この本を読んでいると、だんだん苦しくなってくる。
書かれていることや書かれ方が問題なのではない。読んでいるうちに受け止めるこちら側の心の受容の容量を超えてしまうのだ。
言葉にならないことを言葉にすることは、苦しさそれ自体とはまた違ったレベルでの困難を抱えることになる。
この困難を乗り越えても私たちは存在の肯定を求め続けるものなのか?
これは、単なる問いではなくある種の切なさや闇に関わる辛さだ。
そう思う。筆者は穏やかな筆致でこれを書き進めているけれど、深くて重いリアルがそこにあるのを感じ、たびたび本を置いて深呼吸をしなければ読み進められないという感じになる。
看護士や福祉を職業とする人やそれを志す人にとっては瞳を逸らすことができない営みだし、それは職業の問題ではなくここで取り上げられているのはもちろん生きることのリアルそのものだ。私にもささやかな介護の体験や看取りの経験もある。教員として手出しのできない困難の前で手をこまねいていた負い目もある。
そういう諸々がどっと、心の中から読んでいるうちに召喚されてくる。
難しいことは、書いていない。平易な言葉で、介護や福祉の現場の聞き取りを中心に書かれていく。
しかし、読み手はある種の覚悟が必要になる、そんな種類の本な気がする。
ぜひとも一家に一冊常備されたい。
ただし、読むのは体調に万全を期してから、って思うのはちと大袈裟かな。