ギャラリーと図書室の一隅で

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後藤信子さんの舞台美術─「道具たちの同窓会」

2015年03月23日 | 展覧会より


 りゅーとぴあ4階ギャラリーで開催されている後藤信子さんの「道具たちの同窓会」展を見た。後藤さんとは、2009年游文舎スタッフを中心とした実行委員会が携わり、柏崎で復活初演した古浄瑠璃「越後國柏崎弘知法印御伝記」の越後猿八座のメンバーとして知り合った。人形遣いだけでなく、小道具も担当されていた。人形遣いの中心を担った西橋八郎兵衛さんをして「そこに行けば何でも揃っている」と言わしめたアトリエ・ロマネスク工房で、創作人形作家、舞台美術家として活躍されていたのだった。
 「弘知法印御伝記」では、主人公・弘友(後の弘知法印)の妻、柳の前がいまわの際に産み落とした嬰児が、ぐにゃぐにゃで、生っぽくて、それでいてユーモラスで、決して「玉のような赤ちゃん」でなかったことが印象的だった。
 その後北方文化博物館で創作人形展「鬼子母神」を見る機会があった。案の定、可愛い人形たちではなかった。意地悪で、不気味で、妖しくて、どこか愛嬌のある人形たちが斜めの視線を向けてくる。見る人の心をちくちく刺激する。仮面を付けたら、仮面の“人格”が乗り移ってきそうだ。こんなに強烈な個性を持った人形たちを生み出し続ける後藤さんの想像力とエネルギーってすごい、と思ったものだ。
 今展では、舞台で使われた人形や道具や衣装などが大集合した。小道具とはいえ、空間展示のスケールは大きい。舞台の復元ではなく、実際の舞台を見ていなかったのが悔やまれるが、生き生きとした表情の人形と、対照的に虚ろな仮面や機械のような手を無数に並べたインスタレーション的な展示が圧巻だった。自分なりの物語がむくむくと立ち上がってくる。APPRICOTなど、キッズコースのものも多く手がけるが、仮面たちの大きくえぐられた眼窩は、大人の心をも取り込んでいく。舞台美術という制約の中でも、なお一貫した主張を持つ“役者”の魂を持つ道具たちだ。3月25日まで。(霜田文子)

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