日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

大阪無償化裁判勝訴、判決のポイントは

2017-07-31 10:00:00 | (相)のブログ
 

 既報のように、さる7月28日、大阪地方裁判所で、大阪朝鮮高級学校への「高校授業料無償化法」(以下、無償化法)の適用などを求める裁判の判決公判があり、原告・大阪朝鮮学園側の全面勝訴の判決が下された。
 すでに当日28日夕方に更新した本ブログのエントリで、勝訴判決の初歩的な事実関係について報じているが、それに続く今回は、原告側弁護団の報告などに基づいて、判決の内容について見ていきたい。

 

 この裁判で原告・朝鮮学園側は、大きく、①国が朝鮮学校を「無償化法」施行規則第1条第1項第2号ハ(規定ハ)に基づく指定をしなかった処分を取り消すこと(取り消し訴訟)、②国が大阪朝高を無償化法の対象に指定すること(義務付け訴訟)の2点を請求していた。結果は、ご存知のとおり原告の請求が①、②ともに認められた。

 争点①:規定ハ削除の違法性
 規定ハとは、いわゆる「外国人学校」のうち、どのような学校が「無償化法」の対象となるのかを定めた規定を指す。詳細な説明は割愛するが、朝鮮学校は(イ)(ロ)(ハ)のうち(ハ)に該当するかどうかを文科省が審査して結論を出すことになっていた。結果的に国側は、朝鮮学校側による申請→文科省による審査まで進んだ段階で、「後出しジャンケン」のように、朝鮮学校を無償化の対象に指定する根拠となる規定ハを削除して不指定にしたわけだが、裁判ではこの規定ハ削除が違法かどうかが争われたのだ。
 判決は、どのような学校が無償化法に適するのかは教育上の観点から専門的、技術的検討が必要で、これを定めるうえで文部科学大臣に一定の裁量権はある、しかしそれはあくまで「法の委任の範囲を逸脱しない範囲」で許容されるとした。ここでいう「委任の範囲」とは、無償化法の趣旨である「後期中等教育の機会均等」を指す。では、ハの削除は果たして「教育の機会均等」という法の趣旨から逸脱するものなのか否か―。
 判決は、▼民主党政権時代、後の文部科学大臣である自民党の下村博文議員の、「拉致問題解決のために北朝鮮に経済制裁を課している中で朝鮮学校無償化は誤ったメッセージを送ることになる」という発言、▼下村文科大臣就任後、拉致問題で進展がないこと、朝鮮学校と朝鮮総聯との密接な関係などを理由に規定ハを削除したこと、▼外交上の配慮によって判断しないという民主党政権時代の統一見解を廃止したことなどを挙げ、
 国が教育の機会均等の確保とは無関係の外交的・政治的判断で朝鮮高校を支給法の対象から除外するために規定ハを削除したと認定し、これは委任の趣旨を逸脱しているので違法・無効だと結論づけた。

 争点②朝鮮学校の規程13条適合性
 「後出しジャンケン」のように規定ハを削除して不指定にしたことが裁判で不利になると思ったのか、国側が不指定の理由として持ち出したのが、朝鮮高校が「規程13条に適合すると認めるに至らなかった」というものだ。
 規程13条では、就学支援金を生徒の授業料に確実に充てることなど法令に基づく適正な学校運営が行われることを定めており、国側は、朝鮮高級学校がこの13条に適合すると認められなかったので不指定処分を下したと主張している。
 今回の判決は、この規程自体は法の委任の趣旨を逸脱するものではなく、上記の「法令」には「不当な支配」からの脱却を定めた教育基本法第16条1項も含まれるとした(これは被告側の主張を採用したもので、原告側としては法令に「不当な支配」を含めることこそ不当であると主張していた)。となると、大阪朝高がこの規程13条に適合するかどうかがポイントになる。裁判所は、大阪朝鮮学園は①私立学校法に基づき、財政目録や財務諸表が作成されている、②理事会も開催されている、②大阪府の随時立ち入り検査の際に法令違反を理由とする行政処分を受けていない、という3点をもって13条適合性の立証はとりあえずなされているので、ほかに「規程13条適合性に疑念を生じさせる特段の事情がない限り、13条適合性が認められる」とした。
 では、特段の事情があったのかどうか。国側は産経新聞の報道や公安調査庁の資料などをもとに、特段の事情として朝鮮学校と朝鮮総聯との関係や理事会の議事録が偽造されているなどを持ち出したが、判決は、「在日朝鮮人の民族教育を行う朝鮮高級学校に在日朝鮮人の団体である朝鮮総聯などが一定を援助をすること自体が不自然であるということはできない」などとし、国側が持ち出したさまざまな事例を「事実として確認されていない」「裏づけがない」などと退けた。「特段の事情」に関する立証が被告側からなされていないので、特段の事情があるということはできない→朝鮮高級学校は規程13条をみたす→文科大臣の判断は裁量権の逸脱・濫用であり、不指定処分は取り消しを免れない、と認定。さらに進んで、朝鮮高級学校は無償化法の対象に指定されるべきという義務付けの請求も認めた。

 判決は次のように指摘している。無償化法は単なる恩恵ではなく、私立高等学校の生徒たちの受給権として規定している。「不当な支配」の判断が大臣の裁量にゆだねられるべきものとすることは、教育に対する行政権力の過度の介入を容認することになりかねない。「不当な支配」のあるなしの判断については、大臣の裁量権が認められると解することはできない。
 弁護団はこの部分を画期的な判断と評価している。
 丹羽雅雄弁護団長が報告集会で語ったように、今回の判決では子どもたちの教育を受ける権利、国際人権法に認められた母語で普通教育を受け、アイデンティティを育む権利を差別なく平等に保障すべきという原告側の主張は判決文には反映されなかった。しかし、戦後の在日朝鮮人の民族教育の歴史的経緯が認定されている。弁護団が判決で画期的だと評価するもう一つは以下の部分だ。

 朝鮮総連は第2次世界大戦後のわが国における在日朝鮮人の自主的民族教育がさまざまな困難に遭遇する中、在日朝鮮人の民族教育の実施を目的のひとつとして結成され、朝鮮学校の建設や認可手続きなどを進めてきた。朝鮮学校は総連の協力の下、自主的民族的教育施設として発展してきたということができるのであって、このような歴史的事情等に照らせば、朝鮮総連が朝鮮学校の教育活動または学校運営に何らかの関わりを有するとしても、両者の関係がわが国における在日朝鮮人の民族教育の維持、発展を目的とした協力関係にあるという可能性は否定できない。両者の関係が適正を欠くものとただちに推認することはできない。
 朝鮮高級学校は、在日朝鮮人子女に対し朝鮮人としての民族教育を行うことを目的の一つとする学校法人であるところ、母国語と母国の歴史および文化についての教育は民族教育にとって重要な意義を有し、民族的自覚および民族的自尊心を醸成するうえで基本的な教育というべきである。そうすると、朝鮮高級学校が朝鮮語による授業を行い、北朝鮮の視座から歴史的・社会的・地理的事象を教えるとともに北朝鮮の国家理念を肯定的に評価することも、朝鮮高級学校の上記教育目的それ自体には沿うものということができ、朝鮮総連からの不当な支配により自主性を失い、このような教育を余儀なくされているとはただちに認めがたい。

 当たり前のことが当たり前に認められた結果。まっとうに法律を解釈すれば当然、今回のような判決になる。しかし、その当たり前が当たり前にならないのが今の日本の状況だ。覚悟を決めたような判決文を書いた裁判官には敬意を表したい。
 今回の起死回生ともいえる判決を下したのは裁判官だが、その裁判官の心を動かし、判決に魂を吹き込んだのは当事者、支援者、弁護団の不撓不屈のたたかいだった。(相)

大阪無償化裁判、原告・大阪朝鮮学園側の全面勝訴判決!

2017-07-28 17:34:36 | (相)のブログ
 

 大阪朝鮮高級学校(以下、大阪朝高)を高校授業料無償化制度の対象としないのは違法だとして、大阪朝鮮学園が国を相手に不指定処分の取り消しおよび無償化の義務づけを求めた訴訟(以下、大阪無償化裁判)の判決が本日7月28日、大阪地方裁判所で言い渡された。
 大阪地裁は、高校無償化制度の適用対象から朝鮮高級学校を外した国の対応は「無償化法の趣旨を逸脱しており、違法、無効だ」とし、原告側の請求を全面的に認め、国の処分を取り消し、無償化の対象とするよう命じる判決を下した。
 判決は、下村博文文部科学大臣(当時)が、拉致問題など教育の機会均等とは無関係な外交的、政治的意見に基づいて朝鮮学校を無償化法の対象から排除したのは裁量権の逸脱、濫用であり違法、無効であると指摘。被告・国側が主張する、「朝鮮学校が適正な学校運営がされている確証が得られない」という規程13条適合性の争点については、学校は07年から11年まで教育基本法上の行政処分を受けたことはなく、規程に適合していると認めた。また、一部報道などを理由にした「学校が朝鮮総聯に不当な支配を受けている」という国側の主張についても、総聯の関与は「歴史的事情に照らせば適正を欠くものではない」などとして退けた。
 端的に言って、原告・朝鮮学園側の主張が全面的に認められた判決だった。
 「指定をしない旨の処分を取り消す」。裁判長が主文を読み上げると、まず原告側の弁護団の席から、ややあって傍聴席から「よしっ!」の声が上がった。主文の読み上げが終わり、裁判官が退廷すると、傍聴席から歓声が上がり、朝鮮学校児童・生徒たちの保護者、学校関係者、支援者たちが涙を流しながら抱き合って喜びを分かち合った。裁判所の外でも歓喜の輪が広がった。
 原告側の全面敗訴となった今月19日の広島地裁の判決とは対照的な判断が下された今回の大阪地裁判決。さる1月には、同じ大阪地裁で補助金裁判の原告全面敗訴の判決が下されていたこともあり、今日の勝訴判決に原告側は大きく沸いた。具体的な判決内容の検討は日を改めて行いたいが、司法の画期的な判断が下されたということは指摘しておきたい。
 「私たちの主張がやっと認められた。この、まっとうな、当たり前の判断が示されるのにどれだけ長い時間がかかったことか」。この日、地裁に駆けつけた人々からはこのような感想が多く聞かれた。(相)

Uri-AD(ウリアド)/ウリ広告機構

2017-07-28 10:00:00 | (瑛)のブログ


 今日7月28日11時に大阪無償化裁判の判決が下される。

 提訴の4年前を考えたとき、朝鮮学校関係者のなかで、裁判をしたい人などいなかった―と思う。

 民族教育の権利をめぐっては、2007年に実質的勝訴を勝ちとった「枝川裁判」が記憶に新しい。振り返ると、戦後補償裁判はことごとく原告の敗訴に終わっている。つまり、日本政府による不正義を徹底的に擁護してきたのが、旧植民地出身者をめぐる日本の司法の歴史だ。関係者が裁判に慎重になった理由も、ここにある。文科省への数百回にわたる要請は受け入れらず、生徒や保護者たちは裁判という手段を取らざるを得なくなった。裁判に追い込まれたのだ。
 
 提訴の日。生徒や保護者たちは、覚悟に満ち溢れていたものの、抱えきれないほどの不安を抱えていた。

 この「不安の正体」は、生まれてこのかた、裁判を経験したことがない、ということだけではなく、無償化から朝鮮高校を徹底的にはずす日本政府、それを黙認する日本社会が変わらないことへの不安だったと思う。
 
 高校無償化法は、「すべての子どもに学びを」という趣旨から立ちあがった制度で、外国人学校も対象になると法律で決められている。そのルールに沿って支給すればいい。

 国はそのルールを破り、さらに朝鮮学校外しを正当化するために、メディアを総動員し、無償化が認められないのは、あたかも朝鮮高校側に責任がある、という偏見をまき散らし、自らの差別を正当化した。

 裁判に関わるすべての人たちは、「学ぶ権利は誰にでもある」ということを、増殖していく朝鮮学校への偏見の中で、どのように伝えていくのかという「厳しい課題」に向き合っている。

 この課題に果敢に挑み続けているのが、本誌の表紙を担当しているホ・サンホさんと、李英哲さんが立ち上げた「Uri-AD(ウリアド) ウリ広告機構」だ。

 ウリアドは、冒頭のポスターをはじめ、朝鮮大学生や朝鮮高校生が毎週文科省前で行っている「金曜行動」のテーマソングをモチーフにした広告をはじめ、広島地裁で敗訴の判決が下った後も精力的に作品を作り、SNS上で発信を続けている。




 
 ウリアド
 https://www.facebook.com/Uriad.Urikohkokukikoh/

 広告の持つ強い伝達力・説得力を活かし、 在日朝鮮人同胞の生活を支援するために設立した民間の非営利団体「Uri-AD(ウリアド)/ウリ広告機構」。

 ウリアドは、在日同胞社会が求めるメッセージを“広告advertising”という形で発信し、私たちを取り巻く諸問題の解決に役立てるような広告コミュニケーションを目指している。

 ウリアドへの「いいね!」&シェアをお願いいたします!

 勝訴のその日のために! 無償化差別解消のために!(瑛)

無償化裁判判決、朝鮮人を抹殺しようとするもの

2017-07-27 09:48:43 | (K)のブログ
 既報の通り、19日の広島での無償化裁判は、原告側の全面敗訴という判決が出た。
 判決内容は、日本政府の主張をそのままなぞっただけのものである。判決の内容をまとめると、「朝鮮学校は北朝鮮や総聯の政治的な影響下にあり不当な支配を受けている、お金が生徒たちのために使われるかどうか疑わしいから適用できない」ということになる。子どもたちの民族教育を受ける権利も一般的な学習権や教育権に関する内容もなかった。

 判決内容を見たときに思い返したのは、6月21日の石川県の谷本正憲知事の暴言だ。「兵糧攻めにして北朝鮮の国民を餓死させなければならない」と言い放った。その後、知事は発言を「撤回」しているが、朝鮮への制裁について、「実効性のあるものにしなければならない」「北朝鮮の国民に影響が及ぶ可能性があるが、内部から体制が崩壊していくような状況をつくることが必要だ」と発言している。

 広島での判決と、この石川県知事の暴言は、根っ子を同じくするものだ。「北朝鮮とそれに繋がる者は滅亡すればよい」「朝鮮学校の子どもたちは、民族教育を受けなくてもよい」ということを言っている。
 高校無償化からの排除は、明らかな差別だけれど、「差別だから悪い」という単純な問題ではない。在日朝鮮人の生存を左右するものであり、日本という国の根本をあぶりだしているものだ。

 日本は過去、朝鮮を植民地支配した。その時、資源や財産を奪い、言葉を奪い、名前を奪うなど、朝鮮民族を抹殺しようとした。関東大震災では多くの朝鮮人が虐殺された。日本が敗戦し朝鮮が解放された後も、日本は在日朝鮮人を弾圧し民族教育を潰して、朝鮮人を抹殺しようとしてきた。それが今も続き、今回の広島の判決となっている。そういう意味で日本は、敗戦前も後も、本質的に変わっていない。

 韓国で朝鮮学校支援の活動をしているモンダンヨンピルの権海孝代表が時事ジャーナルのインタビューに答えている(2017.7.22)。それを日本語に翻訳したものがこちら。権海孝「私たちの民族を教える朝鮮学校、日本の右翼には目に刺さったトゲのような存在」(https://blogs.yahoo.co.jp/remember_0416/14916770.html)。
 インタビューのなかで権海孝代表は、朝鮮学校と広島での判決について、次のように語っている。

 「日本の右翼政治勢力にとって朝鮮学校は、日本の恥ずべき戦争犯罪の歴史を毎日のように確認させる存在だ。朝鮮学校が「慰安婦」、独島、日帝強占期について、それも母国語で教えているからだ。また、朝鮮学校は、在日同胞が教育を通じて結集する窓口の役割をしている。目に刺さったトゲのようではないか。こんな朝鮮学校が生存するように支援したくないのだ。」
 「現在の日本社会の方向性について知ることができる判決だと思う。日本社会が、自分たちの歴史的過ちが作り出したマイノリティにどのように対応ているのかが把握できる。日本社会が今回の訴訟の結果について恥ずかしいと思ってほしい。」

 明日28日11時から大阪で高校無償化裁判の判決が言い渡される。どのような判決が出ても闘いは続く。負けるわけにはいかない。(k)

障がい者アーティストたちによる公演【平壌発7】

2017-07-26 15:00:00 | (理)のブログ

 朝鮮の障がい者アーティストたちによる公演を観覧してきました。会場は平壌の人民文化宮殿。国際的な会議や国内行事を行う権威ある建物で、中には大小500余にもおよぶ部屋があります。今公演には座席数3000の会議室が利用され、7月16日から21日まで5日間にわたって行われました(19日は休演)。

 障がい者アーティストたちは、朝鮮障がい者保護連盟という団体の傘下にある、朝鮮障がい者芸術協会に所属し活動しています。2015年には初めて海外公演(イギリス)を実現。今年、2年ぶり2回目となる海外公演を成功させました。去る6月にも、朝鮮国内で定められた「障がい者の日」に合わせて公演をあげました。
 今回の公演は、近年発展している障がい者アーティストたちによる取り組みを、より多くの一般市民に披露しようとの目的で開かれたもの。このような大きな規模で連日公演をするのは初めてだといいます。普段なかなか見ることのできない内容とあって、人民たちも開演前から興奮している様子が伺えました。


 舞台は、聴覚障がい者による「手話詩」で幕を開けました。舞台横のパネルに映された詩を、しなやかで力強い動きを加えながら手話で表現します。流れるような動作で、あっという間に引き込まれてしまいました。

 続いて、歌、詩の朗読、舞踊、手品、楽器など多彩な演目が並びました。




 「옹헤야(オンヘヤ)」「아리랑(アリラン)」「준마처녀(チュンマチョニョ=駿馬少女)」「가리라 백두산으로(カリラ ペットゥサヌロ=行こう、白頭山へ)」はじめ、舞台に上がった作品は人民たちに親しまれたものばかり。客席からはノリノリの手拍子が送られました。

 印象深かったのは民俗舞踊「시내가에서(シネッカエソ=川のほとりで)」。はじめは出演者たちが音楽と朝鮮舞踊独特のリズムに合わせて愉快に踊る姿にうっとりしていたのですが、舞台の端に立っている指揮者を見た瞬間ハッとしました。



 踊っていたのは聴覚障がい者でした。出演者たちは音楽ではなく、指揮者の手の動きに合わせて踊っていたのです。あまりにも正確で表現力豊かだったため、すっかり忘れていました。

 また、視覚障がい者の女性による独唱も心に残りました。広い舞台の真ん中でひとり、3000人以上の観客を前に歌うなんてただでさえ委縮してしまいそうなものなのに、周りが見えない状況はどれだけ不安だろうか、緊張が膨れ上がったりしないのだろうか…、そんなことを考えていたのですが、かのじょが歌った歌詞を聞いて、感動とともにこちらまで大きな安心感に包まれました。

―당이여 어머니시여 그품이 아니라면/그누가 나를 그처럼 그처럼 다정히 보살피랴―
―党よ 母なる党よ その懐でなければ/だれが私をこんなにも温かく労わってくれるだろう―



 「당이여 나의 어머니시여(党よ、私の母よ)」という歌。内容の10分の1も伝えられず申し訳ないですが、いちおう日本語にも訳してみました。
 ここでいう党は政党ではなく、祖国という意味合いが強いと思います。このような舞台で活躍できるよう背中を押してくれた祖国に対するありがたさ、その前で堂々と歌える喜びと誇り。不安や緊張よりも、そのような気持ちでいっぱいだという風に感じました。

 飽きさせない構成と完成度の高さで、約2時間の公演はあっという間に終了。フィナーレでは全出演者が登場し、「세상에 부럼없어라(セサンエ プロムオプソラ=この世に羨むものはない)」を歌と手話で合唱しました。客席から熱い歓声と拍手が送られ、出演者たちの表情はとても生き生きしていました。



 朝鮮の障がい者アーティストたちのことは朝鮮新報の記事で知って関心を持っていましたが、まさか実際に公演を見る機会が来るなんて考えもしませんでした。終演後には出演者と少し話すこともできて、とても感慨深かったです。(理)



感謝の手紙を読む姿

2017-07-26 10:00:00 | (麗)のブログ
先週、友人の結婚式に行ってきた。
久々に会う同級生たちはなんら変わりもなく、互いに近況報告をしあった。

新郎とは中学生の頃からの付き合いで部活も6年間一緒だったが、
緊張した面持ちでタキシード姿で出てきた彼を見て思わず笑みがこぼれた。
彼の人柄なのだろう、式は始終、笑いにあふれていた。

最後には新郎が手紙を読むという珍しい(?)パターンだったが、
とても熱く、家族の愛と感謝にあふれた手紙だった。

ともに汗と涙を流してきた青春時代、地元に帰って来る度に彼を含むバスケ仲間と朝まで飲んでは、早朝の道路で語り合った。
今はもうそんな体力はないが、いろんな思い出があったなと涙を流す姿を見て、懐かしく思えた。

人に愛され、人を愛する彼の人生を、少しだけ垣間見た日でもあった。(麗)

朝鮮代表、本選進出おめでとう!【平壌発6】

2017-07-25 15:00:00 | (理)のブログ

 平壌で7月19日から23日にかけて開催された「2018 AFC(アジアサッカー連盟)U-23選手権大会」予選。同大会に参加した朝鮮代表チームのメンバーとして朝鮮大学生2人が選出され、試合に大きく貢献しました。体育学部4年の金成純さん(右)と3年の韓勇太さん(左)です。※写真はすべて朝鮮新報社平壌支局



 今予選には40の国と地域のチームが参加し、10グループに分かれて試合が行われました。各グループで1位になった10チームに加えて2位の中から上位5チーム、そして主催国チーム(中国)の計16チームが本選に進出できます。朝鮮代表は香港、台湾、ラオスと同じ7グループで勝敗を争いました。
 場所は「5月1日競技場」。



 結果から伝えると、朝鮮チームはみごと予選を突破! 初日は香港と1-1で引き分け、2日目は台湾に7-1で圧勝、最終日はラオスに6-0で勝利し、来年1月に中国で行われる本選への出場権を手にしました。



※朝鮮新報の電子版にも詳報が掲載されています(朝鮮語のみ)。
19日・VS香港(http://chosonsinbo.com/2017/07/0020-7/
21日・VS台湾(http://chosonsinbo.com/2017/07/22suk-6/
23日・VSラオス(http://chosonsinbo.com/2017/07/0024-3/

 結果も嬉しいですが、特に感動したのは在日同胞選手たちの活躍です。

 予選2日目、台湾との試合・後半戦11分に他の選手との交代で初出場を果たした金成純選手は、グラウンドに降り立った瞬間から実力を発揮し10分も経たないうちに得点! 平壌市民からすれば、突然現れた顔なじみのない選手による快挙。観客席がワッ!と湧き上がりました。
 私が記者席でこれを観ていた時、隣にいた朝鮮の記者が「총련선수가 넣었다!(総聯選手が入れたぞ!※朝鮮では在日同胞選手のことを総聯選手と呼びます)」と私の肩を掴んで揺らしてきました。その手からかれの興奮が伝わってきて、嬉しさで胸が熱くなりました。
 金成純選手がゴールを入れた4分後に、韓勇太選手も他の選手と交代で出場。この日は試合前から大雨が降っており後半戦時は豪雨ともいえる状態だったのですが、環境の悪い中ボールに食らいついて見事1アシストを成功させました。
 その後もチームで重要な役割を果たす2人を見て、隣の記者は「벌써 두각을 나타냈구만(もう頭角を現したな)」と満足そうに呟いていました。金成純選手は何度かコーナーキックも任されていました。
 23日の対ラオス戦でも、後半の途中から2人が出場。在日同胞選手たちへの信頼感が伺えました。ゴールは決められませんでしたが、韓勇太選手がこの日もアシストを成功させました。



 朝鮮代表チームのチュ・ソンイル責任監督は、「김성순선수는 령리하고 재간이 있다. 한용태선수는 지탱력이 좋고 돌파력이 강하다 (金成純選手は頭が切れて才能がある。韓勇太選手は身体の軸が強く、相手を突破していく力がある)」と的確な評価をしていました。

 試合前の国歌斉唱の際、「愛国歌」の合唱が会場全体に鳴り響くのを聞いて大きな感動を受けたという2人。この期間に得たものは計り知れなかったようです。



 韓勇太選手は「初めて朝鮮代表として国際試合に参加してみて、技術的にまだまだ課題があると感じた。すべての面でもう1ランク、2ランク、3ランク向上させないといけない。朝鮮大学校でプレーするだけでは得ることのできない考え、経験をたくさんすることができた」と話していました。
 金成純選手は、「朝鮮代表として国際試合に参加するのは3度目だが、これまでは出場時間も短かったので、今回は試合に出られるよう積極的にアピールし、実際に結果も残せた。チームメイトや関係者だけでなく、人民たちも『頑張った!』と祝福してくれたことがとても嬉しかった」としながら、「フィジカルをもっと鍛えるのが課題。チームメイトたちが『(本選のある)1月にまた帰ってこい』と言ってくれたので、フィジカルの強化をベースにしながら全体的な技術向上にも努めたい」と表情を引き締めていました。

 本選への期待が高まります!(理)

※おまけ:平壌ホテルでのオフショット。左から朝鮮大学校サッカー部の金鐘達コーチ、韓勇太選手、AFC U19女子代表チームの練習に参加するため朝鮮に滞在している李誠雅選手(大阪朝高3年)、金成純選手。



親子の時間vol.8「くるくる回る♪ 時計クッション」

2017-07-25 10:00:00 | (愛)のブログ
イオ8月号が先週18日に納品されました!
皆様のお手元にもそろそろ届いている頃だと思います。

今年度に入って新たに連載している「親子の時間」。
イオ編集部では(S)さんは執筆を、私は撮影、デザインを担当していますが、毎回撮影が楽しみな連載でもあります。
第2期目はイオで長年イラストを描いてくださっている任ソンセンニムに担当していただきました。
第2期目に入った「親子の時間」も8月号で終了し、9月号からは第3期目に入り、また新たに「親子の時間」をプロデュースしてくれる方にバトンタッチとなります!

第2期目の4回目は「くるくる回る♪ 時計クッション」です!
こどもが成長するにつれて避けては通れない、時計の見方を勉強できる!!
知育玩具とインテリアがかわいく融合したものです!

こんな可愛くて、勉強もできる優れものを家で作れてしまうなんて驚きです!
詳しい作り方は、イオ8月号のp2~3をご覧ください。

今回は番外編として、コースターでも作れるミニ時計の紹介も掲載しております。
取材をした当日、任ソンセンニムが私たちにもお土産にと、途中まで制作したミニコースター時計を持ってきてくれました!

私にはなんと、
バルタン星人が真ん中についたコースター!
誌面では紹介できなかったのですが、こういったキャラクターのボタンをつけるのも
素敵ですね!
とっても可愛く、子どもも大喜びです。
実際こどもにお土産として渡したところ、なにこれ~?と興味深々、大喜びで、
一緒にシールなどを貼って完成したあとは、
いまは何時? これは何時? などもう何度も何度も聞いてくるほど、時計の見方を勉強しています。

大人と一緒に作ったあとは、大人とこどもで時計をお勉強♪
クッションとしても使える「くるくる回る♪ 時計クッション」、ぜひ作ってみてください!(愛)

美しい平壌の夜【平壌発5】

2017-07-24 10:00:00 | (理)のブログ

 《지새지 말아다오 평양의 밤아》(明けないで平壌の夜よ)という歌がある。

1절
 고요한 강물우에 불빛이 흐르네
 못잊을 추억을 안고 내 마음 설레네
 끝없이 걷고싶어라 내 사랑 평양의 밤아
 지새지 말아다오 아름다운 평양의 밤아
1番
 静かな川面に 街の光が流れる
 忘れられない思い出を抱いて 私の心は揺れる
 いつまでも歩いていたい 私の愛 平壌の夜よ
 どうか明けないで 美しい平壌の夜よ

 初めての祖国訪問時(高級部3年生)に、人民たちが披露してくれた公演で知った曲だ。もともとは女性がよく歌うのだろうか。たまに聞きたくなってYoutubeで検索してみると女性バージョンが出てくるが、私が観たのは男声重唱だった。生バンドの演奏、迫力ある歌声、観る人の心をつかむ絶妙な演出。とてもかっこよく、かつロマンを感じさせる演目だった。

 大人になって朝鮮に来ると、学生の頃より夜に外出できる機会が多くなる。職業柄というのもあるかもしれない。夜、取材を終えて車でホテルに向かう間、窓の外に見える平壌の街が好きだ。単純に建物の造形や街並みも美しいし、そこにライトが調和しているのがいい。ライトアップされた姿まで計算して作られているのだろうかというくらい、同じ道を通っても昼と夜でまったく印象が違う。また、そんな風景の中に人民たちの素朴な生活が溶け込んでいるのも素敵だ。

 6月末頃、夜に黎明通りを歩いた。4月に完成した黎明通りはまさにニュータウンという言葉がぴったりで、夜になると高層ビル群が現代的にライトアップされる。少しお酒を飲んだ帰り、爽やかな夜風にあたりながら散歩するのはとても気分がよく、まさに「끝없이 걷고싶은」―そんな気持ちだった。
 冒頭の歌が作られたのは1989年。日ごとに変化する朝鮮において平壌市内も当時の景色とは様変わりしただろうが、あたたかい光が灯る、愛する街の中をいつまでも歩いていたいという人々の思いは変わらないだろう。(理)

朝鮮のビールに酔いしれる【平壌発4】

2017-07-21 15:00:00 | (理)のブログ

 クムガンビール、キョンフンビール、リョンソンビール、ポンハクビール、平壌ビール…朝鮮にはさまざまな種類のビールがありますが、中でも代表的なのが大同江ビール。商品としては瓶が主流で、最近は缶でも登場したそう。生ビールもあります(ちなみに朝鮮では缶ビールのことを떼기식통맥주=テギシットンメッチュ、生ビールのことを가스맥주=ガスメッチュといいます)。

 大同江ビールは主な原材料として麦と米を使っており、その配合によって1~7番に分けられます。上の写真にあるように、パッケージには番号のラベルがふってあります。商店などでよく目にするのは2番のビール。舌触りは柔らかく、ほど良いのどごしで飲みやすいため女性にも人気の商品です。

 私はこれまで一切ビールがダメだったのですが(味が苦手なうえ、少し飲んだだけですぐに酔いが回る)このビールはなぜかすんなりと飲め、それを皮切りに日ごと信じられない成長率でビールに対する耐性がついていき、現在1リットルくらいはまあまあ普通にいけるクチになってしまいました。
 さらには人生初の「ぷはーっビールがうまい!」という感覚を知ってしまい、今ではビールを飲むのが楽しみですらあります。冒頭に挙げた銘柄も、キョンフンビール以外はすべて飲んでみました。この変化に、以前の私を知っている先輩も目を丸くしていました。

 そんな中、大同江ビールを生産している、その名も大同江ビール工場が「밀맥주(ミルメッチュ=小麦ビール/白ビール)」なる新商品を開発したというニュースが国内を騒がせています。
 すっかりビール党になったタイミングで飛び込んできた朗報。いつから一般公開されるか気になります。「取材」と称して一足先に味わうことができないかと、今日もグラスを傾けながらひそかに企てています。(理)

広島無償化裁判の地裁判決に接して

2017-07-21 10:00:00 | (相)のブログ
 広島朝鮮学園と卒業生ら110人が原告となり、国を相手取って就学支援金不支給決定に対する取り消しと適用の義務づけ、本来支払われていたはずの支援金の支払いなどを求めた裁判(以下、広島無償化裁判)の判決が一昨日の19日、広島地方裁判所で言い渡された。
 結果は、知ってのとおり、原告側の全面敗訴。
 地裁は、規程13条(適正な学校運営)を基準に朝鮮学園を不指定にすることは無償化法の委任の範囲内であり、平等権を定めた憲法14条に違反しない、広島朝鮮初中高級学校が規程13条に適合するものとは認めるに至らないとの文部科学大臣の判断に裁量の範囲の逸脱、濫用が認められるとはいえない、規程13条を理由とした不指定処分は違法ではないなどとして、原告側の主張を退けた。
 判決言い渡しを現地で取材した(S)さんのレポートが、すでに昨日のエントリでアップされている。
 http://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/7daaa6ca82d77a760798f256f8a728de
 また、さらに詳しい記事が「朝鮮新報」電子版に上がっている。
 http://chosonsinbo.com/jp/2017/07/20170720ryd/

 敗訴の報に接して、心の中で絶望に近い感情がうずまいている。この国の司法に過剰な期待は抱いていないつもりだったが、なぜ朝鮮学校が制度から排除されたのか、この間の経緯を知っている人間からすると、行政の無茶苦茶極まりないふるまいに対して、いくらなんでも司法はまっとうな判断を下すだろうという淡い期待は心のどこかにあった。
 地裁判決の論理の粗雑さは明らかだ。いわく、「北朝鮮や朝鮮総連の影響力が否定できず、適正な学校運営がされているか十分な確証が得られない」「学校は朝鮮総連の強力な指導の下にあり、就学支援金を支給したとしても授業料に充てられない懸念がある」。お金が本来の目的に使われなかったので指定を取り消すのならわかるが、そのおそれがあるのではなから制度の対象に指定しない、こんなバカな話があるだろうか(その「懸念」の根拠も充分なものとはいえない)。「全国の高校生の保護者の身元調査をして、ギャンブル依存症とかで借金がある親は『就学支援金を借金の返済に使う恐れがあるから給付しない』と言うのか? 制度の受益者は生徒だ。仮に過去の学校法人に問題があったとしても、それが今の生徒の権利を剥奪する理由にはならないはず」。SNSで接した投稿の一文だが、まさにその通りだろう。

 「朝鮮学校外し」ありき。朝鮮学校を制度から排除するという結論が先にあった。理由は後付け。いわゆる「後出しジャンケン」だ。そんな行政の横暴を今回、司法が追認した。「北朝鮮や朝鮮総聯とつながる学校だからダメ」というきわめて政治的かつ恣意的、差別的な判断に司法が「お墨付き」を与えたのだ。国側の主張をそのままなぞるだけの司法の存在意義とは一体何なのか。
 この問題は国連の人権機関や条約審査委員会でもたびたび取り上げられ、勧告も出されてきたが、「本件不指定処分に、その他の違法や憲法や条約に違反する点は認められない」ときたらもはや笑うしかない。

 『世界』8月号に『司法は「朝鮮学校いじめ」をただせるか』と題した田中宏・一橋大学名誉教授による論考が掲載されている。朝鮮学校をめぐるこれまでのさまざまな訴訟を振り返りながら、このたびの高校無償化訴訟で何が問われているのかがわかりやすく整理されている。一読を勧めたい。
 結びの一文を以下に引用する。「一方で、私人によるヘイトスピーチにさらされ、他方で、公的機関による高校無償化からの除外、補助金カットに直面している朝鮮学校の子供たちを前に、日本の司法はいかなるメッセージを送るのだろうか」。(相)

メイド・イン・ウォンサン【平壌発3】

2017-07-20 15:00:00 | (理)のブログ

 朝鮮でパンプスを一つ買いました。訪ねたのは「メボンサン元山製靴工場」。いま朝鮮では「メボンサン」の商標がついた靴が人気で、工場がある元山市(平壌市より約200km東に位置)で生産された製品が、平壌をはじめとする全国各地のデパートなどで売られています。

 メボンサン靴の人気の理由は、老若男女の多様なニーズに対応した形やデザイン。工場では月に2回、新しいデザイン案の発表会にて工場で働く全員がプレゼンを行うだけでなく、各販売店にノートを置き製品に対する反響や意見を集めるなどして、製品開発・生産に反映しているそうです。

 また、より幅広い要望に応えるため、オーダーメイド制度も導入。足の大きさだけでなく形まで正確に測定してくれる機械を使い、その人の足にピッタリの特注品を作ってくれます。上に載せた写真もオーダーメイドで注文したもの。



 このように正確に測定してくれます。

 素材が柔らかく、とても軽いので履き心地バツグン。しかも、原材料は100%国産というのがまた良い。
 出来たてほやほやの靴は合成革が固まるまで2ヵ月ほどかかるため、その間は丁寧に保管しておく必要があるとのこと。これを履いてお出かけするのが楽しみです。(理)

広島無償化裁判不当判決、司法が差別を容認

2017-07-20 12:07:23 | (S)のブログ

 広島朝鮮初中高級学校の生徒、卒業生110人と広島朝鮮学園が原告となり、朝鮮学校のみ高校無償化制度から除外する文部科学大臣の処分の違法性を訴えてきた広島無償化裁判の判決が7月19日、広島地裁で言い渡された。



 裁判所には傍聴券を求め234人が列をなし、60の傍聴席が報道陣、原告、支援者らで埋まった。広島だけでなく東京、愛知、大阪、山口、福岡、徳島など各地から朝鮮学校関係者や日本市民が駆けつけた。

 広島地裁の小池洋裁判長は法廷で判決要旨を読み上げ、就学支援金の支給(高校無償化の適用)を求める原告の訴えを却下し、その他の原告らの請求を棄却する不当判決を下した。
 判決文は被告である国の主張の丸写しだった上、同校と朝鮮総連との関係などをあげながら、「就学支援金を支給したとしても、授業料に係る債権に充当されないことが懸念され、本件規定13条が定める『債権の弁財への確実な充当』が適正に行われると認めるに至らないとの文部科学大臣の判断に、裁量の範囲の逸脱、濫用が認められるとはいえない」とした。
 一方、これまでの原告の主張はすべて無視。民族教育権はおろか、原告である生徒・卒業生110人や現在学校で学ぶ生徒たちの学習権については一言も触れられなかった。
 閉廷した途端、傍聴席からは「これは子どもに対する権利だ。学校に払うお金じゃない。高校無償化制度が誰のためにあるのか、しっかり勉強しろ!」と裁判長に対する怒りの声が上がった。
 あまりにもひどい判決内容に涙が止まらず、席から立ち上がれない保護者もいた。

 今回の不当判決を受け、弁護団、広島朝鮮学園、広島朝鮮初中高級学校オモニ会から声明が出された。
 弁護団は声明で、「恣意的な行政判決を正すべき司法が、無批判に行政の主張に追随したことは、民族差別を助長するものである。当弁護団は、このような不当な裁判所の判断を到底受け入れることはできない」と強く批判した。
 また、高校無償化法が全ての子どもたちに教育の機会均等を保障し、教育を受ける権利を真の意味で実現するために作られた法律だ。声明では「本来であれば、子どもたちに手を差し伸べるための法律が、かえって、罪なき子どもたちの心に傷を与えてしまうという逆転した事態を招いてしまった」「教育行政とは、全ての者にその能力に応じた教育を等しく行うことによって、全ての者が、明るく輝ける将来を作り出すための基礎力を養い、平和、かつ自由・平等で文化的な社会を作り出すための人材を育成することにある。多文化共生に逆行し、弱者を締め出す教育行政を行うことは、日本国憲法に反し、許されない」とし、朝鮮学園の子どもたちが笑顔を取り戻せるよう最後まで闘い抜くと決意をのべた。
 

 多くの報道陣が集まる中、弁護士会館で判決報告会、記者会見には学校関係者や支援者約300人が参加した。


 原告である朝鮮学園と卒業生らが、判決言い渡しを受けての思いなどを率直に語った。
 原告の一人である黄希奈さんは、「判決を言い渡されるまで、とても緊張していました。ですが、今日集まってくださった多く人たちの姿を見て、ひとりじゃないという思いになりました。また、法廷に入る前、同じ原告として闘っている110人の卒業生たち、全国の仲間たちの顔が浮かびました」と、涙を浮かべた。
 
 記者の質問に対し、弁護団からは控訴する意思が伝えられた。
 足立修一弁護団長は、高校無償化制度からの朝鮮学校除外は、地方自治体が補助金をカットする口実となっており、またヘイトスピーチを容認しないが朝鮮学校差別は堂々とやっていいんだと国が言っているのと同じだと指摘し、「これは差別の扇動。この判決はどこかの段階で是正されるべきだ」と述べた。




 同日に朝鮮学園で行われた報告集会には約360人が集まり、一橋大学の田中宏名誉教授や、各地の高校無償化裁判弁護団、韓国からの支援者などから連帯のあいさつが行われた。
 オモニ会、原告卒業生らもアピールをし、勝利するまで絶対に諦めないと決意を新たにした。(S)



国産お菓子ランキング【平壌発2】

2017-07-19 15:00:00 | (理)のブログ

 私が最近はまっているのは国産のお菓子。今回はこの期間に食べた中から、自分なりのベスト3を紹介します。

第3位「딸기맛 쵸콜레트」 製造元=경흥은하수식료공장(慶興銀河水食料工場)



 いちご味のチョコレート。全く色がついていないのに、きちんといちごの風味がします。味に独特なクセがなく口触りもなめらかで、日本で売られていても遜色がないレベル。この他に、普通のチョコレートとコーヒー味もあるそうなので今度見つけたら試してみようと思います。

第2位「에스키모」 製造元=려명식료가공공장(黎明食料加工工場)



 朝鮮では棒状アイスのことを一般的に「エスキモー」といいます。パッケージに描かれた商品イメージと実物が違う…というのは国産のお菓子によくあることなのですが、これはほぼそのままでした。



 しかし一口かじると突然ピンク色が表れてびっくり。いちごかな?と思ったら、特にそういう味はしませんでした。コーンはサクサクではなく、厚いクレープのような食感。一番下にクランチが詰まっているのが良かったです。

第1位「단졸임단빵」 製造元=금컵체육인종합식료공장(クムコプ体育人綜合食料工場)



 一口食べて「美味しい!」と喜びの声が出たお菓子。日本語に直訳すると「甘く煮詰めた甘いパン」でしょうか。どれだけ甘ったるいんだという感じですが、実際はほのかに甘い程度です。中村屋のうすあわせになんとなく似ているかも…?



 しっとりとした生地が特徴。これはくるみ味(中に砕いたくるみが少し入っている)。他にいちご味もあります。香りだけでなく、味にもちょうどいいバランスでいちごっぽさが生きています。

 クムコプ体育人綜合食料工場は、近年人気の工場。スポーツ選手のための栄養食品をはじめ、一般市民向けの食品も幅広く販売しています。工場の近くにある直売店に行くと、パン、お菓子、ケーキ、お餅、食肉加工品、ジュース、お酒など、ありとあらゆる食品が陳列されていました。パン一つとっても種類が豊富。それほど広くない店内は、商品を買い求める人々でいっぱいでした。

 企業間競争も激しいという朝鮮の食料工場。レベルの高いお菓子が今後も続々と登場してくるでしょう。機会があればまた紹介したいです。(理)

川崎でヘイトデモが決行

2017-07-19 10:00:00 | (瑛)のブログ


 住民たちの度重なる要望もむなしく、7月16日、川崎市中原区の綱島街道で差別扇動者たちによるヘイトスピーチデモが決行された。かれらは出発時点から離れた場所に観光バスで到着。約20人が警察に先導されながら、11時から約10分間、デモを決行した。

 差別扇動者たちは、「本邦外出身者へ告ぐ。日本人に対するヘイトスピーチ、許さない」「デモこそ人権」としたポスターや、2015年2月に多摩川河川敷で殺害された少年の顔写真に「川崎を取り戻せ」と書いたプラカードを掲げ、民族的マイノリティが日本人に攻撃を加えているような主張をした。






 しかし、駆け足で追いついた市民たちに、行く手を阻まれ、差別主義者たちはとん走。予定していたコースは700メートルだったが、かれらが歩いたのは約300メートルだった。







 川崎平和公園には9時前後からヘイトデモに反対する約500人の市民たちが各地から集結し、炎天下のもと、デモコースとされる道の沿道を埋め、「ヘイトやめて」「差別のない川崎の街へ」と書かれたプラカードや横断幕を掲げながら、神奈川県警にデモの中止を呼びかけた。

 訴えること1時間半。しかし、デモは決行された。驚くべきは、 出発地点が急遽、変更されたにも関わらず、ヘイトデモの先には警察の先導車両があったことだ。この事実について、現場にいた有田芳生参議院議員は、「警察は職業的差別主義者を守っている。その姿を国会の法務委員会で徹底的に追及していく」と怒りをあらわにしていた。



「ヘイトスピーチを許さない川崎市民ネットワーク」の三浦知人事務局長は、「デモを予告した時点で、すでに人権被害が生まれていたにも関わらず、警察と公安が結託した形でデモが行われたことに怒りを覚える。『ヘイトスピーチをやり直す』という、かれらの行動をしっかり処断するため、川崎市で条例を作り、差別が断罪される社会を作っていく。そのための今日を刻みたい」と悔しさに声を震わせていた。

 また、川崎市ふれあい館職員のチェ・カンイジャさんは、「私は今日、絶望を見に来たわけではない。いつの日か市民がデモを止めなくても、ヘイトデモができなくなるその日に向かっての希望の一歩。今は苦しいし、大変だけど、払われた犠牲は法整備で凌駕していきたい。ともに頑張りましょう」と声を振り絞った。



 デモを計画したのは、川崎市内で2013年5月から12回にわたり、デモが繰り返してきた人物だった。この人物のデモで卑劣さを極めたのが、15年11月と16年1月の「日本浄化デモ」。民族虐殺を思わせる「浄化」という言葉を使い、在日コリアンが多数暮らす川崎市桜本の住宅街をめがけてきた。

 その第3段として予告された昨年6月5日のデモに対して、川崎市長は、デモ出発前の集会を前に公園を使うことを認めず、横浜地裁川崎支部も桜本でのデモを禁止する仮処分決定を出し、デモは中止となった。





 ヘイトスピーチ解消法が施行されて1年。差別と偏見を巻き散らかしてきた差別主義者に、なぜデモが許可されたのか―。市民たちは、込みあげる怒りを県警にぶつけていた。 翌17日には秋葉原でも、警察に守られながらヘイトデモが行われている。



 攻撃されている人たちは、心身ともに限界に来ている。日本政府や自治体、警察は本腰を入れて、ヘイトスピーチの根絶に取り組むべきだ。(瑛)