日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

子どもは人質にあらず、補助金停止は国際条約違反

2016-03-11 09:00:00 | (瑛)のブログ
 補助金停止-。来春から学費を上げざるをえない朝鮮学校があるのは、このことも背景にある。

 生活を脅かす問題だけにスルーできないので、書きます。
 
 与党・自民党が拉致問題対策本部の会合(2月17日)で、地方自治体が朝鮮学校に支給する補助金を廃止するよう求めていく考えを示したことを受け、馳浩文部科学大臣は近く各自治体に通知を出すという。馳大臣は2月19日、閣議後の会見で、「補助金の公益性や、その適性な執行という観点から通知の発表を含めて必要な対応を検討している」と語った。すでに自民党は、昨年6月に出した対朝鮮制裁に関する提言で、補助金を出している自治体に「全面停止を強く指導・助言する」としていたが、着々と進んでいるのだろう。

 政府が「差別をしていいよ」、とお墨付きを与えるから名古屋市のような動きが出てくる。

 名古屋市の河村たけし市長は3月4日の市議会で、市内の朝鮮学校に支給している補助金を停止する意向を示した。9日には、名古屋市庁前で朝鮮学校保護者や日本人支援者たちが、雨のなか、再考を求める900枚のビラを配った。

「子どもたちが名古屋で生まれ育ったことを誇れるようにしましょう」「みなさんの税金が、こどもたちの笑顔をつくっています」「市長の発言一つで子どもたちが脅威にさらされることを知ってほしい」―市庁前で訴えたオモニたちや日本市民の言葉に、河村市長には考えなおしてほしい。
 (※以下は、要請を行った市民の投稿写真から)





 2010年に日本政府が高校無償化制度から朝鮮学校を排除してからというものの、補助金を止める自治体は増えるばかり。
 東京都、埼玉県、大阪府、宮城県、千葉県、広島県、新潟県、山口県…。

 しかし、国連は、日本政府にこれはダメですよ、と何度も勧告を出している。

 国連・人種差別撤廃委員会が2014年9月に日本政府に出した勧告は以下。

 朝鮮学校が「高校授業料就学支援金」制度の恩恵を受けることができること、および、地方自治体に対して、朝鮮学校への補助金の支給を再開しまたは維持するよう促すことを締約国に奨励する。

 朝鮮学校が自治体の補助金を受けることができる法的根拠については過去のブログで書いたので割愛する。
http://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/c49cc88a4a42f22dd7c0140ab61ebde2

 在日朝鮮人を人質にとって、再入国許可を与えないと脅しをかけたり、罪のない子どもたちに仇討ちをするのはやめてほしい!

 2月中旬、東京都は朝鮮学校への補助金を止めるために作成した悪意の調査報告書を都のホームページから削除した。

 ホームページをリニューアルするから、という理由だったが、私はそう思わない。朝鮮学校関係者の抗議を無視できなかったのだ。

 9日、名古屋市長前に集まった人たちを見て改めて思った。

 3月2日には、無償化連絡会の長谷川和男さんらが、東京・永田町の自民党本部を訪れ、要請を行った。

 自治体への要請に必要なのは、言葉の武器だ。

参考になるので、このブログで紹介したい。(瑛)


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自由民主党本部
安倍晋三総裁様
谷垣禎一幹事長様
                   要請書

 朝鮮学校は、日本の植民地から朝鮮が解放されるや否や、それまで許されなかった自分たちの民族の言葉や文化を子どもたちに継承させることができる学びの場を保障しようとして、在日朝鮮人が自らの手で、日本各地に立ち上げ、そして様々な困難を乗り越え、今日まで運営してきたものです。

 民族的マイノリティが自民族の文化や歴史を学ぶことは当然の権利ゆえに、これを否定したり、不平等に扱ったりするような行為は許されないと、日本が加入している国際人権規約や人種差別撤廃条約などに明確に規定されています。日本国憲法の第98条2項に定める条約遵守義務を挙げるまでもなく、日本の政府、国会は、これらの国際人権諸条約を遵守する義務を負っています。

 しかるに、現在、日本では、いわゆる「高校無償化」制度からの朝鮮学校排除がなされ、一部の地方自治体が、日本の学校と比べ少額でありながらも、続けられてきた補助金支給を停止するという事態が起こっています。そしてこれらの事態を知るところとなった国連・社会権規約委員会は、2013年、日本政府に対し、高校無償化における朝鮮学校排除は「差別である」として、その適用を求める勧告を出しました。その審査においては、日本政府代表の「拉致問題に進展がない」という説明は、「朝鮮学校に通っている子どもたちとはなんの関係もない」「排除する理由にはならない」と、委員により一蹴されるという一幕もありました。また2014年、今度は国連・人種差別撤廃委員会で、日本政府に対し、高校無償化からの排除、そして自治体の補助金削減の是正を求める強い勧告が出されました。
 拉致問題等の政治・外交問題に絡めて朝鮮学校への差別処遇を行うことは、まさに国際的にも全く理解されない条約違反の行為なのです。

 「Students are not political pawns(生徒は政治的な人質ではない)」これは、2013年3月末に町田市が、新入生に配布されてきた防犯ベルを朝鮮学校児童だけ排除すると一度決めたものの多くの批判にさらされ数日後には排除方針を撤回するという事件があった直後のジャパンタイムズの社説の一節です(4月12日)。
日米開戦後にアメリカやカナダでは、日系人の学校が閉鎖され、そして強制収容が行われました。たとえ戦争状態であってもこれらの行為が誤りであったと、1980年代後半、両国はこれを謝罪し、補償(賠償)したことは有名な話です。この歴史に学ぶならば、国と国との対立を理由とした人権侵害は許されないことです。
在日朝鮮人の子どもが民族教育を受けるためになくてはならない朝鮮学校を兵糧攻めにし、廃校に追い込もうとするかのような行為は、いずれは大きな過ちという審判を受けざるをえないでしょう。

 2009年12月、京都の朝鮮学校の前で、「キムチくさい」「日本から叩き出せ」「スパイの子」「拉致」云々とありとあらゆる罵詈雑言を行った在特会(在日特権を許さない市民の会)らは刑事裁判では有罪判決、民事裁判でも既に高額の損害賠償等が確定しています。
 拉致問題などを「理由」に在日朝鮮人や朝鮮学校を攻撃対象にするというロジックは、こうした違法なヘイトスピーチとまさに重なり合うものです。

私たちは、地方自治体の朝鮮学校への補助金を全面停止することを求める貴党の行為を、直ちに中止すること求めます。また政権与党の責任において、政府が国連勧告に従い、政府が「高校無償化」制度における朝鮮学校排除を止め、地方自治体に補助金凍結を解除するよう働きかけることを強く求めます。

 2016年3月2日

 「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会
 東京朝鮮高校生裁判を支援する会
 朝鮮学校への公的助成を求める連絡会・東京
 

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