60歳からの眼差し

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

認知症

2015年11月20日 08時21分23秒 | 日記
 高齢者が増えるからか、近年のTVに健康番組が多くなったように思う。ゴールデンタイムに各局1つや2つは1時間程度の番組を持っている。ある番組では複数のタレントが健康診断を受け、何人かに深刻な病気の可能性が見つかる。そこでカメラはタレントに密着し生活習慣を明らかにする。そして医者がその生活習慣の問題点と病気とを関連付け、お定まりの生活習慣や食生活の改善を促し、最後に簡単な健康体操を紹介して終わる。
 
 各局どれも似たり寄ったりの番組構成である。視聴者の病気に対する心配を煽り、健康を維持するには食生活の改善と運動が重要だと言う。確かに因果関係は多いにあるのだろう。しかしあまりにもお手軽で安直な構成は、説得力がなく少しも頭に残らない。それは喫煙者に煙草の害を並べ立て、だから喫煙は止めた方が良い、と言っているようなのもである。喫煙者だって煙草が健康に悪いことは充分に承知している。しかしそれがなかな止められないから困っている。生活習慣病も同じである。重大な疾患が見つかれば真剣に取り組むが、そうでなければ人はなかなか意識は向かないものである。
 
 そんな中で高齢者にとって共通の心配事は「認知症」であろう。それは歳を取るにつれ誰でもが記憶力が衰え、物忘れが激しくなったというという実感があるからである。アッルハイマーなどの認知症になれば脳が萎縮し認知機能が衰え、しだいに自分をコントロールできなくなる。そのことで家族や周りに迷惑をかけてしまう。周囲でそんな話を数多く聞くにつれ、出来ればそんなことにはなりたくない。これは我々世代では切実な問題である。
 
 先週NHKスペシャルの「認知症革命」という番組を見た。その第一回のテーマは「進歩が目覚しい認知症予防の最前線」というものである。民放の健康番組と違って、認知症について掘り下げた取材で説得力があった。以下自分の記憶のために、その内容を整理してみた。
 
 正常な状態から認知症になるまでの間に、MCI(軽度認知障害)という段階がある。このMCIの段階から認知症になる人が5割、そのままMCIに留まる人が4割、1割は正常に戻るということである。ではMCIで留まったり正常に戻った人のどんな生活態度が、認知症予防に効果をもたらしたのか、それが解明できれば認知症予防に繋がるというものである。
 
 我々が手足を動かして行動したり考えたりすることが出来るのは、脳の中で神経細胞同士がさまざまなネットワークを組むことで行なわれる。MCIの人はこのネットワークに異変が起き、正常な人に比べて脳内ネットワークの繋がりが弱まってくる。その弱まりを見つけるもっとも簡単な方法が「歩行」だそうである。正常な人と比べてみると、MCIの疑いがある人は足腰が悪いわけではなにのに、歩く早さが遅くなる。さらに歩幅が狭くなり、足の裏に掛かる圧力が一定でなく、ふらつくようになる。
 
 我々が歩いているときは脳内では視覚や空間認識に関わるネットワークが働き、刻々と変化する周囲の状況を瞬時に判断している。さらにバランスをとるときは体の感覚や運動に関わる脳内ネットワークが働く。こうしたたくさんのネットワークが同時に働くからこそ、歩くことが出来る。しかしMCIの人はこれが弱まるためにバランスが不安定になり、歩幅も狭く歩くのも遅くなる。したがってこの歩行状況を見ればMCIか否かがわかると言う。基準として、普通に歩いて秒速80cm(時速2.9km)以下になると、MCIのリスクは高いという。
 
 その他の症状として
①外出するのが面倒になる。
②外出時の服装に気を使わなくなる。
③同じことを何回も話すことが増えたと言われる。
④小銭での計算が面倒で、お札で払うようになる。
⑤手の込んだ料理をつくらなくなった。
⑥味付けが変わったといわれる。
⑦車をこすることが増えた。
 この中で3項目以上当てはまれば専門医に相談した方が良い。

 
 では何が原因で脳内ネットワークが衰えるのか?

 脳内の神経細胞は、周りの血管から栄養と酸素を貰って活動している。最近注目されている異常の一つが、細い血管が脆くなって起こるわずかな出血「微小出血」である。これにより周りの神経細胞が次々と死んで、ネットワークが傷ついてしまう。認知症まで進行する人は、この微小出血が多く見つかるようになるという。したがって血管の状態を良くして、神経細胞が死ぬのを防ぐことが出来れば、衰えた脳のネットワークを回復させることができることになる。
 そして最近その効果的な方法が見つかった。それは少し息がはずむ程度の早歩きを1回1時間、週3回。たったそれだけで脳の血管や細胞に驚くべき変化が起こることが各国の研究機関からの報告で明らかになった。
 
 そしてさらに、早歩きにいくつかのことを組み合わせると認知症の予防に、より高い効果が得られることが明らかになったと言う。
 
①早歩きなどの有酸素運動。週三回、1日30分~1時間程度
②軽い筋肉トレーニング
③食生活の改善、塩分・脂肪を控え、野菜・果物・魚などを積極的にとる
④記憶力のトレーニング、週3回、10分程度
⑤血圧管理
                            以上
 
 番組の中で、老婦人が人通りの多い歩道を歩いている。しかし前からくる大勢の人に戸惑い、歩行を緩めやがて止ってしまう。若いときであれば、人の流れを予知し、自分の歩く方向やスピードを瞬時に判断し調整できただろう。しかしネットワークが傷つき弱ってくると、それが出来なくなってくるのである。私は朝晩池袋駅の地下のコーンコースを、西武線と山手線を乗り換えるために歩いている。西武線、地下鉄、JR、東武線、それぞれから降りた乗客が無秩序に錯綜する。渋谷のスクランブ交差点を歩いているようである。最近は人に接触することもあり、その人ごみの中を歩くことが億劫だと感じるようになってきた。
 
 またコンビニなどでの買い物で金銭のミスが時々起こる。例えばレジで620円と言われ、私は財布から500円玉を出してお釣りを待っている。店員は怪訝な顔をする。それを見てハッと気づいて1000円札をだす。無意識に1000円と500円とを間違えたのである。またある時は、車で出かけようと家のキーと車のキーをポケットに入れ外にでる。家の鍵を掛け、車に行ってドアーを開けようとポケットからキーを出すと、全く違うものが入っている。
 
 この歳になってきて、今まででは考えられないようなミスが数多く起こるようになってきた。これはたぶん自分の脳の中にも微小出血が起こり、脳のネットワークが傷ついてきたのかもしれない。「さてどうする?」、「とりあえずは早歩きから始めよう」。今週から通勤時は番組で言っていたように、歩幅を5cm広げるように意識し、さらに早足で歩くようにした。これで少しは認知症の予防になれば良いのだが、・・・・・







 

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