日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

母校(長野朝鮮初中級学校)の話

2011-08-04 09:00:00 | (愛)のブログ
先日、ショッキングなニュースを後輩のツイッターで知りました。
なんと、私が青春時代をすごした大切な場所である、
長野朝鮮初中級学校の旧蟻ヶ崎校舎の2階あたりが火事になったという一報でした。
(※見出し写真は長野朝鮮初中級学校旧蟻ヶ崎校舎建設当時の航空写真)

すごくショックでした。
そのニュースを聞いたあと、
以前ブログでも紹介した長野朝鮮初中級学校の創立40周年記念写真集をまた一度見る機会があり、
何ともいいようのない、複雑な気持ちになり、知らずに涙がでていました。

私が長野初中に入学してから、よくきかされた言葉があります。
それは、「この大きな学校は(愛)のハラボジ・ハルモニたちが一生懸命、
力を合わせて、イチから建てたものなんだよ」という言葉。
小学1年生のころは、(ハルべたちがほんとにカナヅチを持ちながら、
トンテンカンテン、造ったのかな)と思っていましたが、
成長するにつれて、その意味と、その偉大さに気づかされました。

長野朝鮮初中級学校は1969年4月1日に開設、その当時は聖高原のホテルを賃借していました。
山の中にあったため、冬になると雪の積もる量がすごく、
寒風が隙間風として流れる中、教室で授業をし、寄宿舎生活を送っていたそうです。
そして71年には、生徒数急増のため、廃校になった学校校舎を借りうけて、授業をしていました。

蟻ヶ崎にある旧校舎は1971年5月29日に竣工されました。
県下の同胞たちが力をあわせ、
「知・徳・体」のそろった立派な朝鮮人として育つよう、
全国にある、日本の学校にも負けないくらい素晴らしい環境で子どもたちを学ばせようと、
鉄筋コンクリート3階建ての校舎と、食堂、120名収容暖房完備の寄宿舎、
広々とした運動場、体育館、そしてプールまで、ありとあらゆる環境を完備した、
まさに夢のような環境のウリ長野ハッキョを誕生させたのでした。
そんなことはなかなかできることではありません。

あの時代、1世たちはきっと、裕福になるために働いていたのではないと思います。
よくハラボジから聞かされた話。
植民地朝鮮だったため、もっと学校で学びたかったが、
自分たちは幼いころから働きにでなくてはならなかった。
名前を隠して、年齢を偽って。
そうしなくては生きていけなかったから…。

失われた朝鮮を取戻し、自分たちの子どもたち、そして孫たちには、
自分の頃はできなかった教育を思いきりさせてあげたい。
その一心で、そのためだけに、色んなものを犠牲にしてでも、
私たちに充分な教育をさせるため、汗水流して働いてきたのだと思います。
個人の財産のためではなく、
ウリ民族のかけがえのない子どもたちという、財産のために。

入学式初級部1年生が花吹雪の中を入場(1971年4月1日)
旧校舎の体育館とプール(建設当時)
旧校舎竣工を心から喜ぶ建設委員たち
※写真はすべて長野朝鮮初中級学校創立40周年記念写真集から

私は長野初中の蟻ヶ崎の旧校舎でおもいきり学びました。
1年生から中学3年生まで学んだ校舎、
休みを告げる鐘とともに駆け出した広々とした運動場、
温かい食事を頂いた全生徒の集まる食堂、
汗を流しながら舞踊の練習で過ごした体育館と舞踊室、
夏には喜んで入った50mプール、合宿で泊まった寄宿舎。
松本市内を眺望できる場所に建てられた学校で過ごした日々は、
かけがえのない大切な日々です。

様々な理由のため、長野初中は1999年に松本市島内に移転新築しました。
その学校も同胞たちが建てた立派な新築の学校です。
いまでも、生徒たちが長野の自然に囲まれて、のびのびと学校生活を送っています。
今年新1年生として入学したチョッカも、いまでは学校が楽しくてたまらないそうです。
エルファネットの学校紹介欄で長野初中の動画が紹介されているので、
そちらも併せて見てもらえればと思います。
http://www.elufa.net/

いまは、私たちの手から離れてしまった旧校舎ですが、
それでも1世たちががんばって建てた校舎に変わりはなく、かけがえのない思い出の地であって
火事になったと聞くとやるせない思いが湧きます。
今回、増築した木造部分の校舎2階が燃えたということです。
最近、近場でも不審火で火事になったということで、放火の疑いもあるということでした。
いたずらでそんなことをしたなら、ほんとに許せないことです。
もし、放火なら犯人が早く見つかってほしいです。

今回のことで、やはり母校の大切さというものを実感しました。
いまは自分が過ごした光景は写真のなかでしか見ることはできませんが、
1世が守り築いてきたものたちが、新たな地で受け継がれていることに希望を感じ、
これからは私たち世代が、支えていきたいと思いました。(愛)

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