満月と黒猫日記

わたくし黒猫ブランカのデカダン酔いしれた暮らしぶりのレポートです。白い壁に「墜天使」って書いたり書かなかったり。

『おまかせハウスの人々』

2006-01-22 14:39:12 | 

小説の感想です。

『おまかせハウスの人々』(菅浩江著、講談社)

今よりちょっと未来、科学技術が進み、ロボットやナノテクが一般化しようかという時代を舞台にしたSF短編集です。6編収録。
『メルサスの少年』『そばかすのフィギュア』で星雲賞を受賞した作家さんですが、ここ数年は微妙にリアルな作品と、デビュー当時からの優しげな視線を持つ作品とを発表している気がします。
SFですがそれほど難しい設定はないのでSFを読まない人も普通に読めます。

今回の短編集は、とにかく主人公たちが身近にいそうでリアル(笑)。主人公たちの、ものすごく不幸ではないけれど現状に不満で閉塞感を感じている様子が妙にリアルです。『純也の事例』は子育てならぬロボット育てに悩むお母さんの話だし、『麦笛紀行』はいまひとつ相手の肚が読めず出世しないサラリーマンが読心機械を使う話だし、『ナノマシン・ソリチュード』と『鮮やかなあの色を』は閉塞感を抱えたOLさんの話だし、『フード病』は食品衛生基準信者の義理姉と主婦のドロドロ話だし(笑)、『おまかせハウスの人々』は家事いらずのオールオートの家の話だし。どれも近い未来にあってもおかしくない技術です。が、そこに暮らす人々の心のありようは今とそう変わりないわけで・・・。う~ん、進化したからと言って便利になるわけじゃないのね、淋しさを埋めるというのはまた別問題なのね、といった感じで唸らされます。
全部面白かったですが、『フード病』は完全にホラーだと思いました。義理姉も怖いけど主婦も怖ッ・・・!でもおすすめ(笑)。