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「闘いこそが私たちの未来」―九州無償化裁判、報告集会

2019-03-15 15:00:00 | (理)のブログ

 昨日の記者会見終了後、18時半から北九州市立商工貿易会館で行われた報告集会には、裁判所に集まった人々のほか、仕事を終えて駆けつけた同胞や日本人支援者の姿も新たに見られました。



 集会に先立って、九州中高の朴広赫教務部長が緊急の呼びかけをしました。



 「皆さんにどうしても伝えたいことがある。今週月曜日の朝8時半頃、同校最寄りの折尾駅で日本第一党が“スピーチ”をして、女子生徒に向かって『朝鮮人は帰れ』といった暴言を吐いた。話を聞いて折尾駅に駆けつけたが、もう街宣は終わった後だった。その場にたくさん警察がいたので『私たちの生徒に被害があったらどうするのか』と抗議したが、『かれらはいちおう道路使用許可をもらっているから自分たちはトラブルがないように見ている』という返答だった。インターネットでその時の動画を見たが我慢できなかった。ちょうど当日は東日本大震災が起こった3月11日だったのだが、内容の中に『震災で2万人が亡くなったとき、朝鮮人は横断幕を揚げてお祝いをした』というような作り話まで出している。私たちの同胞も震災でたくさん犠牲になった。また、女子生徒を指して『あの子たちを見て下さい、以前はチマチョゴリを着ていたけど、自分たちがこういう活動をするから今は着れなくなった』と堂々と言っていた。本当に許せない。また、折尾には朝鮮人がたくさんいるから潰さないといけないとも言っている。目と鼻の先でそういうことがあった。いまも無言電話や嫌がらせの電話が続いている。私たちは子どもたちに少しの被害も加えられないように守らないといけない。子どもたちが日本社会で朝鮮人として堂々と学び、好きなことができるようにこれからも支援をお願いします」



 報告集会ではまず、金敏寛弁護士が地裁判決の結果を伝え、この間、裁判支援運動に尽力してくれた人々に改めて感謝の意と、控訴審への意欲を伝えました。



 続いて、九州無償化弁護団の朴憲浩弁護士が判決の分析報告をしました。朴弁護士は地裁判決の内容について、「端的に言うと非常に不誠実だしとても空虚」と感想をのべたあと、記者会見で言及された問題点について再び説明しました。
 「裁判所は公安調査庁の報告などをとても重視し、それを教育に持ち込んでしまっている。つまり国から目をつけられたらなにもできなくなってしまう、公安が目をつけた対象であれば教育上の不利益を科してしまってもいいというような判断が今後も持ち込まれる可能性が出てしまっている。それが怖い。在日朝鮮人やその他のマイノリティもそうだが、差別されたらそのままどんどん不利益を科されてしまう状況を許してしまう判決だと思う。本来、その流れに釘を刺して流れを止めるのが裁判所の役割だと思うが、それができなかった」。朴弁護士は「めげずに、諦めずに、より怒りを込めて正しいことを言っていく」と言葉を強めました。

 各地からもたくさんの支援者が駆けつけました。はじめに無償化裁判を行っている東京、愛知、大阪、広島から連帯のあいさつがあり、それぞれの経験を共有しながら九州無償化裁判に携わってきたすべての人たちを激励しました。









 あいさつのあと、九州朝高生たちが公演を披露しました。





 生徒たちは、先代たちによる民族教育を守るための闘いを、次は自分たちが継いでいくと決意をアピール。

 「この闘いこそが、私たちの未来だから」―。



 裁判所の前で悲痛に泣き叫んでいた子どもたちが笑顔で希望を語るようすに、再び涙する人もいました。



 アピールはまだまだ続きます。舞台には九州中高オモニ会の代表たちが登壇。福岡県下にあるすべての朝鮮学校のオモニ会の力を借りて製作してきた折り紙チマチョゴリを紹介しました。判決の日を迎えるまでにオモニたちの心を一つにして、必ず勝訴を獲得したいという願いを込めたそうです。



 「学生のみなさん、堂々と胸を張りましょう。この6年間のあなたたちの闘いが、あなたたちのありのままの姿が、ウリハッキョを取り巻く環境を間違いなく大きく変えてきました」。梁敬順会長は力強い言葉で子どもたちを励ましました。



 次に留学同九州が発言。九州中高57期卒業生の李智香さんは、「私が初めて裁判を傍聴したのが高1のとき。それから6年が経った今もなお日本政府は朝鮮学校への差別を続けている。このような状況の中で、子どもたちが在日朝鮮人としての誇りを持って生きていけるようにするためには、私たちが声を上げて日本政府と闘っていかなければならない。在日朝鮮人の権利の中で闘わずに得たものはなにもない。無償化適用の権利も運動を通して勝ち取りましょう」と呼びかけた。



 2014年に九州中高を卒業し、同じく留学同九州で活動する金梨美さんも発言。
 「今日のこの日を迎えるにあたって、私は4.24教育闘争を思い浮かべた。あれから70年が経った今、日本はなにが変わったでしょうか。チマチョゴリが切り裂かれ、ヘイトスピーチという言葉の暴力を浴びせられ、そして今日、高校無償化制度から私たちは除外されました。私たちは人として生きる権利を奪われ続けています。司法でさえも、私たちを守ってくれることはありませんでした。私たちにはもう闘うことしか残ってないと思ってます。私たちの権利は私たちで勝ち取るしかありません。先祖たちが命をかけて守ってくれたこの場所を、これからは私たちが守っていくべきだと思います。もう二度と、未来を生きる子どもたちが悲しくて痛い思いをしなくて済むよう、涙を流さなくて済むよう、次は私たちがこの学校、そして在日朝鮮人と同胞社会を守っていきます」。



 またこの日、韓国から駆けつけた同胞たちも発言。



 「朝鮮学校と共にする市民の会」のリ・ヨンハク常任代表は、「この裁判が終わりではないことを皆さん分かっているでしょう。いまだ行く道は遠く、しかしこの道でこそ必ず正義が勝つということを示さなければなりません。皆さん悲痛な心情でしょうがしばらく呼吸を整えてから立ち上がり、目をしっかりと開き進みましょう」と温かい励ましの言葉を送りました。

 

 「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」のソン・ミヒ共同代表は、「皆さんが始めた東京の『金曜行動』、大阪の『火曜行動』を引き継いで、ソウル大使館前で始めた『金曜行動』も先週210回目を越え、5年目を迎えようとしています。この力が拡大し、統一の歌になり、平和の踊りとなるでしょう。南、北、海外、全民族の力を合わせれば必ず勝ちます。諦めず最後まで闘い、必ず勝ちましょう!」と力強く発言しました。



 「キョレハナ」の教育局長を務めるシン・ミリョンさんは、「恥ずかしながら、初めて無償化裁判の場に来た。人類史で最も残虐な民族差別、子どもたちへの酷い差別を目の当たりにし、悔しくてたまらない。民族の自尊心を守るために闘う同胞たち、そして支援者たちに出会い、申し訳なかった一方で、これから大きく連帯していかなければならないと感じた。闘争の一歩一歩がどれだけ苦しいものなのか想像もできないが、この闘争が一歩一歩進んでいくごとに連帯と指示が拡大していくと確信している。遅れたが、キョレハナもその歩みに、誠実に一生懸命、連帯していきたい」と話しました。



 「モンダンヨンピル」の事務総長を務めるキム・ミョンジュン監督は、「2011年3月、東京の代々木公園で、朝鮮学校を無償化制度に適用するよう求める集会がありました。そのとき韓国からは自分ひとりが参加しました。2019年、8年が経ちました。それも東京でなく九州に。韓国から何人が来ましたか? 韓国ではいま、何千人もの人が朝鮮学校とそれを取り巻く問題に関心を持っています。KBSでも紹介されました。自分たちの同胞が日本でどれだけ差別を受けているのか、韓国の人たちもだんだん知ってきている。もう決して孤独ではありません。私は2002年3月に初めて日本に来た時はひとりでしたが、いま見て下さい。友人たちがこんなにもたくさんいます。闘いというのは、だれが勝った負けたというような結果が重要なのではありません。過程です。どれだけ仲間を作れたかが重要です。皆さんしんどいですが、明日からまた笑って! 頑張っていきましょう」と明るいエールを送りました。



 続いて、全国オモニ会代表の一員として登壇した京都朝鮮中高級学校オモニ会の朴錦淑会長が発言しました。
 「京都は毎回、無償化裁判に足を運んでいます。京都では高校無償化裁判をしていないのに、どうしてと聞かれることがあります。京都では10年前に、京都朝鮮初級学校が差別主義者に襲撃される事件が起こりました。私はこの事件と無償化除外の問題はつながっていると思う。先日の3月9日、襲撃事件を“記念”するという趣旨で京都の繁華街で当時の主犯が告知をして堂々と、警察の保護を受けながらヘイトスピーチを垂れ流しました。そういうことが許されてしまいました。無償化制度からの朝鮮学校除外は官製ヘイトです。それが、かれらをバックアップしてこの問題を起こしてしまった。だから二つはつながっていると思います。また、裁判というのはすべての労力を消耗するような本当に辛く苦しい闘い。それを自分の目で見届けて後世の子どもたちに伝えないといけないという思いもある。私たちがいま持っている権利はすべて勝ち取ったもの。高校無償化の権利も私たちが闘って勝ち取ったんだということ、そして闘ってきた人たちの思いや辛さや姿を、きちんと自分の言葉で語れるようにするために参加している。また自身も親として、九州中高の子どもたちに、『全国のオモニたちが応援している、力になっている』ということを伝えに来た。今日は負けたが自分の心に矢印を向けないで、前を向いて堂々と生きていってほしい。そして九州中高のオモニたち。ここに全国各地からオモニたちが来ています。子どもたちが泣いてる姿を見るのは本当に苦しいと思います。だけど、子どもたちのためにも大人が最後までやりきりましょう。まだまだ長く続いていく闘いではありますが、この裁判が求心力となって無償化の闘いが続いていると思います。全国のオモニたち、そして同胞たちが一緒になって連帯しているのでともに最後まで頑張りましょう!」
 子どもたち、そして保護者たちの気持ちに寄り添ったメッセージでした。



 その後、「朝鮮学校無償化実現・福岡連絡協議会」の中村元氣代表が声明文を共有しました。
 「本日のこの『不当判決』を絶対に認めません。そして、決してひるむことなく生徒たちを励ましながら、今後とも民族教育の擁護、子どもたちの学ぶ権利の保障を求め、全国の支援者とともに、勝利の日までたたかい抜くことを誓います」
 また、「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」はじめ、全国各地から応援のメッセージが寄せられていることを伝えました。



 次いで、服部弘昭弁護団長が改めて弁護団声明を朗読しました。



 「このような不当な判決が出てしまいましたが、諦めずに最後まで闘い続けましょう!」。報告集会の最後に、福岡朝鮮歌舞団が前に立ち、参加者全員で「声よ集まれ、歌となれ」を合唱しました。



 日本の差別政策に怒りを持って裁判闘争を続けてきた同胞・支援者たち。しかし司法が機能しない様までをも目の当たりにして、無力感に包まれてしまうこともあったでしょう。一方で登壇者も話していたように、闘いを続けてきた過程で確実に支援の輪は広がってきました。新しい言葉、新しい力が生まれています。なによりも、互いにしんどいけれど踏ん張ろうと励まし合える仲間がたくさんいることは大きな力になると、今回の報告集会を見ながら感じました。
 裁判はまだまだこれから。九州の控訴審の予定、各地での進行など、今後も状況が進み次第イオで報じていきます。(理)

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