あの熱狂はなんだったんだろう、とふと思う事柄は、年齢を経るに従って増えていく。
ゲーデルもアラン・ソーカルもそんなことを思わせる名前だ。
今回のこの本は、有名なゲーデルの不完全性定理について、ヒルベルトの数学論にたいする応答、と捉えてその数学史的な意義を捉え直してくれている一冊だ。
素人にとってはとても有り難い本だった。
私が若い頃、ゲーデルが話題になったことがあって、あの時の印象は、極めてざっくりと
「数学的には証明できないことがあるって証明されたんだって!?」
というものだった。
この本によれば、それは、実際には20世紀前半のヒルベルトという有名な(名前だけは聞いたことがある)数学者の数学論についての応答であって、だから
ゲーデルの「不完全性定理」は、数学的(数学ってどこにあるんだ?という問いは哲学ってどこにあるんだ?という問いと似てるね)不完全性定理(整数論)ではなく、ヒルベルトが数学を基礎づけようとした営みとしての数学論が不完全性だと証明したにすぎない……という、当たり前と言えば当たり前の話。
しかも、ゲーデルはヒルベルトの(数学を形式系としてとらえる)考え方自体の不可能性を証明したつもりはなかったのだとも。
改めて興味が湧いてきた。
数式を理解しようとは思わないけれど、証明と逆説(パラドックス)の関係には惹かれる。
図書館から本を借りると「出会い」が多くなって嬉しい限りだ。数学基礎論の話なんて買っては読まないもんねえ、なかなか。
かつてゲーデルの「不完全性定理」に興味のあった人には圧倒的にお勧めです。