最近、あるプロダクションの養成所に通っている知人の娘さんの“しゃべり”を見る機会がありました。年齢は21歳、高校を卒業してから二年間声優養成の専門学校に通い、現在の養成所に行き始めておよそ一年。前々からその手の養成所に通っているのは知っていましたが、本人から相談があったのは初めてでした。子供の頃を良く知っている訳ではなかったので、じっくりと話をしたのも今回が初めてのことでした。とりあえず、自分の選んできた題材(ナレーションや台詞)を聞かせて貰いました。世間一般的には21歳といえば「若い!」ということになりますが、私達の業界では決してそんなことはありません。劇団で子役からスタートし、同じような年齢で〝この道十年〟という役者が沢山存在するからです。それを考えると、スタートした時点である程度の基礎的な力がやはり必要なのではないかと思いますね。第一に声が大きいこと・・昔から言われていますが、声の大きい奴は勝ちます。そして、アクセント・イントネーションが共通語のそれであること・・東京生まれでも最近は怪しい。さらに、発音の明確さが、鍛錬すれば改善できる範囲内であること・・致命的なものがあれば厳しいか。といったものが備わっていてはじめて、言葉が相手に伝わるのです。ですから、それが無ければ新たに作らねばならないことになりますが・・・・そこで年齢の問題が出て来るのです。ここで、陸上競技の選手のことを考えて下さい。足の速い人は、子供の頃から速いですよね。その子供の時に足の速い人が、鍛錬を重ねて国体やオリンピックに行くのです。つまり、肉体的な基礎体力を子供の頃から持ち合わせているのです。もちろん、後年の努力でオリンピックに出る方もいないとは言いません。しかし、それは鍛錬をした時点で、伸びる筋肉に逆行する筋肉や動き(ハンデのようなもの)が身に付いていないことが条件です。従って、そのような立場の人は相当な努力を積み重ねて行かないと、目標に近づくことはできません。私は、私達の職業もそれと同じと考えています。基礎的な体力、つまりナレーターとしての基礎力が備わった上に鍛錬を重ねていくことが理想でしょう。その基礎力、そして鍛錬の方法は?それは・・・次回に。
ナレーター・アナウンサー養成塾 http://www.mars.dti.ne.jp/~expert/
塾長 ナレーター・伊藤英敏