とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

流星・胡蝶・剣

2006年03月07日 18時14分36秒 | 香港的電影
『流星・胡蝶・剣』
(Killer Clans チュー・ユアン監督 1976 香港)


チャン・チェと並んで、70年代香港映画帝国ショウブラザーズの雄といわれたチュー・ユアン(楚原)監督。彼はもともとドラマを得意とする監督で、『七十二家房客』に代表される人情悲喜劇を多く作っていました。そんな彼がある時武侠映画を撮ってみたらば、これがまあ大傑作!それ以降、楚原は数多くの武侠片を世に送ったのであります。

『流星・胡蝶・剣』は、スター不在の武侠映画です。チャン・チェが『少林寺列伝』『続・少林寺列伝』などでオールスター映画を次々と撮っていたのとは対照的に、楚原はあえて(あるいはやむをえず?)当時トップスターではない俳優たちを起用しました。

それが、結果的には大成功。
というのも、この物語が、組織の首領の命をめぐる、だましだまされ、陰謀どろどろ渦巻くハードボイルドサスペンスだから。あえて比較するなら、『ユージュアル・サスペクツ』のような感じでしょうか。「ラストは絶対に他人に言わないでください」というコピーが当時はやりましたが、『流星・胡蝶・剣』もネタばらしご法度!それほどに展開は二転三転、観る者を最後までぐいぐいひっぱっていく、サスペンスフルなストーリーです。

『ユージュアル・サスペクツ』もそうだったように、主人公といえる大スターがいないので、誰が結局いちばんの悪者なのか、観ている方も確信がもてない!で、後半過ぎに黒幕が発覚したあとも、いずれ劣らぬ剣の達人たちの闘いは、誰が征するのかわからない!こんなスリリングな映画、めったにあるもんじゃありません。

命をねらわれる首領を演じるのは、『新・片腕必殺剣』のクー・フェン(谷峰)。今回は悪役ではなく、したたかでタフなボスを怪演しています。彼はハンサムだし、功夫強いし、演技はうまいし、名優です。

他には、心やさしき殺し屋・孟星魂に宗華、首領の娘・小蝶に井莉、首領の右腕・香川に岳華。こう見ていただくと、登場人物たちの名前がとってもロマンチックで美しいのがおわかりでしょう。武侠小説の大家・古龍による原作の特徴です。わたしは古龍の小説を読んだことはないんですが、原作を映画化した作品はどれも大好きです。

楚原は、古龍の小説をいくつも映画化しました。その美しくもきびしい世界観が、楚原の演出とぴったりマッチしています。漢詩の美文をふんだんに取り入れたセリフもすばらしい。スクリーンに所せましとひしめく、ぜいたくな調度品の数々にもため息。

『流星・胡蝶・剣』の後、楚原はティ・ロン(狄龍)を主演にむかえて、古龍原作の作品を立て続けに撮ります。『マジックブレード(天涯明月刀)』、『多情剣客無情剣』など。<楚原+古龍+狄龍>の黄金タッグの先鞭をつけたのが、この『流星・胡蝶・剣』だとも言えるでしょう。

「やさしくなければ江湖では生きられない。タフでなければ江湖で生きていく資格がない・・・」
こんなフレーズがよく似合う、武侠片の大傑作です!





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