他の患者さんが扉から入って来かけて立ち止まり、変な顔を一瞬した後、クルッと向きを変えて出て行った。
「 おまえなァ~、変なことをさせるなよなァ~。
人格、疑われるやろ~。」
「 勝手に踊ったのは、おまえだろ。」
「 そら、まあな・・・・。
それでやな・・・・。」
龍平は右手を上下に振って俺を呼んだ。
で、俺は顔を近付ける。
「 ふんふん!」
「 エレベーターで5階に上がってやな、屋上への階段をそ~っと登って行っ
たんや。」
「 それで、それで・・。」
「 階段の上にはな、小さな踊り場と屋上に出る扉があるねん。
でもな、扉を、そ~っと押して見たんやが、開かへんねん。
扉にはガラス窓があるんやけど、曇りガラスで向こうが見えへん。
下手に扉をガタガタ言わせたらマズイかなっとも思ったし・・・。
それで、ど~しょうかなァ~と思って扉を見たら、扉に嵌めてあるガラス窓
の左端の角っこが、これぐらい欠けていて穴があるねん。」
龍平は右手の人差し指と親指で小さな丸を顔の前に作った。
「 それで、ここから外を見たんや。」
そして、龍平はその穴から俺を覗いた。
「 それで、それで・・・。」
俺は、丸から見える龍平の目玉を覗き返した。
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