ナレーションでは母音が重要な役割を果たすことは、これまで何度も述べたかと思います。その母音ですが、“出るようになる”だけではあまり役を果たしません。聞く人の予測の外に運ぶことができれば、大いにその役を果たすのですが・・・。どういうことかというと、まず「会話の時」と「読みの時」の違いを考えてみて下さい。「会話の時」は、次に口から発する言葉は前もって用意されている訳ではなく、発する直前に思いつくものです。それに対し「読みの時」は次の文言が用意されており、当然のことながら目に入ってきます。で、読みの勉強をすると、必ずと言って良いほど『先を読みなさい』と教わります。つまり次の文言は、前の文言を言っている時に既に口から出す体制が作られているのですね。そうなると、前の文言の最終音から大きく逸脱することが難しくなるのです(…わかるかなあ?)。しかし「会話の時」には、しょっちゅう逸脱します。どうしてそうなるのかと言うと、次の文言を前もって用意せずに、その時その時で口から発しているから、どこにでも自由に運べるのです。ただし会話というものは、目の前やすぐ横にいる人に向かってのものが多く、音を大きくする必要がありません。そうです、小さい声なら大きな表現、大きい声だと小さな表現になってしまうのです。大きな声で大きな表現をするためには、それなりの鍛錬が必要になるのですが・・・続きは次回以降に。
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