「笑熱大陸」・「矢島大陸」で、本家「情熱大陸」のナレーター窪田等さんを起用したのは、正統派とんねるずパロディともいえる手法でした。
窪田さんが、情熱大陸におけるのとまったく同じ、あのやわらかで生真面目なトーンで「足袋という漢字が読めないバカなディレクターを、ストロベリーはしかたなく蹴った」とかなんとか語っちゃうことによって、台本のおもしろさはさらに倍の倍増幅するわけです。
ナレーターが醸し出すおもしろさというものに、とんねるずは早くから気づいていました。
笑熱大陸とおなじ文脈で「みなさんのおかげです」をもりあげてくれた功労者のひとりは、「仮面ノリダー」のナレーションを担当した中江真司さんでしょう。
中江さんはご存じの通り、本家「仮面ライダー」シリーズでもナレーションをつとめた方でした。
幼い頃仮面ライダーを見て育った世代にとっては、ライダーのかっこいい活躍と同じくらいに、中江さんの渋いナレーションが脳に刷り込まれているはず。
仮面ライダーといえば中江さん。中江さんといえば仮面ライダー。
だから、仮面ノリダーで本家そのまんまのナレーションがながれてきたときには、だれもがビックリしたんではないでしょうか。
しかも、ナレーションをただ引き受けただけでなく、とんでもなくすっとんきょうな台本をあれほど真剣に読んでくれるとは!
おかげですスタッフがどのように中江さんを口説いたのか、あるいは中江さんご本人がシャレのわかる人ですすんでやってくれたのか、そのへんの事情はよくわかりません(ノリダー放送中は東映サイドの許可すら降りてなかったといいますし・・・)が、いずれにしても、中江さんの起用は大正解でした。
本家本元をうま~くパロディにとりこむこと。それによって、とんねるずのパロディは、本家だけがもつ品格のようなものを手に入れることができる。これは「パロディの神様」の記事のなかでも考えたことがあります。
「仮面ノリダー」は、おやっさんこと小林昭二氏の出演や、オープニングタイトルを本家そっくりに作りこんでいた点だけでも、すでにパロディとして相当ていねいなつくりになっていました。
しかしやはり、中江さんがナレーションを担当してくれたことは大きかったと思うのです。
ナレーションというのは、ある番組なりドラマなりの、文字どおり「声」であり、フレームであり、カラーでしょう。
情熱大陸といえば、窪田等。
ぶらり途中下車の旅といえば、滝口順平*。
ちびまるこちゃんといえば、キートン山田。
シルクロードといえば、石坂浩二。
すばらしい世界旅行といえば、久米明(例が古い・・・)
と、いうように、おなじみのナレーターの声を聞くやいなや、番組がふっと脳裏にうかぶものです。
だから、「仮面ライダー」ごっこを完璧にやりとげるためには、やはりどうしても中江さんの起用は不可欠だった。
そして、中江さんは完璧だった!
「○○男は弱いと読んだため、ノリダーは半分しか変身しなかった!」
「○○男の△△攻撃は、意外と弱かった!」
こういうセリフを、あの鬼気迫るトーンで言われると、もうそれだけでおもしろかった・・・
しかし、「みなさんのおかげです」には、もうひとりのナレーターがいました。
学園コントやドラマコント、映画パロディなどなど、ノリダー以外のほとんどのコントでナレーションを担当してくれた、戸谷公次さんです。
まるでシリアスドラマかドキュメンタリーのナレーションのような語り口で、
「その時ノリ子は思った!!」
「ノリ男はまたチェッカルズの一員たちにだまされた!!」
という感じのバカバカしい台本を、真剣かつノリノリで読んでくれたのが戸谷さんでした。
告白しますとわたくし、つい最近まで、中江さんと戸谷さんを混同してました。
中江さんがおかげですのすべてのナレーションをやっていたと思っていたんです。
なーんてこと言うと、声優ファンのみなさんに叱られそうだけど・・・
「おかげです」を思い出していただけると、わたしの勘違いも無理ないと思ってもらえるのではないでしょうか!?
中江さんと戸谷さんの声質や語り口、非常に似ていたと思うんです。
どちらも低音の渋い声。きわめて真剣な口調。
おふたりのナレーションにこういう統一感をもたせる演出が、「おかげです」という番組の基本的なトーンを作っていた。
若いとんねるずのふたりが大暴れするコントバラエティでありながらも、渋いナレーションが浮わついた調子をおさえて、一本芯の通った重厚さ、深刻ささえ感じられたのです。
それは一種の異化効果だったといえるでしょう。
バラエティの常識では考えられないドラマティックなナレーションを施すことによって、視聴者に違和感を生じさせ、そのズレから新しいバラエティのおもしろさを引き出す、という・・・
なーんて文章にしてみると、ずいぶんおおげさなことになっちゃいますが、しかしこうして考えてみると、中江・戸谷両氏の起用というのは、実は非常に高度なテレビバラエティのテクニックだったんだな~と・・・いま実感しました。
似たような手法は、とんねるず以降のバラエティ番組でも時々使われるようになりましたが、「おかげです」ほどのセンスの良さを感じたことはいまだにありません。
誰にでも真似できる手法じゃあない、ってことです。
中江さんも戸谷さんもすでに故人となられました。
数多くの業績をのこされたおふたりですが、とんねるずファンにとっては、いつまでも「みなさんのおかげですの声」として記憶に残ってゆくことでしょう。
ほんとうに、ナレーターのみなさんのおかげでした・・・!
*滝口順平さんのお名前を「滝田順平」と誤って表記しておりました。訂正してお詫びします。
窪田さんが、情熱大陸におけるのとまったく同じ、あのやわらかで生真面目なトーンで「足袋という漢字が読めないバカなディレクターを、ストロベリーはしかたなく蹴った」とかなんとか語っちゃうことによって、台本のおもしろさはさらに倍の倍増幅するわけです。
ナレーターが醸し出すおもしろさというものに、とんねるずは早くから気づいていました。
笑熱大陸とおなじ文脈で「みなさんのおかげです」をもりあげてくれた功労者のひとりは、「仮面ノリダー」のナレーションを担当した中江真司さんでしょう。
中江さんはご存じの通り、本家「仮面ライダー」シリーズでもナレーションをつとめた方でした。
幼い頃仮面ライダーを見て育った世代にとっては、ライダーのかっこいい活躍と同じくらいに、中江さんの渋いナレーションが脳に刷り込まれているはず。
仮面ライダーといえば中江さん。中江さんといえば仮面ライダー。
だから、仮面ノリダーで本家そのまんまのナレーションがながれてきたときには、だれもがビックリしたんではないでしょうか。
しかも、ナレーションをただ引き受けただけでなく、とんでもなくすっとんきょうな台本をあれほど真剣に読んでくれるとは!
おかげですスタッフがどのように中江さんを口説いたのか、あるいは中江さんご本人がシャレのわかる人ですすんでやってくれたのか、そのへんの事情はよくわかりません(ノリダー放送中は東映サイドの許可すら降りてなかったといいますし・・・)が、いずれにしても、中江さんの起用は大正解でした。
本家本元をうま~くパロディにとりこむこと。それによって、とんねるずのパロディは、本家だけがもつ品格のようなものを手に入れることができる。これは「パロディの神様」の記事のなかでも考えたことがあります。
「仮面ノリダー」は、おやっさんこと小林昭二氏の出演や、オープニングタイトルを本家そっくりに作りこんでいた点だけでも、すでにパロディとして相当ていねいなつくりになっていました。
しかしやはり、中江さんがナレーションを担当してくれたことは大きかったと思うのです。
ナレーションというのは、ある番組なりドラマなりの、文字どおり「声」であり、フレームであり、カラーでしょう。
情熱大陸といえば、窪田等。
ぶらり途中下車の旅といえば、滝口順平*。
ちびまるこちゃんといえば、キートン山田。
シルクロードといえば、石坂浩二。
すばらしい世界旅行といえば、久米明(例が古い・・・)
と、いうように、おなじみのナレーターの声を聞くやいなや、番組がふっと脳裏にうかぶものです。
だから、「仮面ライダー」ごっこを完璧にやりとげるためには、やはりどうしても中江さんの起用は不可欠だった。
そして、中江さんは完璧だった!
「○○男は弱いと読んだため、ノリダーは半分しか変身しなかった!」
「○○男の△△攻撃は、意外と弱かった!」
こういうセリフを、あの鬼気迫るトーンで言われると、もうそれだけでおもしろかった・・・
しかし、「みなさんのおかげです」には、もうひとりのナレーターがいました。
学園コントやドラマコント、映画パロディなどなど、ノリダー以外のほとんどのコントでナレーションを担当してくれた、戸谷公次さんです。
まるでシリアスドラマかドキュメンタリーのナレーションのような語り口で、
「その時ノリ子は思った!!」
「ノリ男はまたチェッカルズの一員たちにだまされた!!」
という感じのバカバカしい台本を、真剣かつノリノリで読んでくれたのが戸谷さんでした。
告白しますとわたくし、つい最近まで、中江さんと戸谷さんを混同してました。
中江さんがおかげですのすべてのナレーションをやっていたと思っていたんです。
なーんてこと言うと、声優ファンのみなさんに叱られそうだけど・・・
「おかげです」を思い出していただけると、わたしの勘違いも無理ないと思ってもらえるのではないでしょうか!?
中江さんと戸谷さんの声質や語り口、非常に似ていたと思うんです。
どちらも低音の渋い声。きわめて真剣な口調。
おふたりのナレーションにこういう統一感をもたせる演出が、「おかげです」という番組の基本的なトーンを作っていた。
若いとんねるずのふたりが大暴れするコントバラエティでありながらも、渋いナレーションが浮わついた調子をおさえて、一本芯の通った重厚さ、深刻ささえ感じられたのです。
それは一種の異化効果だったといえるでしょう。
バラエティの常識では考えられないドラマティックなナレーションを施すことによって、視聴者に違和感を生じさせ、そのズレから新しいバラエティのおもしろさを引き出す、という・・・
なーんて文章にしてみると、ずいぶんおおげさなことになっちゃいますが、しかしこうして考えてみると、中江・戸谷両氏の起用というのは、実は非常に高度なテレビバラエティのテクニックだったんだな~と・・・いま実感しました。
似たような手法は、とんねるず以降のバラエティ番組でも時々使われるようになりましたが、「おかげです」ほどのセンスの良さを感じたことはいまだにありません。
誰にでも真似できる手法じゃあない、ってことです。
中江さんも戸谷さんもすでに故人となられました。
数多くの業績をのこされたおふたりですが、とんねるずファンにとっては、いつまでも「みなさんのおかげですの声」として記憶に残ってゆくことでしょう。
ほんとうに、ナレーターのみなさんのおかげでした・・・!
*滝口順平さんのお名前を「滝田順平」と誤って表記しておりました。訂正してお詫びします。
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