広島朝鮮初中高級学校の生徒、卒業生110人と広島朝鮮学園が原告となり、朝鮮学校のみ高校無償化制度から除外する文部科学大臣の処分の違法性を訴えてきた広島無償化裁判の判決が7月19日、広島地裁で言い渡された。
裁判所には傍聴券を求め234人が列をなし、60の傍聴席が報道陣、原告、支援者らで埋まった。広島だけでなく東京、愛知、大阪、山口、福岡、徳島など各地から朝鮮学校関係者や日本市民が駆けつけた。
広島地裁の小池洋裁判長は法廷で判決要旨を読み上げ、就学支援金の支給(高校無償化の適用)を求める原告の訴えを却下し、その他の原告らの請求を棄却する不当判決を下した。
判決文は被告である国の主張の丸写しだった上、同校と朝鮮総連との関係などをあげながら、「就学支援金を支給したとしても、授業料に係る債権に充当されないことが懸念され、本件規定13条が定める『債権の弁財への確実な充当』が適正に行われると認めるに至らないとの文部科学大臣の判断に、裁量の範囲の逸脱、濫用が認められるとはいえない」とした。
一方、これまでの原告の主張はすべて無視。民族教育権はおろか、原告である生徒・卒業生110人や現在学校で学ぶ生徒たちの学習権については一言も触れられなかった。
閉廷した途端、傍聴席からは「これは子どもに対する権利だ。学校に払うお金じゃない。高校無償化制度が誰のためにあるのか、しっかり勉強しろ!」と裁判長に対する怒りの声が上がった。
あまりにもひどい判決内容に涙が止まらず、席から立ち上がれない保護者もいた。
今回の不当判決を受け、弁護団、広島朝鮮学園、広島朝鮮初中高級学校オモニ会から声明が出された。
弁護団は声明で、「恣意的な行政判決を正すべき司法が、無批判に行政の主張に追随したことは、民族差別を助長するものである。当弁護団は、このような不当な裁判所の判断を到底受け入れることはできない」と強く批判した。
また、高校無償化法が全ての子どもたちに教育の機会均等を保障し、教育を受ける権利を真の意味で実現するために作られた法律だ。声明では「本来であれば、子どもたちに手を差し伸べるための法律が、かえって、罪なき子どもたちの心に傷を与えてしまうという逆転した事態を招いてしまった」「教育行政とは、全ての者にその能力に応じた教育を等しく行うことによって、全ての者が、明るく輝ける将来を作り出すための基礎力を養い、平和、かつ自由・平等で文化的な社会を作り出すための人材を育成することにある。多文化共生に逆行し、弱者を締め出す教育行政を行うことは、日本国憲法に反し、許されない」とし、朝鮮学園の子どもたちが笑顔を取り戻せるよう最後まで闘い抜くと決意をのべた。
多くの報道陣が集まる中、弁護士会館で判決報告会、記者会見には学校関係者や支援者約300人が参加した。
原告である朝鮮学園と卒業生らが、判決言い渡しを受けての思いなどを率直に語った。
原告の一人である黄希奈さんは、「判決を言い渡されるまで、とても緊張していました。ですが、今日集まってくださった多く人たちの姿を見て、ひとりじゃないという思いになりました。また、法廷に入る前、同じ原告として闘っている110人の卒業生たち、全国の仲間たちの顔が浮かびました」と、涙を浮かべた。
記者の質問に対し、弁護団からは控訴する意思が伝えられた。
足立修一弁護団長は、高校無償化制度からの朝鮮学校除外は、地方自治体が補助金をカットする口実となっており、またヘイトスピーチを容認しないが朝鮮学校差別は堂々とやっていいんだと国が言っているのと同じだと指摘し、「これは差別の扇動。この判決はどこかの段階で是正されるべきだ」と述べた。
同日に朝鮮学園で行われた報告集会には約360人が集まり、一橋大学の田中宏名誉教授や、各地の高校無償化裁判弁護団、韓国からの支援者などから連帯のあいさつが行われた。
オモニ会、原告卒業生らもアピールをし、勝利するまで絶対に諦めないと決意を新たにした。(S)
正直、そう簡単に事は運ばないだろうと悲観的予想はしていました(「敗北主義」的発想ですが、お許しください)。が、それにしても「もっと何か言いようがあるだろう」と。
「広島」という土地柄であればこそ、在日という存在や歴史観がそれなりに反映されて然るべきではないのか。あまりにふざけた判決文です。
とにかく本件に関して、司法は骨の髄まで「政府の番犬」と化していることを露呈させましたね。今後各地での訴訟の推移を見守りたいと思います。