今日4月24日は、4.24教育闘争があった日です。
4.24教育闘争についてはいろいろな資料を見てもらうとして、先日、大阪で4.24教育闘争を題材にしたマダン劇を観てきたので、今日はその報告をしたいと思います。写真と共にご覧ください。
マダン劇は「O‐ゼロ‐」(作・演出:金哲義)という作品です。4月19日と20日に大阪・天満橋のドーンセンターというところで3度公演が行われました。私は19日の公演を観たのですが、150人以上が入る超満員でした。3度とも大入りだったようです。
マダン劇を企画・制作したのは「Unit 航路-ハンロ-」。このブログで何度か紹介した劇団Mayの座長・金哲義と劇団タルオルムの座長・金民樹が作ったユニットです。在日同胞演劇界の「3金」のうちの2人が一緒にやっているわけです。
あらすじは次のような感じ。
1945年8月15日に日本帝国が破れ、日本の植民地支配から解放された朝鮮。日本にいた同胞たちも民族を取り戻します。主人公・ソンフィは朝鮮人として歩みを始めるとともに、自宅で子どもたちに朝鮮語を教え始めます。当時は日本全国に国語講習所のような形でいくつもの小さな「ウリハッキョ(朝鮮学校)」が作られていきました。そのような中の一つだったわけです。
ある日ソンフィは、日本人青年・野崎拓造と出会います。野崎はソンフィの取り組みと窮状、子どもたちの姿に、学校建設のために共に立ち上がります。野崎が見つけてきた工場の跡地を同胞や子どもたちが懸命に整備してついに学校を作ります。
しかし、GHQと日本当局は在日朝鮮人と在日朝鮮人の民族教育を弾圧し始めます。1948年、ついに学校閉鎖令が出されます。
学校を守るために集会を開き、知事のもとへ抗議のために集結する同胞や野崎たち。学校にはソンフィと子どもたちだけが残り授業を続けていました。しかし、そこに武装警官の靴音が迫ってくるのでした。
この作品は、当時、東京で実際にあった話を元に作られたそうです。4.24教育闘争は、もちろん4月24日だけ闘われたものではないし、阪神地域だけで闘われたものではありません。日本全国の朝鮮学校・地域でそれぞれの闘いがありました。
GHQと日本政府はなぜ在日朝鮮人の民族教育を弾圧したのか? アメリカにとっては、新たなアジア支配構造を築くため、朝鮮で戦争を仕掛けるために、戦争の最前線基地となる日本で朝鮮人の組織、運動が大きくなることを恐れました。日本もアメリカの政策に追随すると共に、植民地支配、侵略の責任を追及されることなく国体を維持するためには在日朝鮮人の存在は邪魔でした。この構図が65年間変わっていないがゆえに、今も朝鮮学校は弾圧を受けていると言えます。
物語の中で、結局朝鮮学校は潰されてしまいます。国を支配する権力が本気になれば、朝鮮学校を潰すことはたやすいことでしょう。それも、今も同じ。
解放後、1世たちはゼロから朝鮮学校を作りました。そして、4.24のあとも、各地ではいろんな形態で朝鮮学校が守られてきたし、なくなった地域ではまたゼロから作られました。
現在の朝鮮学校に対する弾圧が今後どうなるか、その弾圧のなかで朝鮮学校が今後どうなるかわかりませんが、登場するソンフィや子どもたちのように、ゼロからでも朝鮮学校を作り、守り、発展させるのだという思いを持つ人がどれだけ多くいるのか、また、その思いがどれだけ強いのかが重要だと思います。人がいて思いがあれば、どんな形でも在日朝鮮人の民族教育は続いて行く、そのような意志を、「O‐ゼロ‐」を観て改めて持つことができました。また、4.24の教訓の一つだと思います。
日本によって民族を奪われたわれわれにとって、朝鮮学校を守ることは、民族を賭けた闘い、自分の存在を賭けた闘い。2013年の今、闘う相手の多くは外にではなく、より内にいるのかもしれません。最後の場面でソンフィが、警官を前に必要以上に卑屈に振舞っているように見えましたが、何か作者の意図があるのかと考えています。卑屈な態度に対してのソンフィの民族教育の未来への確信と熱い思い、そのギャップは何を語っているのか?
また、その思いは在日朝鮮人だけに必要なのではなく、日本人にも必要なのではないでしょうか。この作品に「野崎」という日本人が重要な人物として登場するのは非常に象徴的です。日本の植民地支配により日本に住むこととなった在日朝鮮人の民族教育は、本来、日本が責任をもって実施すべきものです。
どんな名優も、子どもの演技にはかなわないと言いますが、この作品も本当にそうで、子どもたちが自分の学校(ウリハッキョ)を潰しに来る武装警官たちに「来るなら来いや!」と叫ぶ場面は、身体の芯からゾクゾクしました。子どもが投げたひとつのつぶてが現在、署名運動や折鶴やデモ行進やこのマダン劇に形を変えている、石を投げ続けなければいけないと思いました。
今回のマダン劇「O‐ゼロ‐」は、大阪の朝鮮学校を支えるためのホンギルトン基金のチャリティ公演として催されたもので、公演の収益金の一部が寄付されます。
公演終了後、この作品の初演の様子を収めたDVDの注文が殺到しているそうです。それだけインパクトがあったのでしょう。このDVDの売り上げの一部もホンギルトン基金に寄付されます。素晴らしい作品を見てもらいたいこともありますが、朝鮮学校を支えるためぜひお買い求めください。
ご注文は、
http://www.hangro.jp/からお願いします。
マダン劇「O‐ゼロ‐」は、月刊イオ6月号で大きく紹介します。楽しみにしてください。(k)