日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

ショック! 大阪朝高ラグビー部、1回戦敗退

2011-12-28 14:46:01 | (K)のブログ
 第91回全国高校ラグビー選手権大会に出場した大阪朝高ラグビー部でしたが、今日の初戦、石川県代表の日本航空石川高校に10対29で負けてしまいました。

 完敗でした。相手の力が上回っていたといえるでしょう。
 試合も、後半10分ごろまで、常に相手のペースで進みました。点差が開き攻める中で、大阪朝高にやはり焦りがあり、ミスや反則が多く、チャンスを逃す場面が多く見られました。相手のトンガからの留学生の2選手のパワーもすごかった。
 大阪朝高の呉英吉監督も、「力不足だった」と試合後に語っていました。

 試合の詳しい内容は、月刊イオの2月号で報告しますが、私個人として、1回戦で負けることは想定していなかったので、ショックが大きいです。

 選手たちはそれでも、最後まであきらめることなくボールを追いました。今年のチームは1、2年生が多いので、来年はこの敗戦を糧に、またすばらしいチームを作ってくれるでしょう。呉監督もそのように誓っていました。

 キャプテンの洪泰一選手が試合後に語っていた言葉が印象に残りました。
 「朝鮮学校をとりまく状況が良くない中で、僕たちががんばって勝ち、同胞の皆さんに喜んでもらおうと思っていたのに、それができずに心が痛いです。残念です」
 その言葉を聞いていて、高校生たちにそんな思いをさせて、大人のわれわれこそ、申し訳ない、「全国大会」に3年連続で出場しただけで大きな力をもらったと、心の中がすまない気持ちでいっぱいでした。

 大阪朝高ラグビー部には、明日からまた、新チームでがんばってもらいたい。来年もぜひ花園で取材をしたいと思っています。


 ブログ日刊イオは、今日で今年の更新は終わりとなります。激動の1年でしたが、来年は良い年になるように願っています。今年1年間、月刊イオ、日刊イオともども、ご愛読ありがとうございました。(k)

大阪朝高ラグビー部、今日が初戦です

2011-12-28 09:00:00 | (K)のブログ


 イオ編集部は今日が「仕事納め」となります。
 しかし、私は一足先に関西へとやってきました。

 昨日から始まった全国高校ラグビー選手権大会(大阪・近鉄花園ラグビー競技場)に出場する大阪朝鮮高級学校ラグビー部を取材するためです。
 3年連続6回目の出場となる大阪朝高。この、「3年連続」というのが光っています。強豪がひしめく大阪で3年連続は立派の一言。そのおかげで、関西出身の私にとって花園での取材が、里帰りを兼ねた正月休みの恒例行事のようになっています。

 大阪朝高は今日が初戦。相手は石川県代表の日本航空高校石川です。大会の公式ホームページには、日本航空高校石川について次のような紹介文が掲載されていました。
 「今年も圧勝で、創部以来7年連続7回目の花園出場を決めた航空石川。FWの突破力、BKラインの展開力共に例年より高いレベル特にアタック力はチーム史上随一の呼び声が高いU-20日本代表の長谷川、高校日本代表のトンガ人留学生モセセを中心に今年こそ悲願のシード校撃破で、正月を花園で迎えて下さい」

 なかなかの強豪校のようで、熱戦が期待されますが、大阪朝高は必ず同胞たちの期待に応えてくれることでしょう。
 試合は第1グラウンドで12時30分スタートです。


 ブログ・日刊イオもとりあえず今日が今年の最後となり正月休みに入りますが、昨年、一昨年と同じように、大阪朝高が勝ち続ける限り更新していきます。
 今日も、試合が終了した後、できる限り早く、試合内容をこのブログで紹介したいと思います。ご期待ください。また、これも毎度のことですが、試合の途中経過を私個人のツイッターでつぶやき中継したいと思います。こちらもご期待くさい。(k)

「2011クリム展」を終えて

2011-12-27 09:58:08 | (麗)のブログ
 12月18日をもって「2011クリム展」が無事、終了となりました。
 見に来てくださった皆様、ありがとうございました。

 今回のクリム展で、久々に自分の作品を公に出すこととなりました。
学生時代の作品を当時のまま出すのは気が引けるので、ちょっとだけ手直しをと思い3年ぶりに油絵道具を押し入れから出しました。
 久しぶりに蓋を開けた油絵道具は懐かしさと油のにおいが混ざり合って、一瞬にして学生の頃の感覚が戻ってきました。
 狭い部屋でなんとか作業スペースを作って制作に取り掛かりましたが、3年ぶりに筆を握った感想は正直、思うようには描けませんでした。やはり3年のブランクは大きい…。

 私は3点作品を出品したのですが、その中には生前のハンメをモデルにした作品もあります。
 一番大きい作品は朝鮮大学校の美術棟にある倉庫に保管してもらっていたので、土日を利用して大学にお邪魔し絵を描いていました。
 大学にいる間、美術科の先生たちとも久しぶりに再会し、他愛もないことから作品のことまでいろいろ話ができ、その流れで新品の筆も2本頂きました。そして「今回のクリム展を契機にまた絵を描きなさい」という言葉も―。
 その言葉は今の私にとってとてもありがたく、そうやって望んでくださる人がいるということはとても幸せなことなのだと強く感じました。他の参加者の作品にも出会えることが出来たし、この間久しぶりに絵に触れて色々と浄化された気持ちになりました。

「まずは新しい道具をたくさん買ってみなさい。そうしたら勿体なくて描かなきゃという気持ちになるから。」と笑いながらおっしゃった先生の言葉が忘れられません。

 誰かに尻を叩かれないと動けない自分ではありますが、やはりいまの私には好きなものを追及する時間が必要だなと改めて実感。
さて、新しい道具を買い揃えないと…。




 このブログを書いていた週に、金正日総書記が逝去したという訃報が流れました。
 ここ連日の異常なまでの日本の報道にはほとほとうんざり。年末からこのような報道が続くのは見るに堪えませんが、今日から始まる全国高校ラグビー大会で明日、いよいよ大阪朝高ラグビー部が初戦を迎えます。
 きっと彼らの勇姿が、日々過熱するいまの日本の報道を一気に吹き飛ばしてくれるでしょう。年末年始から全国の朝高生、同胞が笑顔になれるような明るいニュースになることを信じています。
 
 私が担当する火曜日のブログは今年最後となります。
 来年また、日刊イオでお会いしましょう。では皆さん、よいお年を!(麗)

今年も残りあと6日

2011-12-26 09:24:50 | (里)のブログ
タイトル通り、今年も残すところ約1週間となりました。
2011年を振り返ると、世の中ではいろんなことが起きていました。大体は良くないことばかりだったような気がします。

日本では毎年、「今年の漢字」は何だったかと話題になります。今年は「絆」でした。
(絆…?!)と強烈に違和感を感じたため、自分でも少し考えてみました。
私が思った今年を表す漢字は「嘘」です。
思えば3月、東日本大震災は自分の人生において本当に大きな衝撃となりました。
福島第一原子力発電所の事故が起こり、それまで「放射性物質」やら「被曝」についてまったく知識がなかった私は、
一体何をどうするべきなのかよくわからないでいました。
あの時ほど無知が恐ろしいと思ったことはありませんでした。
それからは、自分なりに必死にいろいろと情報を収集していきました。
調べれば調べるほど、事態がすごく深刻なのがわかり、ひどく落ち込んだりもしました。
テレビでは政府や東電があからさまな嘘をしゃべっていることも知りました。
そういう違和感やギャップでいっぱいでした。
日本という国や企業の体制、もっと大きくいえば嘘でも鵜呑みにしてしまうような世間の雰囲気みたいなものに
あれほど強く不信感を抱いたことはありませんでした。
今まで、頭ではわかっていても、心から、という訳ではなかったみたいです。
でも、今回のように「命」に関わる問題が起こってから、自分の中で何かが音をたてて崩れていくのを感じました。
少し大げさかもしれませんが、地震と原発事故は自分にとってそういう力を持って迫ってきたのです。


その「違和感」は、今もずっとあります。増すことはあっても減りはしません。
最近では「朝鮮学校がダミー版教科書を提出した」「補助金が朝鮮総聯に還流されている」という事実無根の話、
「従軍慰安婦問題は1965年の日韓基本条約で完全に解決している」という歴史的事実に反した嘘の主張などが、
ただそこに存在しているだけでなく、国や行政の決定にそのまま反映されてしまっています。
「嘘も百回言えば真実となる」という言葉を聞いたことがありますが、
その通りではないでしょうか。









先週、朝鮮の金正日総書記の突然の逝去のニュースが飛び込んできました。
その事実自体がまず私自身にとっても衝撃的でした。同時に、日本のメディアの報じ方もすさまじく、
総書記逝去を受けての大きなショックと、報道への嫌悪感が入りまじって、
しばらく沈黙せざるを得なかったというのが正直なところです。
人が死してもなお、ああいう風に辱めるのか、と、怒りがこみ上げてきました。
金正日総書記亡き後の朝鮮はどうなっていくのか、いろいろと心配ではあります。
しかし、来年以降、関係各国と引き続き関わりあいながら、朝鮮が朝鮮のための最善の選択をし、自国の尊厳を守っていってほしいと願っています。(里)


衝撃的なニュース

2011-12-25 09:00:00 | (愛)のブログ
19日、最も衝撃的なニュースが流れてきました。
今回ブログを書こうにも、私の頭の中はゴチャゴチャで、何をどう書いたらいいのかよく整理がつきません。
ニュースで速報が流れた瞬間、私自身も茫然自失となりました。
来年2012年には金日成主席生誕100周年と金正日総書記70歳の記念すべき年として、
在日コリアン社会も盛大に祝おうということになっていました。
その2012年を目前に。。。
胸の真ん中にぽっかりとおおきな黒い穴が空いたようでした。

金正日総書記について日本は「独裁者」だ、なんだと騒いでいますが、
朝鮮を導いてきた総書記の政治手腕の素晴らしさは、
金日成主席なき後、主席の遺志を継ぎ、一貫した主張を持って、
米国という国にも毅然とモノ申せる国として、
朝鮮が存在しているという事実をもっても証明されていると思います。
日本のように国を導く長がころころ変わりその度翻弄されるなどということもなく、です。
本当に私たちは偉大な指導者を失ってしまったんだと、いまも寂寥感に打ちひしがれています。

しかし、(相)さんも(淑)さんも書いていましたが、ここ何日間の日本の報道はあまりにもひどいものばかり。
日本の報道は自分たちの価値観でしかモノをみれないのですね。
このブログを書いている今もニュースで朝鮮人民が泣いている姿を見て、
「母親が子供の服をつかみながらもっと泣けといっているようにみえる」だのなんなの、
くだらないコメントを入れてくる。
私たち朝鮮民族は大切な人がなくなると日本人のようにはひっそり泣きません。
体で、全身を使って悲しみを表現する。それが昔からのならわしです。
その文化の違いもわからず、そういったくだらないただ煽るための報道が垂れ流され、
それを鵜呑みにする人は少なからず存在する。それがまた悔しくてなりません。
どうかこのブログを見ている方々はただ垂れ流される情報だけを信じず、
いろんな価値観があると理解したうえで自身で正確な情報をみていただきたいです。

今回、この時期に期せずして朝鮮に訪れていた在日同胞が弔意を表す儀式に参加した際、
金正恩副委員長が一人ひとりの手を取り同胞たちを慰労してくれたそうです。
朝鮮新報のHPに記事が載っています。
【金正恩副委員長、錦繍山記念宮殿で在日同胞を慰労】
http://jp.korea-np.co.jp/article.php?action=detail&pid=52724
このニュース、私個人的に感動しました。
どこの国に、国の重役を担っている人物が、海外から訪れた同胞に一人ひとり手を取って慰労してくれるのか。
これから私たちはどうなってしまうのかと一瞬思いましたが、
決して祖国はわたしたち在日同胞を見放さないだろうと思いました。

年の暮れにこういったブログを書かなくてはならなかった今年。
来年2012年はうれしい、喜ばしい衝撃ニュースがあることを祈るばかりです。(愛)


2011年、年の瀬に

2011-12-24 09:00:00 | (淑)のブログ
 正直なところ、今日のブログに何を書こうか二三日逡巡していました。まったくほかの話題を書くこともできましたが、どうにも触れずに過ぎることはできないので、少しだけ書きたいと思います。

 19日正午、あまりに突然の金正日総書記の訃報でした。
 複雑な感情が渦巻く中でも、総書記の逝去を日本のメディアが面白おかしく取り上げ、好き勝手書き立てるだろうと、容易に予想ができたので、その日は一度もテレビをつけずに過ごしました。
 一夜明け、毎度のことではありますが、常軌を逸した侮辱的報道がおびただしく流れていました。
 追悼の意を示すより早く、緊急厳戒態勢を整える日米韓。メディアは総書記の逝去を、水を得た魚のようにこぞって取り上げ、「北朝鮮」の「悪魔化」に励み、指導者の悲報に涙する人民を、「やらせ」「嘘泣き」と馬鹿にしました。亡くなった方に弔意を表すことは人として最低限の礼儀でありこそすれ、馬鹿にするなど、完全に常識の枠を超えています。この国では静かに故人を悼むことすらままならないのか。
 この間、少なからず同胞の中からも、耳に入れたくない悲しい言葉を聞きました。一貫して朝鮮を一国家として認めようとしない日本政府、日本社会にはびこる意図的で偏狭的な「北朝鮮」報道により、在日同胞たちが幾重にも分断されてしまっている。連日のくだらない報道よりも、そのことがもっと深く胸に突き刺さります。

 朝鮮の歌を一つ紹介します。
 <장군님 찬 눈길 걷지 마시라>、人民のため激務に励む総書記に対する想いを、総書記が険しい雪道を行く姿になぞらえてうたった歌で、朝鮮人民に広く歌われている歌の一つです。(タイトルをクリックしたら聴けます)

장군님 찬 눈길 걷지 마시라

눈오는 이 아침 우리 장군님
그 어데 찾아가십니까
찬 눈을 맞으며 가시는 길에
이 마음 따라섭니다
이 땅의 눈비는 우리가 다 맞으리니
장군님 장군님 찬눈길 걷지 마시라

우리를 잘 살게 하여주시려
수령님 한생 맞으신 눈
오늘은 장군님 혜쳐가시니
이 가슴 젖어옵니다
충효를 다하여 맡은 일 더 잘하리니
장군님 장군님 눈바람 맞지 마시라

장군님 찬 눈비 맞으시면서
험한 길 더는 걷지 않게
날마다 기쁨을 드리는 길에
이 한몸 바치렵니다
우러러 바라는 간절한 소원입니다
장군님 장군님 부디 안녕하시라

 こういった朝鮮の曲にあまり馴染みのない方からすると、歌詞の内容に驚かれるかもしれません。しかしこの曲が朝鮮人民に愛されるわけは、この曲の美しい旋律のためだけではありません。そしてこのような歌が心から愛されているのも、嘘ではない、ありのままの朝鮮の姿なのです。今朝鮮で流れている涙に、ほんの少しでも想いをいたすことができたならば、それを想像できるような事実に基づいた客観的な報道がなされていたならば、あの涙が「やらせ」だなんて誰も信じなかったと思います。

 2011年も残すところあとわずか。今年は、3.11東日本大震災、そして総書記の悲報と、多くの人の記憶に刻まれるであろう、忘れがたい1年となりました。私個人としても、4年間勤めた職場からイオ編集部に配属になり、新たな一歩を踏み出した年でした。記者として初めて訪れた取材地は、被災地・宮城でした。そして2011年、最後の取材は、29日に東京朝鮮文化会館で行われる総書記の追悼式となりそうです。

 期待に胸を膨らませ待ち望んだ2012年がもうすぐ明けようとしています。予期せぬ出来事に、また別の意味で2012年が、朝鮮半島にとって、在日同胞社会にとって、重要な1年になるだろうと、切々と感じている2011年の年の瀬です。(淑)

金正日総書記逝去、そして社会的憎悪の対象としての「北朝鮮」

2011-12-23 10:07:03 | (相)のブログ
 今年も残すところあと9日。
 現在、イオ編集部では来年2月号の編集作業の真っ最中です。2月号は年末年始の休みを間に挟むので毎回忙しくなります。
 そんな中、4日前の19日に金正日総書記の逝去という突然の訃報が飛び込んできました。正午に「特別放送」を行うという予告、そして総書記の逝去を伝える女性アナウンサーの涙交じりの声。その瞬間、本誌編集部がある朝鮮新報編集局フロアは騒然となり、その後、水を打ったように静かに、沈うつな空気が流れました。
 総書記死去後の朝鮮はどうなるのか。28日の永訣式と29日の追悼集会で今後の道筋がある程度示されるでしょう。これについては、また別の機会に書きたいと思います。
 
 そして(悪い意味で)予想通りというべきか、日本では金総書記逝去を機に、社会的憎悪の対象としての「北朝鮮」がまたぞろ立ち上げられようとしています。マスメディアには事実の無視や憶測に基づいた報道が流れ、政治家は危機を過剰にあおる、インターネット空間には排外的言説があふれる、といったことが今回もまた繰り返されています。今後、朝鮮民主主義人民共和国に対する排外的感情がさらに高まり、在日朝鮮人がその暴力の標的となることも危惧されます。朝鮮民主主義人民共和国という存在を(国籍も含めて)一貫して認めない一方で、差別し弾圧し排除する時だけ都合よく「北朝鮮」を持ち出す。まこと、「北朝鮮」とは便利な言葉であります。

 一方、朝鮮高校に対する「無償化」適用について、文部科学省の中川正春大臣は19日、「北朝鮮の体制がどうなっていくか、それによって判断したい」とのべ、「北朝鮮の権力体制が完全に移行し、安全保障上に問題がないことを見極めたうえで適用の可否を決断することを示唆」しました。同省幹部も「しばらくは動向を見極めなければならないだろう。場合によっては審査が大幅に遅れることも考えられる」と話し、「無償化審査への影響は避けられないとの見方」を示しました(産経新聞)。
 同時に、補助金支給問題でも大阪、茨城などで暗いニュースが相次いでいます。
 今月下旬に出来上がったイオ1月号には「高校無償化」適用、補助金打ち切り撤回を求めて同胞、日本市民らが12月初めに東京と大阪で開いた集会の記事が掲載されています。タイトルは、「もう待てない! 高校無償化」。ちなみに、去年の1月号にも「無償化」の記事が載りました。2010年の3月に適用されるはずだった「無償化」措置ですが、結局2回年を越すことになりそうです。

 1週間前に編集部の忘年会が行われました。そこで毎回、編集部員が選ぶ年間10大ニュースを発表するのですが、今年最も多くの票を集めたのは東日本大震災でした。そして、このたびの金正日総書記逝去。自分にとってこの1年を振り返るにはあまりにも暗く、悲しく、やるせない話題が多いですが、来年こそはいい結果が多く出ることを願っています。
 今年の私のブログ・日刊イオの当番は今回で最後になります。来年1月、またお会いしましょう。(相)

17年ぶりのウリハッキョ⑦訃報の翌日

2011-12-22 09:00:00 | (瑛)のブログ

総書記逝去の報が流れた翌日から、ハッキョは私服での登校になった。

その日風邪で早退した息子は、学校での説明は聞けず、私が直接伝えることになった。

「チョソンのそうりだいじんのような人が死んだんだよ。ウリナラのことを悪く思う人が、ハッキョのみんなにいやなことをするかも知れないから、キョボク(制服)は着ないことになったんだよ」

息子は総書記が祖父と同じ69歳で亡くなったと話すと悲しそうな表情だったし、私服を着る理由を告げたときは、「自分の周りのイルボンサラム(日本の人)にそんなひとはいない」「みんな親切だよ」と反論するのだった。

この気持ちを大事にしてほしいと思った。彼にとって、朝鮮と日本は遠い存在ではないのだから。幸い、息子のハッキョで暴言暴行を受けた子どもはいないそうだが、教職員たちが集団登下校の体勢をとっている。

今から20数年前、朝鮮高校に通っていた私は、当時制服だったチマチョゴリを電車の中でハサミで切り刻まれた。2級上の先輩には首を絞められた人もいた。その時の恐怖感は今でも忘れない。切られたチョゴリを縫って着ていた私を見て、自分のチョゴリを差し出してくれた同級生のことも。しかし、チマチョゴリ制服はその後、街から消えていった…。

1980年代後半から朝鮮半島を取り巻く政治情勢が緊張するたび、朝鮮学校に通う児童・生徒たちへの暴言・暴行は増えていった。20数年前とは違う点は、大人が無抵抗な幼い子どもに矛先を向ける事件が増えていることだ。

どの国籍を持っていても、どの民族であっても子どもは守られるべき存在だと思う。
幼い頃から他人の大人を疑う社会にはしたくない。
2学期もあとわずか。日本各地のハッキョに通う子どもたちが、無事に家路に着くことを祈っています。(瑛)


月刊イオ2012年1月号が完成しています

2011-12-21 09:00:00 | (K)のブログ
 2011年も終わろうとする時期に、金正日総書記が逝去するというたいへん衝撃的なニュースが流れてきました。金正日総書記逝去に関しては2012年2月号でお伝えします。

 今日は、2012年の新年号の宣伝をしたいと思います。


 1月号の特集は「朝鮮半島 動物たちの宝庫」。
 久々の動物に関する特集です。朝鮮における動物保護の取り組みや、2007年にリニューアルされた平壌中央動物園のルポ、朝鮮半島の昆虫事情、民話や民俗画に見る動物たち、北南の動物交流、朝鮮半島にもいた恐竜の話など、盛りだくさんな内容となっています。

 特別企画として、「崔承喜生誕100年」を組みました。世界的な舞踊家であり、朝鮮の近代舞踊を確立させた崔承喜の生涯や朝鮮で行われた100年記念行事などについて掲載しています。

 2012年度は基本的に、特集と特別企画の二つの大きな企画物を掲載する予定です。ご期待ください。

 1月号ではその他、3年連続花園出場を決めた大阪朝高ラグビー部の大阪府予選決勝の模様、朝鮮学校を除外し続けている高校無償化問題、平壌でのサッカー朝・日戦の取材記も掲載されています。


 新しい連載もいくつかスタートしました。
 「io繋ぐ」は、日本全国で日々繰り広げられている在日朝鮮人と日本人、同胞同士のさまざまな「繋がり」を紹介します。
 「3.11 放射能の舞う大地で」は、今年「世界の顔」を連載していただいたカメラマンの豊田直巳さんの新連載で、福島を中心とした原発事故被災地の写真ルポです。
 「2012権利・生活」は、在日朝鮮人の焦眉の権利問題を毎号解説していきます。
 その他の新連載を並べるとこうなります。
 「グレードup朝鮮語」
 「サノギのピョンヤンナドゥリ」
 「統一いやぎ」
 「メディアウォッチ」
 「ジョンホのへらず口リターンズ」
 「子ども美術館」
 「woman×life」
 「ねぇ教えて」
 「マンガ・コッソンイ」
 「今夜のパンチャン」
 こう見ると新連載がたくさんですね。

 表紙も随分と変わりました。表紙が絵になりました。毎号、その号の特集や特別企画の内容をもとにしたすてきな絵が表紙を飾ります。

 2012年の月刊イオも豊富な内容でお届けします。ご愛読ください。
(k)

教育に対する不当な介入  日本の学校の教科書について

2011-12-19 09:00:00 | (里)のブログ

先週のブログで、「朝鮮学校は今、激しく弾圧されている」と書きましたが、
今日は日本の学校教育の現場で起こっていること、とくに学校で使われる教科書のことについて少し考えてみたいと思います。
国や地方自治体は今、朝鮮学校で行われている教育の内容に対し、不当に介入しようとしていることはこの前のべましたが、
日本の教育現場でも今、同様の事態が起こっているということを中心に書きたいと思います。


日本の小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校においては、
文科省の検定を受けた、もしくは文科省が著作名義を有する教科用図書を使用することが定められています。
一方で、大学などの高等教育や、各種学校(朝鮮学校は各種学校)などにおいては、教科書の使用に関する法的な規定はありません。
教科用図書を授業で使用することが定められている学校においては、
教科書検定制度の下で各教科・科目ごとに1種類ずつの教科書を選定して採択することになっています。
義務教育においては教科書採択は4年ごとに実施され、一度採択された教科書は4年間同じ種類のものを使用することになります。
採択は原則として、市・郡単位で設定された採択区域単位で実施されます。
今年は実は、中学校の教科書採択の年でした。


「つくる会」のことは皆さんご存知だと思います。
「歴史わい曲」「日本国憲法を敵視している」として問題となった教科書をつくり、普及するための活動を進めてきた団体です。
「新しい歴史教科書をつくる会(つくる会)」は2006年に「仲間割れ」した後、
「つくる会」は自由社から、そして分裂して出来た日本教育再生機構=「教科書改善の会」は育鵬社(扶桑社の子会社)から教科書を発行するようになりました。
両者とも、他社の教科書の「反戦平和や護憲、核廃絶、アイヌや在日外国人への差別撤廃、環境保護」などの記述を「有害添加物=毒」だと決め付けるなど、従来の教科書内容を強く否定する立場をとっています。
現に「つくる会」のホームページには、従来の他社の教科書が、
「教室で使われてきたトンデモ教科書」という風に紹介されています。
育鵬社・自由社版の教科書は今まで、市民の抵抗などで低い採用率に抑えられていましたが、
今年は育鵬社の教科書(歴史・公民ともに)の需要数が大幅に増えたそうです。


育鵬社・自由社版の教科書(歴史・公民)を教育現場に広げようとしているメンバーの中には、
自民党の政治家らも含まれています。
自民党は過去、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会(自民党「教科書議連」)」を結成し、「つくる会」と綿密に連携し、活動をバックアップしてきた経緯があります。
(※「慰安婦」問題で旧日本軍と日本政府の関与を認めた「河野談話」(1993)について、「確たる証拠もなく『強制性』を先方に求められるままに認めた」と非難し、河野官房長官(当時)を会に呼びつけ、談話の撤回を迫ったこともあります。)

各地で育鵬社・自由社版教科書を採択させるための条件作りとして、自民党の議員らが指令を出して地方議員を動かすといった事例もあります。
学校で実際に教科書を使って教える教員たちの意見を排除するよう、教育委員会に働きかけるということも起きています。
また教科書採択を促すだけではなく、一旦採択された地域に対し、教科書を「忠実に」教えること、教科書の間違いを指摘してはいけないことが、教育委員会によって教員に強制されているのだというのです(現在一部の地域で使われている扶桑社・自由社の教科書とも多くの間違いが指摘されているにも関わらず、です)。

このような「圧力」をかけることは、教育への不当な政治的介入であって、2006年に「改正」された教育基本法にも違反するものだと指摘されています。
これは、朝鮮学校の教育内容を問題視して弾圧するのと同じような構図のもと起こっている事件だと思います。

育鵬社・自由社版の教科書には、具体的にどのような内容が記述されているのでしょうか。
日本は戦後、武力を放棄し、平和主義に基づいて世界の人々と信頼関係を築くことを憲法で宣言しました。
しかし今、その憲法改悪に向けた動きがさまざまな方面で進んでいます。
育鵬社・自由社版教科書に込められた内容も、そのような流れをさらに推し進めるための役割を果たすものとなってしまっているのです。
育鵬社・自由社版の教科書に共通するのが、自衛隊は実質上の「軍隊」であると強調する点です。
また日本国憲法は兵役の義務を否定しているにも関わらず、過去の明治憲法や他国の憲法を例にあげて、あたかも兵役が国民の当然の義務であるかのように述べます。
一方で、世界では徴兵制のない国も多いことや、良心的兵役拒否が多くの国で認められていることにはふれていません。
育鵬社も自由社も、狙いは憲法を「改正」して、戦争をする国の担い手に子どもたちを育てることなのです。

また、アジア太平洋戦争の美化など、誤った歴史観を押し付ける向きも感じ取れます。
各社それぞれ「大東亜戦争(太平洋戦争)」(自由社)、「太平洋戦争(大東亜戦争)」という項目を立て、
育鵬社では「戦争初期のわが国の勝利は、東南アジアやインドの人々に独立への希望をあたえました」と書き、
自由社でも同様の文章に加え、「アジアの人々をふるい立たせた日本の行動」「日本を解放軍として迎えたインドネシアの人々」と題するコラムまで載せています。
沖縄戦の「集団自決」に関しても日本軍の関与を認めません。
もちろん、両社とも韓国併合については正当化する記述を行っています。

さらに、今回の福島原発事故があったにも関わらず、相変わらず原発を礼賛し、危険性についてはほとんどふれない記述にとどまっています。


長くなってしまいましたが、最近NHKで「坂の上の雲」が放送されていることとか、
「武器輸出緩和へ新基準」や「日本が次世代戦闘機にF35を選定」とかいうニュースを目にしながら、
きな臭さを感じています。(里)

日本軍「慰安婦」被害者の盧寿福ハルモニ

2011-12-18 09:00:00 | (愛)のブログ
昨日も(淑)さんがブログに書いていましたが、
私も先日、<「韓国水曜デモ1000回アクション」外務省を「人間の鎖」で包囲しよう>に参加してきました。
取材は(淑)さんと(k)さんでしていたので、
私はイオ編集部の女子たちと「人間の鎖」のほうに参加しました。

現地の様子ですが、一言で言うとすさまじかったです。
外務省前で両隣の方と手と手をつなぎ、「人間の鎖」をしていると、
警察の制止を振り切って、こちらに突進してこようとする集団。さすがに目の前で起こった時は後ずさりました。
ただじっと手をつないでいるだけで、「朝鮮売女!」などと目の前まで来て、何度も叫ばれたり、
高校生も参加していましたが、その子たちに「何でこんなとこにいんの!?」と詰め寄ったり。
その光景を見て、私も悲しくなりました。自分が聞いても聞くに堪えないのに、
どうして被害者のハルモニがいる前でこんなことができるのだろうと。

ソウルの日本大使館前で毎週水曜日に行われる日本軍「慰安婦」問題の解決を求める水曜集会。
12月14日で1000回目を迎えるということで1000回アクションが東京でも行われる、
行かなくてはと切実に思いたったのは、12月3日の高校無償化集会の場です。
その場にはウリハッキョを支援してくださる韓国のモンダンヨンピルの代表の一人、
権海孝さんも来ていました。
権海孝さんの挨拶で、
タイで居住してきた日本軍「慰安婦」被害者の盧寿福ハルモニが11月4日に他界したことを知りました。
この方は自身の生活費を削りながら大切に貯めた5万バーツを
震災で被害を受けた朝鮮学校に寄付してくださったそうです。
権海孝さんは、盧寿福ハルモニが「私と日本で暮らす朝鮮の子たちはともに戦争の被害者なのだから」と
快く寄付をしてくれたと話していました。(詳しくはこちらのブログに載っています→ノ・スボクお婆さんの追悼式 モンダンヨンピルcaffe
http://ameblo.jp/mongdangj/entry-11094407745.html)

盧寿福ハルモニは日本政府への恨(ハン)を晴らせずに、
遺骨で母国に帰ってきたそうです。
私は話を聞いた時、涙がでました。
異郷の地で言葉に言い表せないほどの大変な苦労をして、大切に貯めてきた貴重な財産、
それを私たち朝鮮学校のために寄付してくれた。
その事実にとても感動する一方、
それなのに自分は日本軍「慰安婦」のハルモニたちのために何をしてきたのだろうかと思うと、
とても申し訳なく恥ずかしくなりました。

集会の日、日本テレビのニュースでは
ソウルの日本大使館前に設置された「慰安婦」問題を象徴する「平和の碑」を、
「抗議の像」として紹介し、日本政府は不快感を露わにしたと報じていました。
設置までの経緯や「平和の碑」という名前まで紹介せずに。
いまの日本は何も反省していない、戦争に日本は何を学んできたのだろうかと思わざるを得ませんでした。

今回の集会には1300人ほどの人たちが集まったそうです。
「234人いた被害女性が63人に」。日本軍「慰安婦」のハルモニたちが高齢化になり段々と他界していく中で、
この問題の解決のため、被害女性と共に訴え続け解決していくには、
私たち若い世代の力がもっともっと必要なのだと思います。(愛)



「水曜デモ」連帯集会に参加して

2011-12-17 09:00:00 | (淑)のブログ


 日本軍「慰安婦」問題の解決を求める韓国水曜デモが1000回を迎えた14日、東京・霞ヶ関で行われた連帯集会を取材しました。
 すでに報じられている通り、集会には日本各地から1300人が集い、「人間の鎖」で外務省を囲み、四方八方からこの問題の解決を声高に叫びました。
 しかし、集合場所の日比谷公園に着くなり聞こえてきたのは、集会を妨害しようと訪れた「在特会」(在日特権を許さない市民の会)の罵声でした。



 集会中、「在特会」をはじめとする極右団体は、今にも飛び掛らんばかりのはげしい妨害行動を繰り広げ、耳をふさぎたくなるような罵詈雑言を終始吐き散らし、集会は一触即発の雰囲気の中で進行されました。私自身、今回のような大規模な妨害を経験したのは初めてのことで、正直、圧倒的な負のエネルギー、ディスコミュニケーションに途方もない疲弊感を感じました。容赦なく降ってくる暴言から、日本社会の「慰安婦」問題への認識の浅さがいかに問題の解決を阻んできたのかを考えさせられました。同時にそれは、勇気を振り絞り名乗りを上げ、消し去りたい過去を20年にわたって何度も何度も話し伝え続けた被害女性たちの声を幾重にも消し去り、その度に彼女たちの癒えない傷跡を土足で踏みにじり、掻きむしってきたのだと、胸がつまる思いでした。

 集会に参加していた多くの日本の方たちは、「日本人として恥ずかしい。ハルモニたちを1000回も立たせてしまって申し訳ない」と、皆一様に話していました。
 また、「慰安婦」被害者の一人である宋神道さんも参加し、寒空の中、外務省を一周して参加者を鼓舞してくれました。



 午後に行われた院内集会では、宋さんが国会議員たちに渇を入れたり、冗談を言って笑ったりと、会場の雰囲気を和ませてくれました。その奔放なまでの力強さに多くの人が勇気付けられたと思います。
 集会で全国行動共同代表の梁澄子さんは、「『水曜デモ』が始まる前、被害者たちが、性暴力であるがゆえ半世紀近くも沈黙の中に過ごしてきた歳月の重みを認識することなしに、1000回に込められた被害者たちの切実な訴えを知ることはできない」、234人いた被害女性が63人になってしまったことにふれながら、「これこそが20年の歳月の重みだ」と、訴えました。

 いま、重い扉が少しずつ開かれようとしています。18日、京都で行われる日韓首脳会談で「慰安婦」問題が協議されます。日本政府は、「20年の重み」をどのように受け、被害者たちの尊厳をかけた訴えをいかに聞くのか。
 1000回アクションは韓国と日本のみならず、カナダ、アメリカ、台湾、フィリピンなどの世界各国30都市以上で行われました。首脳会談には世界中から関心が寄せられています。日本政府は、今回もまた無視を決め込み、対話のテーブルにつかないのであれば、全世界に恥をさらすことになるでしょう。(淑)

権利獲得闘争~私のとっての原風景

2011-12-16 10:27:42 | (相)のブログ
 唐突だが、20年以上前の出来事について書く。
 東京で生まれ育った私は1986年、朝鮮学校初級部5年生から千葉に引越し、それから地元の千葉朝鮮初中級学校に通った。当時、朝鮮学校に通う児童・生徒たちの通学定期券には日本学校に通う児童・生徒たちに与えられている割引率が適用されておらず、大人なみの料金を支払っていた。JRの通学定期運賃は大学生、専門学校生を含む大人を100とした場合、高校生はその10%、中学生は20%、小学生は65%の割引が適用される。しかし行政当局は、朝鮮学校は「学校教育法第1条で定める学校ではない」との理由から、そこに通う児童・生徒たち12歳以上を大人扱いで割引ゼロ、それ未満は50%引きとしていた。今考えるととんでもないが、当時はこのような差別が国鉄時代から20年近くも続いていたのだ。
 JR定期券割引率差別是正運動は87 年の国鉄分割民営化後、私の地元である千葉朝鮮初中級学校のオモニ(母親)会が同校の最寄り駅であるJR新検見川駅長に差別是正を要請したのに端を発し、日本各地に波及した。当時の「朝鮮新報」の報道によると、女性同盟と学校オモニ会を中心に、各地の在日同胞、朝鮮学校の生徒たちはこの差別的処遇の是正を求める署名運動を展開、署名総数は60万人を超えたという。各JRの本社と支社への要請も連日行われた。
 このような地道な活動、そして日本の市民団体や政治家の力添えの結果、世論も大きく盛り上がり、問題浮上から7年目にしてやっとJR側は要請を受け入れた。94年4月、国鉄時代から続いてきた朝鮮学校児童・生徒らに対する通学定期券割引率差別が26年ぶりに是正された。この年、東京朝鮮中高級学校に入学した私は正規の割引率が適用された定期券で学校に通えるようになった。
 またこの運動は、朝鮮高級学校のインターハイ参加認定とともに、教育助成の拡充など、民族教育に対する処遇改善を求める世論を高める引き金にもなった。
 そして、付け加えるなら、割引の対象になったのは朝鮮学校に通う子どもたちだけではなく、他の各種学校、専修学校の学生にも同じく適用されるなど、より大きな広がりを持つ運動でもあった。

 1975年生まれの私にとって、朝鮮学校の権利獲得闘争の原風景は、この「JR定期券割引率差別是正運動」だった。87年当時、私は12歳で初級部6年生。運動を発起し、引っ張ってきた地元のオモニたちを幼心にも誇りに思ったものだ。当時の彼女たちの年齢に近づくにつれて(私は男で、未婚だが)、自分が今の子どもたちに対して負っている責任について考えざるをえない。
 在日朝鮮人の諸権利は上述の例を持ち出すまでもなく、文字通りたたかって勝ち取ってきたものだ。それは今も続いている。
 「高校無償化」に地方自治体の補助金支給問題―。声を上げてたたかえば状況は変わり、不正義は正されるということを今こそ大人が子どもたちに身をもって示すべきだと思う。反対勢力の声がいかに大きくとも、道のりがいかに困難であろうとも、現状に対するあきらめやシニシズムに染まることだけは避けなくてはならない。(相)

朝鮮学校への補助金は法的根拠がある

2011-12-15 09:00:00 | (瑛)のブログ

  「そこで行われている授業の内容というのは、先ほども担当の局長に聞きましたら、行くと全然違う教科書を見せる。それから、そのときに限って適当な授業を見せる。それなら、その真偽をただすために、都の職員がやっぱり張りついて、一週間でも十日間でも一月でも、その実態を調査したらよろしいと思うし、それが嫌なら学校を閉鎖したらよろしいので、そういうことを強要できない相手に、私たち国民の税金を使って補助する必要は毛頭ないと私は思います」(東京都のHPから)

 上に記したのは12月8日に東京都知事が都議会で行った発言だ。 東京朝鮮学園が13日に反論の談話を発表したが、朝鮮学校を一度も訪れぬまま、それも事実をでっち上げてまで子どもの学ぶ権利を奪おうとする脅しだ。これが日本に暮らす外国人の2割=41万8000人の外国人を擁する首都東京のトップが口にできたものかと、わが耳を疑った。

 日本政府は、「高校無償化」問題で外国人学校の中で唯一朝鮮高校を排除し続けているが、世間の流れを見ていると、朝鮮学校が反日的な教育をしている、だから日本国民の血税を使うことはまったく許せない、という空気が漂っているようだ。

  しかし、はっきり言おう。朝鮮学校への教育補助は法的根拠がある。

 朝鮮学校への公的な補助金は、1970年に東京都が「私立学校教育研究費補助金」の給付に踏み切ったのが弾みとなり、1974年に大阪府が「私立専修各種学校設備補助金」、77年には神奈川県と愛知県が「私立学校経常費補助金」の支給を始める。その20年後の1997年には愛媛県が補助金制度を設けたことにより、朝鮮学校が所在するすべての都道府県が補助金を支給することになった経緯がある。

 私立学校振興助成法第16条は、地方自治体が各種学校に補助を実施できると定めている。また地方自治体法第232条2項は、地方自治体が「公益上必要がある場合においては」任意の対象に補助を行うことができるとしている。

 さらに、日本国憲法第26条の「教育を受ける権利」は国民のみならず日本に滞在する外国人にも保障されると解釈される。これは「教育の機会均等」をうたった教育基本法にも該当する。
 また、憲法は、国際条約の遵守をうたっており、例えば世界192ヵ国が批准した「国連・子どもの権利条約」には「初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする」(28条a)とのくだりがある。1992年に国連で決議されたマイノリティの権利宣言には、「国家は……マイノリティに属する者が自らの母(国)語を学び、母(国)語で教育を受ける十分な機会を得られるよう、適切な措置をとる」(第4条3項)と明記されている。

 このように、国際条約は民族的マイノリティのアイデンティティ教育を制度的に保障するよう、各国に求めている。

  しかしながら、日本は法制度上、外国人の「教育への権利」が確立されていない。

  日本で、朝鮮学校をはじめとする外国人学校は、日本の国公私立学校のような「1条校」になることはできず、自動車学校や美容学校のような「各種学校」止まり。昨春、高校無償化の対象に外国人学校が含まれることで、初めて国庫補助が実現したが、日本の法制度は外国人学校を支援する枠組みを持たない。そこで各自治体は、保護者の負担を減らして子どもたちの学ぶ権利を保障しようと考え、補助金制度を設けてきた。つまり「公益上必要がある」として独自に判断してきたのだ。背景には朝鮮学校関係者の粘り強い運動があるが、自治体の英断に多くの同胞は力を得てきた。

 例えば兵庫県が支給する外国人学校教育振興費補助金は、外国人学校に支給する補助金の中でトップレベルだが、外国人学校の定義を「専ら外国人の子女を対象とした教育を行う学校教育法第1条に規定する学校に準じた学校」と規定している。

  また市区町村レベルでは、東京都23区が外国人学校保護者の経済的負担を軽減するための保護者補助金を支給しており、江戸川区は、補助金交付の目的を「外国人学校に在籍する児童・生徒の保護者…の負担を軽減すること」としている。兵庫県や東京23区の対応は、制度の不備を自らが補うことにより、外国人の子どもの学ぶ権利を保障しようというものだ。外国人が納税の義務を果たす「地域住民」という視点も大きく作用している。

 都知事は「朝鮮学校に張り付いて調査する」というが、ゆくゆくは日本の私立学校、公立学校にも張り付くつもりなのか。日本国民が戦前の苦い経験から勝ち取った「教育の自由」が泣いている。(瑛)


今日、1000回目の「水曜集会」

2011-12-14 09:00:03 | (K)のブログ

 日本軍「慰安婦」問題の解決を求め、被害者のハルモニ(あばあさん)たちや支援者らが、ソウルの日本大使館前で続けてきた「水曜集会」が、今日で1000回目を迎えます。
 第1回目の「水曜集会」が行われたのが1992年1月のことでした。約20年間も続けられてきたわけです。

 1000回目の「水曜集会」だということで、ソウルはもちろん、東京をはじめとする日本の各地、世界各地でも同時行動が行われます。 私は、11時半から日比谷公園(霞門)で開かれる集会、外務省を包囲するアクションなどに参加します。詳しくはこちらのHPをご覧ください。日本軍「慰安婦」問題についての詳しい説明も読むことができます。http://restoringhonor1000.info/index.html

  12月10日の日刊イオで(淑)さんも書いていますが(http://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/0f6c4ed4f92d9075e5511356ca5658fa)、「水曜集会」は1回でも早く終わらせなければいけなかったものです。

  日本軍「慰安婦」問題が解決せずハルモニたちの恨(ハン)が解消されないのは、全的に日本が過去の国家犯罪をいまなお正式に認めず、誠意をもって謝罪せず、具体的に補償していないからです。これは日本軍「慰安婦」問題だけではありません。強制連行・強制労働、土地や米、資源、文化財などの収奪、言葉や名前を奪い民族を抹殺しようとしたこと等々、あげればきりがありません。

 私には、日本がハルモニたちをはじめとする被害者がすべていなくなるのをじっと待っているとしか思えませんが、たとえすべての被害者がいなくなったとしても、日本の罪は消えることはなく、逆に時間が経てば経つほど罪は大きくなっていきます。

 いま日本は、目に見えて右傾化していますが、根本は過去をきちんと清算しなかったから、そのツケがどんどん膨らんでいるから。たとえはあまりよくありませんが、ひとつ嘘をついた人間がその嘘をごまかすためにどんどん嘘をつかなければいけなくなる、そんな状況が今の日本なのだと思います。

 教科書から記述をなくそうが、排外主義者たちがどれだけ侮辱的な言葉を繰り返そうが、被害者のハルモニたちが訴え続けている事実を消すことはできません。

 

  いま日本は、高校無償化、補助金の問題で朝鮮学校の教育内容や肖像画のことなど、また、「朝鮮学校に支給された自治体からの補助金が、朝鮮総連へ還流されている実態が明らかにされている」などの事実無根の事柄を並び立て、在日朝鮮人の正当な民族教育を弾圧しています。これはすでに、朝鮮学校に対する「差別」という段階を超えて、弾圧です。
 昨日、東京都が「私立外国人学校教育運営費補助金」を予算計上し都議会で承認されたにもかかわらず、朝鮮学校に対してのみ昨年度と今年度分の支給を停止している問題で、学校法人東京朝鮮学園が会見を行いました。その時に出された談話が朝鮮新報の電子版に掲載されているので参照してください。
http://jp.korea-np.co.jp/article.php?action=detail&pid=52670

  被害者のハルモニの訴えを無視し続けることも、朝鮮学校に対する弾圧も、その根っこは同じです。ポコポコと湧き出る個々の排外主義者や歴史修正主義者やそれによる現象を、個々に批判しても問題は解決しません。
 ここで何度も書いていますが、日本が過去を清算しない限り根本的な解決はありません。 日本軍「慰安婦」問題も朝鮮学校に対する弾圧も、日本人自身の問題であり、今の状況をそのまま放置するなら、嘘に嘘を重ねていくと破綻してしまうように、日本自体が破綻するでしょう。(k)