと、課長が青い顔で、

「 N君、君大丈夫だったか!
今、不動産屋から連絡があったんだけど・・・!!」

と、凄い剣幕で詰め寄られました。
鷲づかみにされていた新聞を見せられると、私のマンションで起こったストーカー殺人がトップ記事になっていました。
 後から聞いた事も含めますと、とある離婚された夫婦がおりまして、分かれた旦那が捨てた奥さんをストーキングしていたと言うことです。
そして水商売の元奥さんを毎晩待ちわびて、とある日に遭遇しました。
口論の末に、持っていた包丁で数十箇所メッタ刺しにして殺したのだと言われました。
新聞に犯人として乗っていた顔写真は、私が毎日暗い通路で挨拶するあの男性のものでした。
 その男性は毎晩奥さんを待っていたそうです。
最終的には殺す目的で包丁まで準備して待っていました。
 私はそんな男性に近所のよしみを抱き、毎晩のように挨拶していたことに気付きました。
私はそこで腰が抜け、へたり込んでAさんに電話しました。
Aさんは電話越しに優しい口調で、

「 もう大丈夫だから、これで大丈夫だから。」

と言いました。
 男性は元奥さんをメッタ刺しにした後、通報を受けて追ってきた警官隊を前に、私の家の108号室の前まで逃げ、私の部屋のドアをガチャガチャやっていたそうです。
 その日のうちに総務のケチ親父に掛け合い、マンションを変えてもらうように頼みました。
私は警察での事情聴取を受け、Aさんの家に帰宅しました。
 Aさんと缶ビールを傾けながら、いろいろな話を聞きました。
Aさんが言うには、直感に近い感じで人の運命や未来がたまに見えたりするそうです。
そしてAさんは無事新規店舗も軌道にのり、Aさんの帰京が決まったことも聞きました。

“ え~ん、寂し~な~。”

ってなってるとAさん、私の肩を抱き寄せ口付けしました。
そして、

「 忘れられなくなりそうだから、プラトニックのままの方がいいよね。」

と一言言いました。
そう、Aさんはレズだったのです。

“ そんなAさんが1週間も私を凄い勢いで説得して監禁して、ナニするつもりだったの!”

と考えると、今でも怖いお話でした。










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