平日の午後は、汐留にある日本テレビの報道局に詰めています。ニュースなので、極力“正しい日本語”でナレーションにあたるようにしているのですが、これがまた難しいのです。例えば『藁をもつかむ』のか『藁をもすがる』のか・・・正解は前者。“すがる”を使うのは、『藁にもすがる』です、ごちゃ混ぜになったのですね。調べてみると後者を使う人が7割を占めるとかで、これもびっくりです。ニュースは当然のことながら、新しさが命。急いで書き上げる原稿に、思わず使ってしまう間違った日本語が出てしまうのは否定できません。最近多いのは『怪我を負う』という言い方です。ご存知のように“怪我”という言葉には、骨折や切り傷といった傷そのものの意味だけではなく、その傷を体が負う、という意味が含まれています。ですから、『怪我を負う』は『傷を負うことを負う』という意味になってしまうのです。傷は“負う”ものですが、怪我は“する”ものです。私たちの現場は、マイクの前、つまり最前線にあたります。大げさに言うと、そこで最終チェックをしないと、おかしな日本語はそのままONAIRされてしまうことになるのですから、思ったより責任が重い現場だということでしょうね。
ナレーター・アナウンサー養成塾 塾長 ナレーター・伊藤英敏
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