日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

新しい文部科学大臣

2015-10-22 09:00:00 | (瑛)のブログ


朝鮮高校が無償化から外されて6年目、日本政府が態度を改める気配はない。

子どもの学びが阻害され、その結果、将来が左右されるこの差別がなぜ放置されているのか、私には理解できない。経済的な事情で朝鮮高校への進学を断念したり、躊躇したり、教育費で生活が圧迫され、将来への不安を抱える人たちはますます増えている。就学支援金の支給先を決めるうえで権限を持つ文部科学大臣は、この事態に対して、大きな責任を負っている。

 10月7日に安倍内閣の内閣改造が行われ、文部科学大臣も変わった。

 イオ編集部が2006年に出版した「日本の中の外国人学校」(2006年、イオ編集部、明石書店)には、下村文科大臣に変わって新たに大臣に就任した馳浩氏のインタビューが載っている。

当時の私たちの思いとしては、外国人学校の支援を求める人はもちろん、日本の教育を司る文科省の認識をしっかり記しておきたかった。馳浩氏は当時、文部科学副大臣。朝鮮高校にも直接訪れている。

…日本人であろうと外国人であろうと、政府として教育的な支援をするのは当然のことだ。
朝鮮学校に通っているのは、日本で社会人として成長していく子どもたちだ。だからこそ、日常の活動をできるだけ応援できればと思い、様子を見に行った…。(馳氏の発言、本書から)

馳副大臣は、朝鮮と日本の間に横たわる政治問題を乗り越える難しさを語りながらも、「生徒たちを応援したい」と話していた。参考までに、インタビューの全文を掲載する。

 明日も文科省前で金曜行動が行われる。朝鮮高校生、保護者たちは、いつまで叫び続けなくてはならないのだろうか。(瑛)

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インタビュー
外国人学校処遇は、政府、国会の課題
教育は人権問題、支援は当然

馳浩文部科学副大臣

日本で教育をつかさどるのは文部科学省。同省の副大臣を務める馳浩衆院議員は教師の経験もあり、外国人学校の入学資格問題時には、チャンスを平等にと門戸開放を求めてきた。外国人学校の処遇は政府、国会の課題だと語る。

―外国人が200万人突破した。外国人の子どもの教育に関する政府の考えをお聞かせください。

日本は、6歳から15歳までの学齢期にあたる子どもたちに対しては、国籍が日本であろうと外国であろうと教育を受けることができるように体制を整えている。
外国人が、お住まいの学区にある公立小学校、中学校に子どもを通わせたい場合は無償で受け入れている。日本としては教育を含め、外国人の生活支援について、法務省、外務省、厚生労働省、総務省、財務省などの関係省庁と連携し、情報交換を行いながら取り決めをしている。

―外国人の子どもには日本の公立学校ではなく、外国人学校に通うケースもある。外国人学校への支援策について聞かせて欲しい。

東海、北関東地方でブラジル人学校が増えており、東京・江戸川区ではインドの方々も独自に学校を設立している。外国人学校をどのように支援していくのかは政府として今後の課題。今までこのような状況になかったからだ。また、外国人学校に通う子どもを多く抱える自治体に対して、政府としてどのように財政支援をしていくのかという問題もある。
日本人であろうと外国人であろうと、政府として教育的な支援をするのは当然のことだ。IT技術者など、高度な技術を持っている外国の方々に日本で活躍してもらう場合、当然その人ひとりではなく家族がいる。学齢期にある外国人の子どもの教育支援をできる限り行うことが大事だと思っている。教育は一面的には人権問題だ。
政府として対応可能なことは、税制面か財政支援だと考えている。
難しいのは、親が不法滞在のケース。仕事の関係や諸事情で次々と住所が変わりその登録をしていない場合、所在を確認できず学齢期にあたる子どもを受け入れようと思っても確認ができない。2つ目の問題として、教育を受けるにあたって日本語能力が不十分な問題、3点目は経済的な問題で、就学援助が必要なケースがある。

―外国人児童の中では不就学の問題も深刻だ。

まず、親には保護者としての責任を持っていただきたい。日本国憲法26条には日本国民については、保護者が子どもを学校に通わせる義務が定められている。相手国政府にも責任を持っていただきたい。外国人労働者が来日した際、学校に行かせるためにはどういう手続きが必要なのかというアナウンスをして我が国に送り出していただきたい。もちろん、その手続きにおいて日本語が不自由な方は通訳が必要だし、学校に通ったとしても十分な日本語を話せない場合は、それぞれの教育委員会がサポートする責任がある。いずれにしても、相手国とわが国の信頼関係、話し合いが大切だと感じている。

―先日、東京都・十条の東京朝鮮中高級学校を訪問された感想を。

学校訪問としては2回目で、部活動を頑張っている生徒たちを激励にいった。サッカー部、ラグビー部、ボクシング部、舞踊部、ブラスバンド部、合唱部の生徒と交流した。人工芝になったグラウンドや、舞踊部の公演がすばらしかった。グラウンドを整備してから日本の学校も喜んで対外試合に訪れているそうで、地域の住民にも開放していると聞いた。
校長は、日本と朝鮮民主主義人民共和国の間に国交がない状態を国会議員としてどうにかしてほしい、拉致問題を早く解決してほしい、国交の話は政治家に委ねるしかないと切願されていた。厳しい学校運営についても切実なものがあり、学校が置かれた窮状を感じた。政府の立場からすれば外国人学校の問題に関しては国と国との信頼関係が大事だし、日朝の関係について言えば国交正常化が大前提で、さらにその前提は、拉致問題の解決だ。しかしながら、朝鮮学校に通っているのは、日本で社会人として成長していく子どもたちだ。だからこそ、日常の活動をできるだけ応援できればと思い様子を見に行った。
 陸上部員の生徒からは全国大会には出られるのに都大会に出られない現状を、改善して欲しいという要望も聞いたので、すぐに対応した。
 朝鮮学校に韓国籍の子どもが多いのも事実で、親が民族教育をしっかりさせたいという気持ちもわかる。そういう中での対応が難しいと思っている。大学進学については長年の熱意により徐々に受け入れられるようになってきたが、その他の問題に関しても常に課題を持ちながら取り組んでいくしかない。

―外国人学校関係者からは現場を見てほしいという要望があった。

 中山大臣時にスクールミーティングということで、大臣、副大臣、政務官、局長、課長レベルを含めて300校を訪問した。政策を担当する大臣や幹部が直接現場に出かけて管理職、教職員、子どもたち、保護者、地域の方、教育委員会から話を聞いている。
政策を取り決めるうえで、教育現場との風通しの良い関係が大切だと思う。正直、文科省はサンドバッグ。こうしてほしい、ああしてほしい、という現場からの要望に耳を傾け対応していくことがサンドバッグとしての強みだと思っている。また、われわれ自身が説明能力を持って財務省や総務省の予算担当と話をすることが大切だ。その強い根拠となるのが「現場の声」。日常的に声を伺うことが大事だと思う。

―副大臣として遂げたい夢を聞かせほしい。

「教育力」の一義的なものは教師の力だと思う。
例えば今の子どもは携帯電話やコンピュータなどの情報通信機器に日常的に触れる環境にあるが、情報通信機器と人間が向き合う距離感が大切になってくる。60を定年だとすれば、大学を卒業して教師になってから38年教壇に立つわけで、時代に合わせて、子どもを取り巻く環境に合わせて教師に求められる資質も変わってくる。担任のクラスに外国人の子ども、親が離婚した子ども、障害児などを抱えることも予想され、教員はその都度問題を抱えざるをえない。教師の実力を高めるためには、採用、養成、研修の段階で不断の研鑽が必要だと感じている。

馳浩(はせ・ひろし)
1961年富山県生まれ。星稜高校でレスリングを始め、高校3年時に国体で優勝。1984年3月専修大学文学部卒業後、国語科教員として教鞭をとる。同年のロス五輪アマレス・グレコローマン90kg級に出場、85年に長州力率いるジャパンプロレスの門を叩きプロレスラーに転身。1995年に参院議員に初当選し自由民主党入党。2002年から衆院議員。03年9月から文部科学大臣政務官。05年11月から文部科学副大臣


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