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60歳からの眼差し

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

風邪とストレス

2014年02月07日 08時58分15秒 | Weblog
 20数年ぶりに風邪をひいたようである。先週末、東京は最高気温16度と3月下旬の気温であった。私は天気予報に合わせて服装を変えるほど細やかでなく、普段通りの冬支度で出勤した。しかしやはり気温は上がり電車に乗ったり、街中を歩いていると汗ばんでしまう。そして汗が引き体が冷えてしまうと、肩や背中に寒気を感じてくる。これは小さい頃からの私の風邪をひく定型パターンである。案の定、翌日の土曜日になって少し咽が痛くなり鼻水が出てくるようになった。

 子供の頃はしょっちゅう扁桃腺を腫らし学校を休んでいた。「寒い!」と母に訴えると、母は私の額に手を当て熱を確認し、直ぐに布団に寝かせつける。翌朝、近所の友達の家に行って学校を休む旨の伝言を頼み、それから私を一番近くにある町医者に連れて行く。病院の待合室で、渡された体温計で熱を測りながら順番を待っていると、やがて名前を呼ばれ診察室に入る。母に状況を聞いた医者は、まず私の口を開けさせ咽の奥を見る。次に下まぶたをひっくり返して観察し、それから胸と背中に聴診器を当てる。最後に左手で私の体に触れ、右手でポンポンと打診して診察は終わりである。「扁桃腺が腫れて真っ赤だね。咽に薬を塗っておこう」。老医者はルゴール液を付けた綿棒でサッと咽の奥に薬を塗る。思わず吐き気を感じ「オエッ」となって涙が出てくる。診察が終わり、しばらく待合室で待っていると、右手に注射器を掲げて看護婦さんが現れる。母にズボンを脱がされ、衆人監視の中でお尻に注射をうたれるのである。これは子供の頃の年中行事で、何十回と繰り返されたように覚えている。

 この扁桃腺炎は大人になっても続き、年に2、3回は必ず会社を休んでいた。ある時医者に、「この体質、何とかならないでしょうか?」と相談したことがある。その時医者は、「扁桃腺に常在菌が巣作っているのでしょう。人は体力が落ちてくると免疫力も落ち、その菌が活発化して扁桃腺が炎症を起こしてしまのです。だからこの状態を変えるには、体力をつけるか、扁桃腺を切除するしかないでしょう。しかし扁桃腺はあなたの防御機能の最前線ですから、できれば取らない方が良いと思いますよ」、と言われたことがある。

 あんなに頻繁だった扁桃腺炎も四十半ばを過ぎたころからピタリと治まり、以来20数年、熱を出すことも会社を休むこともなくなった。振り返ってその要因を考えてみると、扁桃腺炎が治まった時期が以前勤めていた会社を辞めた時期とで符合するのである。では会社を変わったことで、病気の要因に何んらか変化があったかを考える。思いつく付くことは「ストレスの変化」である。

 サラリーマン時代と個人事業主では、同じストレスでもその質が違う。サラリーマンは人(会社)に使われることでのストレスが多いように思う。理不尽な扱い、人間関係の軋轢、いつも自分を押し殺さなければいけない状況、そんなことから発生するストレスである。当然個人で事業をやっていても多くのストレスは付いて回る。しかし、それは常に自分がリスクを負わなければいけないう自己責任の重さからのストレスである。その差は立場の違いにより、「人の判断でやらなければいけないか」、「自分の判断と責任でやるか」、という自由度の違いににあるように思うのである。

 ストレスが人の体に影響し、病気の大きな要因になっていることはよく言われていることである。不眠症、神経症に始まって腰痛、神経性胃炎、狭心症、ぜんそく、偏頭痛やリュウマチ、緑内障までありとあらゆる病気の要因の一つにストレスが関わってくる。「過度のストレスは免疫力を落とす」、これもよく言われていることである。私が頻繁に扁桃腺を腫らしていたのも、学校や職場でのストレスが主な原因だったのかもしれない。当時はまだストレスという概念が一般化していない時代で、精神的な苦痛や困難さをストレスとして認識はしてはいなかった。しかしそれは厳然としてあり、それが私の免疫力の低下に繋がり、頻繁に扁桃腺に現れていたのだろうと思うのである。

 今回の風邪は熱もなく、軽い咽の痛みと鼻水だけである。しかし万一インフルエンザだったらまずいと思い、今週月曜日に会社の近くの病院へ行ってきた。「扁桃腺が腫れていますね。扁桃腺から来る風邪の症状でしょう」ということで、風邪薬と鼻水を押さえる薬とを処方された。症状が出始めて今日で1週間になる。しかしまだ鼻声で少し咳き込むこともある。

 今回の扁桃腺炎、今まで抑えられていた扁桃腺に巣作る常在菌は、なぜ活発化したのだろう。多分それはストレスによる免疫力の低下が要因ではなく、年齢による体力の衰えが免疫力の低下に繋がっているように思うのである。なぜなら昔なら今回の症状なら3日で回復していたのに、回復が極端に遅くなっているからである。やはり年々歳々確実に体力は落ちていくのであろう。