日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

「入管の人権侵害にNO!」ー都内でアクション続く

2018-03-10 11:00:00 | (理)のブログ

  前回のブログで最後に紹介した二つの事柄についても、改めて紹介します。

 一つは、3月2日にFCCJ(公益財団法人 日本外国特派員協会)で開かれた、SYI(収容者友人有志一同)メンバーとメルバンさんの母による記者会見です。入管収容による難民家族の分離という人権侵害の問題について報告しました。

 幼い頃から日本に暮らしていたにも関わらず、昨年11月に突然なんの理由もなく東京入管に収容されてしまったクルド人女性のメルバンさん(22)。家族だけでなく、結婚して半年も経たない夫とも引き離され、劣悪な環境で激しい精神的・肉体的苦痛を受けながら日々を過ごしています。

 母親のハティジェ・トーマさんは、そんな娘の状況を涙ながらに話し、早く解放して欲しいと訴えました。

 会場には他のクルド人女性も来ていました。人数制限があり全員が壇上には登ることは叶わなかったものの、みな家族を不当に収容され不安に苛まれています。記者会見後には、自分の夫や子どもはどうなるのか、気持ちが伝わったのかと悲しくなって泣いている様子も見られました。しかし、会見ではSYIのメンバーがきちんと状況を説明。配布されたペーパーにも、証言が記録されていたのでここでシェアします。

 会見には、大橋毅弁護士(クルド難民弁護団、現在メルバンさんを支援している)が同席し、クルド人が難民認定を受けることの難しさについて解説しました。「日本の法務省は定期的にトルコの治安当局とテロ対策についての協議をしている。いわば法務省は、トルコに協力する立場におり、そちらが法務省のメインの仕事。トルコのやっていること(クルド人への迫害)を人権侵害としたら協力関係にヒビが入る。もし法務省と独立した機関が難民の認定をしていたら変わるかもしれない」。
 個々人の人権は国同士のエゴによって見て見ぬふりをされているということでしょうか。人道的な観点で見て守られるべき人たちが、政治によって立場を左右されている。簡単には救済できない現状をのべました。

  

 もう一つは、3月7日の19時から渋谷駅前で行われたスタンディングデモについて。

 インターネットやSNSでメルバンさんのことを知った市民たちが、問題意識を共有してスタンディングデモを決行。#FREEMEHRIBANのハッシュタグを拡散してツイッター上で賛同者を募り、当日は40人ほどが集まりました。

 この問題について、自身も初めて知ったという方は、「知った上でこんな問題をスルーしていくのは異常だし、みんなの力で『おかしいよね』って言っていかないと、苦しめられる人がもっと増えていく。入管も人権侵害って分かっているし、広まるのを恐れていると思います。だからどんどん私たちが広めていかないと。『人権侵害にNO』という、社会的な圧力の一つになれば」と呼びかけました。
 また、別の方は入管で起こっていることについて歩行者たちに解説したあと、「この問題はまだ多くの人に知られていません。無関心だからか、単純に知らなかったからか、知っていても変わるはずないと思っているからか、メルバンさんがこうなっているのは、私たちの無関心、あるいは諦めではないでしょうか? 私たちはもう無関心でいるのはやめましょう」と訴えました。

 このスタンディングデモは市民団体ではなく、個人が集まって実行したもの。パニック障害を持っているのに入管に閉じ込められているメルバンさんのことを知り、自身もパニック障害を持っている方が共感から始めたアクションだといいます。
 「2週間前に入管に電話もしてみた。待遇をよくしてあげてという気持ちで言ったら、『私たちはやることやってますので。ブログやSNSを信用しないでください』という返事が返ってきた。腹が立って押し問答になったら、『もう切っていいですか?』といわれて、最後まで態度が冷たくてすごく腹が立った」
 いてもたってもいられず、ツイッターで抗議の旨を呟いたところ反応が多く、個人的につながりのある4人と一緒に準備を進めました。

 自発的にこのような動きが起こるのはすごいことだなと感じました。ネット署名()も続いており、もうすぐ1500人を達成しそうです。世論がもっと広がり、メルバンさんだけでなく、不当収容で苦しんでいる人たちとその家族が、一刻も早く安心した生活を送れるようになればと願います。

 ただ私は個人的に、この期間に感じることがあったのでそれも書いておこうと思います。それは、入管の問題について話す時になぜか「北朝鮮」というワードを持ち出す人がちょいちょいいることの違和感です(私が出会った支援者の中にはもちろんいませんでした)。

 「こんな人権侵害を野放しにして、政治家のやっていることは北朝鮮と同じだな」

 「入管の問題は本当に許せないと思うよ。あれはね、北朝鮮とおんなじことしてんだ」

 ひとつはSNSで流れてきた言葉、もうひとつは渋谷でのスタンディングデモを見ている時、歩行者からかけられた言葉です。背筋が凍りました。なにをもって「北朝鮮」という言葉を使うに至ったのか、なにを指して「入管の問題」とイコールに語っているのか、本当に分かりません。ニュースや世間が言っていることを疑問なく自分の言葉にしている無知な人の偏見による断言とはとても有害なものだと改めて実感しました。自分が差別や憎悪の再生産に加担しておいて、人権侵害を語るのはどうなのでしょう。
 私も朝鮮に行ったのは3回だけで、国内事情に精通しているわけではありません。しかし少なくともこの人たちは、具体的なイメージを持って言っているわけではないでしょう。入管の問題を追いながら、意図せず日本社会に蔓延するもう一つの病を目撃しました。(理)

3月12日(月)13時には東京入管で抗議・激励・面会アクションがあります。
●第33回 東京入国管理局での抗議・激励・面会アクション→https://pinkydra.exblog.jp/27120039/


 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。