ハヤシライスを食べたくなって。(池波正太郎風に)
市中見廻りの途次、
何の気なしに通りすがった店先の「ハヤシライス」の文字に
ふ、と興趣をそそられることは、
気ぜわしい日常のなかで
「安らぎ」ともいうべきものを、自ずと求めていることにほかならぬ。
甘めのデミグラスソースに煮込まれた、
やわらかい牛肉と、しゃっきりとした玉葱。
それらと、白い飯との饗宴。
いつもは行かぬ、若者の集うパルコの地下で、この文字を目にし、
「テンジン バル タ〇ノヤ」の暖簾をくぐった平蔵の、
これは「勘ばたらき」というものだったのやも知れぬ。
しばし瞑目するほどなく、
卓上に運ばれた「それ」を見やり、
「む。やはり・・・」と胸中でつぶやく平蔵であった。
なにが「やはり」なのだろうか。
この時、平蔵はまだひと匙をも口にしてはいない。
いないが、平蔵の舌の「冴え」をみくびった店が
逃げおおせたためしはない。
一口。
次の刹那。
立ち上がるなり、
「盗食改メ、長谷川平蔵である!
この、不届き者めら!缶から出したデミグラスソースをそのまま温め、わずかばかりの肉と玉葱、
あまつさえそれをシャアシャアとハヤシライスと偽り、罪なき者たちをたばかる。
重ぬるに、690円もの暴利をむさぼる不埒な振る舞い、お白州に引き出すまでもない!
この場で成敗してくれるわ!」一喝。
「それ」をものの5分で成敗し、
「どれ、飯の食いなおしじゃ」とひとりごちる平蔵の
背中に秋の風が冷たい
天神の昼下がりであった。
二度と行かぬわ! シャキーン!
市中見廻りの途次、
何の気なしに通りすがった店先の「ハヤシライス」の文字に
ふ、と興趣をそそられることは、
気ぜわしい日常のなかで
「安らぎ」ともいうべきものを、自ずと求めていることにほかならぬ。
甘めのデミグラスソースに煮込まれた、
やわらかい牛肉と、しゃっきりとした玉葱。
それらと、白い飯との饗宴。
いつもは行かぬ、若者の集うパルコの地下で、この文字を目にし、
「テンジン バル タ〇ノヤ」の暖簾をくぐった平蔵の、
これは「勘ばたらき」というものだったのやも知れぬ。
しばし瞑目するほどなく、
卓上に運ばれた「それ」を見やり、
「む。やはり・・・」と胸中でつぶやく平蔵であった。
なにが「やはり」なのだろうか。
この時、平蔵はまだひと匙をも口にしてはいない。
いないが、平蔵の舌の「冴え」をみくびった店が
逃げおおせたためしはない。
一口。
次の刹那。
立ち上がるなり、
「盗食改メ、長谷川平蔵である!
この、不届き者めら!缶から出したデミグラスソースをそのまま温め、わずかばかりの肉と玉葱、
あまつさえそれをシャアシャアとハヤシライスと偽り、罪なき者たちをたばかる。
重ぬるに、690円もの暴利をむさぼる不埒な振る舞い、お白州に引き出すまでもない!
この場で成敗してくれるわ!」一喝。
「それ」をものの5分で成敗し、
「どれ、飯の食いなおしじゃ」とひとりごちる平蔵の
背中に秋の風が冷たい
天神の昼下がりであった。
二度と行かぬわ! シャキーン!