素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

絶滅と進化-《絶滅した日本のゾウのはなし》 その「補遺編」として-(3)

2022年09月12日 14時33分36秒 | 絶滅した日本列島のゾウたち

絶滅と進化-《絶滅した日本のゾウのはなし》
    その「補遺編」として-(3)



 絶滅と進化 日本の古代ゾウの場合(上)

 今から10年ほど前(2011年)のことですが、国連環境計画(UNEP)の下部組織、世界自然保全モニタリングセンター(WCMC:World Conservation Monitoring Centre)およびカナダのノバスコシア州にあるダルハウジー大学(1818年設立)など、いくつかの研究機関の専門家達によってまとめられた報告書によりますと、地球上に生息している生物の種数は約870万種であるとのことです。


 その内訳は、動物777万種、植物29万8000種、菌類61万1000種で、約75パーセントが陸上生物種で650万種あり、約25パーセント220万種が海洋生物種です。

 WCMCの報告よりも3年ほど前のことになりますが、わが国の政府がまとめた『平成20年版環境循環型社会白書』(環境省編、2008年)の第6章「自然環境の保全と自然とのふれあいの推進」では、「全世界の既知の総種数は約175万種で、このうち、哺乳類は約6,000種、鳥類は約9,000種、昆虫は約95万種、維管束植物(種子植物とシダ植物で、茎・葉・根を備え栄養等吸い上げる導管を有する植物をいう)は約27万種」と記されております。ここで言う総種数175万種とは、はっきり判明している種数だけだと思います。

 また、『同白書』(2008、H.20)は、「まだ知られていない生物も含めた地球上の総種数は大体500万~3,000万種の間という説が多い」とも述べています。そんなわけで、地球上の種数は、WCMCが2011年に報じた870万種で確定しているわけではありません。しかし、WCMCの数値(870万種)が広く使われていることは事実です。

 いろいろ調べてみますと、地球上では1日に100種くらいが絶滅しております。種が絶滅すると言うことは、その種がこの地球上に存在しなくなるということなのです。その一方で、新たな種が発見されていますし、進化した種も多く見つかっています。

 生物が絶滅と進化を繰り返す過程では、多様化した生物の種が、現代社会における人間の生活活動によって絶滅の危機に瀕しているいわゆる絶滅危惧種と言われる種も増えています。専門家の間からは、地球上の哺乳類、鳥類、両生類の既知の種の中で、現在およそ10パーセントから30パーセントが絶滅の危険にさらされている絶滅危惧種だという警告が出されています。

 地球史46億年にわたる地質時代を紐解いたとき、生物種は常に絶滅と進化を繰り返して来ました。日本に生息していた古代ゾウも同じ道を歩んだのです。古代ゾウの祖先を辿るには、化石を手掛かりにするしかありません。ゾウの祖先は、これまで分かっていること、それはアフリカ北部で生まれたということです。

  アフリカ大陸は、地質時代で表わしますと、新生代の古第三紀漸新世と新第三紀中新世との境に当たるおよそ2300万年前から中新世の1800万年前頃までは、ユーラシア大陸と陸続きで、繋がっていたことが古地図から知ることができます。その時代にゾウなど大型の草食獣がユーラシア大陸の東縁の方にまで移動して来たものと考えられます。

 古第三紀漸新世の頃は、まだ日本列島は存在していませんで、大陸の一部であったと言われています。

 ところで、ゾウの祖先についてですが、長鼻類と言うにはどれも鼻が短く、上顎と下顎に大きな牙を持っていました。日本にいた古代ゾウの祖先としてよく知られているゾウの仲間、ゴンフォテリユウム アネックテンス(学名:Gomphoterium annectens)も同じでした。

ゴンフォテリユウム科のゾウの仲間も、気の遠くなるような年月をかけて、アフリカ大陸北部から離れて、ユーラシア大陸へと長い旅(移動)をして来たと考えられています。

 地質時代でいいますと、古第三紀の終わりで漸新世の末期から新第三紀の初め中新世の初期(2500万年前から1900万年前)のことです。湊正雄監修『日本列島の生い立ち』(築地書店、1973年)の古地図によりますと、新第三紀中新世のはじめ頃になりますと、火山の大噴火も活発で地殻に大きなひび割れが生じ、新しい活動が起こりました。

 そのため大陸の東縁の岩盤がゆっくりとずれ動き、大陸の一部が島として切り離されました。その切り離された島々にゴンフォテリユウム アネクテンスも移動して生息するようになったものと思います。

 少し話が横道に逸れますが、国立科学博物館や読売新聞社などが共同で「太古の哺乳類展-日本の化石でたどる進化と絶滅-」を開催(2014年7月12日から10月5日)した際、ゴンフォテリユウム アネクテンスゾウの下顎と部分頭骨を展示していたのを覚えています。その説明書きに、新第三紀中新世前期とあります。今から凡そ2303万年前のことだと考えられます。

 資料(国立科学博物館・読売新聞社編集、冨田幸光執筆『太古の哺乳類展-日本の化石でたどる進化と絶滅-』2014年)を見直しますと、化石の産地は、岐阜県可児市と表記してありますが、以前は岐阜県可児郡御嵩町でした。

 また、調べて見ますと、化石が発掘された産地周辺の地層は、瑞浪層群平牧層であることも分りました。なお、前掲資料の「出品リスト」の欄には、上述の化石の所蔵先が瑞浪市化石博物館となっています。

 次回は、何故日本をはじめ世界各地に広がった古代ゾウの祖先ゴンフォテリユウムが絶滅してしまったのか、その原因などを少しばかり考えてみたいと思います。