龍の尾亭<survivalではなくlive>版

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週末はデカルトを読もう。

2013年07月06日 02時12分11秒 | 大震災の中で
大学入試の国語評論を読んでいると、もうここ20年ぐらい(小林秀雄が主役でなくなってから、といってもいい。今年センターでカムバックしましたけどね)、
「近代の見直し」
が定番だった。

(何を今更、と言われてしまうだろうか。でも、福島の原発事故とその後の経過は、本当に日本の「近代」ってなんだったんだろう、と考えさせられるのですよ。)

まあ、それは別としても、いわゆる「デカルト=ニュートン」的近代合理主義・科学主義の「限界」みたいな話は当然の前提になってきた。

でも、17世紀のスピノザ哲学に関心を持ち、その視点からデカルト・ホッブズを考え直そうとすると、これはこれでなかなか興味深いところがある。

まず、デカルトについて言えば、私の最大の関心事の一つである「神様問題」をもう一度ゆっくり考えてみるには、とりあえずデカルトを読み直してみる必要があるということだ。

次に、国家と権力の問題について考えるとき、ホッブズを抜きには考えられない、のだが、これはもう少し後の宿題。

いずれもスピノザが影響を受けた哲学者だ、ということが一番なんですが。

で、『方法序説』を先日手に取ってみたら、これが本当に読みやすい。
一般(当時のフランス語が読める女性まで対象として考えていたらしい)向けに書かれているため、「へー、そうなんだあ」と自習監督の1時間でおおかた読了してしまった。

これ、基本教養なんでしょうが、もちろん「基本教養書」なんてものを若い時に系統立てて読んだだりした経験、あるわけがないので、55歳にしてやっとぼちぼちそんなことをやり直しています。

老後の準備ですね(笑)。

調子にのって今晩は『省察』と『哲学原理』を。

もちろん、補助線は一年間講義を受けた國分功一郎氏の「スピノザ入門」。
この講座は、実のところデカルト入門でもあったのだと、改めてデカルトを読んでいて感じます。

福島大学の倫理の小野原先生が「スピノザって結局デカルトでしょ。どこが違うの?」と言っていた意味も分かってくる。

そういえば「近いから『違う!』ってなるんですよ」と國分せんせも言っていた。

デカルトのコギト論は「明晰判明」なモノを求めるという近代哲学の祖としてすばらしい成果だったが、それはまだ「途中だ」と國分せんせは言うのですね。

無限遡及を続けていくのではなく、「発生」を問うこと。
結果から原因を遡及して求める方法では、たどりつかないことがある。
そういうところからスピノザは自分の哲学を離陸させていった、と國分せんせは『知性改善論』を論じ、『デカルトの哲学原理』(スピノザ)を論じながら、あたかも『ドゥルーズの哲学原理』の中で、ドゥルーズが哲学者たちの思考=問いを限界まで押し広げていく(と國分センセが語る)ように、先生自身がスピノザのテキストの中を分け入っていくんですが、私はそこまではまだよく分かってはいません。

ここは、『スピノザの方法』の続編、國分功一郎の『エチカ』論を俟たねばなりませんね。
神様問題の扱い方です。
まあ、「神の存在証明なんてできっこないさ、いないんだからね」っていう、いわゆる我々の現代における常識からすれば、スコラもデカルトもライプニッツもスピノザも、まだ「進化」しておらず、神様なんてものにかかずらわっていた「時代の制約」の中にいた、とも言っていえないことはないけれど、それじゃたぶん端的につまらない。むしろ、なぜ1000年も1500年もそれをやり続けられたか、ってことの方が面白そうだ。

とにかくただ、デカルトが何と向き合っていたのか、どんな「問い」を問うていたのかを読んでみよう、という姿勢で読んでみると、意外に面白くなってきたのです。

(この、哲学は答えではなく問いを読むのだ、って感じは、『ドゥルーズの哲学原理』(國分功一郎)前半の肝、なんですが、とっても便利な「構え」だと思います。けっこう流用可能のような気がしますよ。)

できれば、デカルトの向き合っていた「問い」の対象を幾分かでも理解しつつ、それをずらしながら二元論から一元論へ「脱構築」していく、というスピノザ像を改めて考えてみたいって話なんです。

他方、ちくま学芸文庫の『省察』『哲学原理』の訳者である山田弘明先生が書いているように、中世スコラ哲学との距離というか関係というか、デカルトのスコラ哲学に対するスタンス、というところも興味深い。

これはとうてい手に負えないから、せめて匂いだけでもかいでおこうという話。
中世スコラ哲学って、なんか現代から観るととても不思議で、魅力的なんですよねえ。

さて、久しぶりに腰を痛めて家に籠もる週末、軽いミステリーと交互にデカルトを読むのが楽しみです。
感想は後刻。

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