日本発!歴史に刻むワールドタイトル
「第30回 ジャパンカップ」
登録馬考察
馬連の相手候補
エイシンフラッシュ(牡3・藤原英昭)は、今年の日本ダービー優勝馬。秋シーズンの初戦となった神戸新聞杯で2着に入ったあと、筋肉痛が出て菊花賞を回避したが、症状は軽く、すぐにジャパンカップへ目標を切り替えて順調に調整されている。ハイレベルとされる現3歳世代の頂点に立った大物。古馬とは初対戦となるこの大舞台でどんな走りを見せるのか、大いに注目したい。
ナカヤマフェスタ(牡4・二ノ宮敬宇)は、今春の宝塚記念でブエナビスタ(2着)を破ってGI 初制覇。その後はフランスに長期遠征し、フォワ賞(国際G2・芝2400m)2着を経て、世界最高峰レースの凱旋門賞(国際G1・芝2400m)でも2着と大健闘した。今回は帰国初戦とあって体調面がポイントになるが、陣営は美浦トレーニング・センターに戻ってからの気配を慎重に見極めた上で、ジャパンカップ出走にゴーサイン。ワールドクラスの走りが府中のターフで見られそう。
ハイレベルな日本勢の中でも、際立った戦績を誇っているのがブエナビスタ(牝4・松田博資)。これまでに、阪神ジュベナイルフィリーズ、桜花賞、オークス、ヴィクトリアマイル、天皇賞(秋)と国内GI・JpnI を5勝。今春には海外にも遠征し、ドバイシーマクラシック(国際G1・芝2410m)で2着に好走した。4か月ぶりの実戦だった前走の天皇賞(秋)を2馬身差で圧勝と、臨戦過程も文句なし。ビッグレース6勝目へ向けて、期待は高まるばかりだ。
オウケンブルースリ(牡5・音無秀孝)は、2008年の菊花賞馬。昨年のジャパンカップでも、後方待機から素晴らしい追い込みを見せ、優勝したウオッカからハナ差の2着まで追い上げている。1年近い休養から復帰した前走の京都大賞典は、プラス22キロという大幅な馬体重増だったが、勝ち馬のメイショウベルーガから0秒1差の2着に入って地力健在をアピール。その後に歩様の乱れが出て天皇賞(秋)は回避したが、大事には至らず、11月に入ってから栗東坂路で追い切りを再開。臨戦態勢を着実に整えてきている。
ローズキングダム(牡3・橋口弘次郎)は、昨年暮れの朝日杯フューチュリティSを制してJRA賞最優秀2歳牡馬のタイトルを獲得。3歳クラシックレースでは、皐月賞4着、日本ダービー2着、菊花賞2着と勝ち切れなかったが、常に上位争いを演じてきた。前々走の神戸新聞杯(阪神・芝2400m)では、ダービー馬エイシンフラッシュを激しい叩き合いの末、2着に退けて優勝しており、3歳世代でトップクラスの力があるのは間違いない。
メイショウベルーガ(牝5・池添兼雄)は、エリザベス女王杯2着からの臨戦。優勝したイギリスのスノーフェアリーには4馬身差の完敗だったが、3歳牝馬三冠のアパパネや一昨年の覇者リトルアマポーラを外から捻じ伏せるという、強いレース内容だった。前々走の京都大賞典では、一昨年の菊花賞馬オウケンブルースリ(2着)を完封。中1週とレース間隔は詰まっているが、今の充実ぶりなら上位食い込みも十分ありそうだ。
外国馬は、
ジョシュアツリー JOSHUA TREE (アイルランド)
牡3歳 鹿毛 (2007年生まれ アイルランド産) 通算6戦3勝
歳秋にアスコット競馬場で行われた8ハロンのG2 ロイヤルロッジSを制し、今年の英ダービーへ向けたアンティポスト(前売り)で上位人気に支持されるなど、早くから素質を高く評価されていた馬である。ところが、小さな故障が重なって今年の春は出走態勢が整わず、3歳初戦は8月17日に行われたセントレジャーの前哨戦、G2 グレートヴォルティジャーSとなった。ここで3着と悪くない競馬をしたあと、英セントレジャーでは5着と敗れたが、古馬との初対決となったウッドバイン競馬場のカナディアンインターナショナルSで見事にG1 初制覇を果たした。もともとの期待馬がようやく本領を発揮しはじめたわけだが、使い込まれていないから馬もフレッシュで、前走からの更なる上積みも期待できよう。末脚を活かすタイプだけに、府中の馬場も合いそうである。ジャパンカップにはあまり興味がないと言われているA.オブライエン調教師が送り込んでくるからには、相応の勝算あっての参戦と見るべきだろう。
マリヌス MARINOUS (フランス)
牡4歳 黒鹿毛 (2006年生まれ フランス産) 通算19戦4勝
晩成タイプで3歳クラシックには縁がなかったが、3歳11月に3度目の準重賞に挑んでこれを制し、4歳8月にG2 ドーヴィル大賞を制して重賞初制覇を果たした馬である。ドーヴィル大賞のレースぶりには今後が楽しみだと思わせるものがあったが、しかしそれでも、この馬が10万ユーロの追加登録料を払って凱旋門賞に参戦と聞いた時には、「いささか無謀では」との印象を持ったものだ。しかも枠順にも恵まれず、直線は大外を追い込むという競馬になって、勝ち馬から6馬身差の6着というのは大健闘で、4歳秋を迎えて見た目の印象以上に強くなっていることを実証した。ドバイやカタールへの遠征経験があり、カタールでは勝利も収めている事から、アウェイでの戦いに対する適性も保持していると見て良い。地元では「無類の道悪巧者」と見られており、力の勝負には強いが、一方で速い時計の決着になった時、これに対応できるかどうかが鍵となりそうである。
モアズウェルズ MORES WELLS (フランス)
牡6歳 鹿毛 (2004年生まれ イギリス産) 通算33戦7勝
アイルランドのK.プレンダーガスト調教師の管理下にあって愛ダービー路線に乗った3歳春から、フランスへの移籍を経て今日まで、4シーズンにわたってトップ戦線でタフに駆け続け、この路線の重賞を4つ制している古豪である。G1 タイトルには手が届いていないが、愛チャンピオンS3着、前走のカナディアンインターナショナルSにおけるアタマ差2着などの実績があり、ほぼG1 級と認定してよい実力の持ち主だ。前述したように、前走で大西洋を越えてカナダに遠征し好成績を挙げている他、前々走でスウェーデンにも遠征してテビー競馬場を舞台としたG3 ストックホルムカップインターナショナルを制しているように、環境の変化を問わずアウェイでも自分の競馬が出来るのが特長である。馬場が硬くて時計の速い日本の競馬との相性は良くないと言われているSadler's Wells産駒だが、今年初戦となったリヨン・パリイの条件戦では、Firm(良)と言う欧州ではあまり見られない硬い馬場で勝利を収めており、この馬に関しては心配なさそうである。
ヴォワライシ VOILA ICI (イタリア)
牡5歳 芦毛 (2005年生まれ アイルランド産) 通算20戦11勝
20戦11勝という高い勝率を誇るイタリア調教馬ヴォワライシ。昨夏にフランスに遠征してG2 モーリスドニュイユ賞も制している事から、井の中の蛙というわけでは決してない。今年は春のキャンペーン終了後にたっぷりと約3か月の夏休みをとり、9月に復帰してジャパンカップが休み明け3戦目と、明らかにシーズン末のここを目標にしてきたローテーションには好感が持てる。しかも、9月19日にサンシーロ競馬場で行われたG3 フェデリコテシオ賞を勝って6つ目の重賞制覇を果たしたあと、11月7日にカパネッレ競馬場で行われたG1 ローマ賞2着と、上々のパフォーマンスを重ねて来日しており、調子は間違いなく良さそうである。主戦ジョッキーは日本を良く知るM.デムーロ騎手で、この馬の来日にあたっては彼のアドバイスもあったはずだ。1995年のジャパンカップを優勝したランド(ドイツ)が、日本を良く知るM.ロバーツ騎手の進言で来日したのと同じパターンだ。
フィフティープルーフ FIFTY PROOF (カナダ)
せん4歳 栗毛 (2006年生まれ カナダ産) 通算9戦4勝
超大型馬で小脚が利くタイプではないため、もっぱら先行する競馬につとめ、ここまで9戦して7連対と堅実なパフォーマンスを続けているのがフィフティープルーフである。雄大な馬体を活かし切ったレースが出来るようになったのはこの秋のことで、9月19日にウッドバイン競馬場で行われたG1 ノーザンダンサーターフSが重賞初挑戦となったが、あわや逃げ切りかという競馬で英国から遠征してきたレッドウッドの半馬身差の2着に健闘。カナダの芝路線にニュースター誕生と持てはやされた。前走のG1 カナディアンインターナショナルSでは5着と敗れたが、勝ち馬のジョシュアツリーに1馬身半しか離されておらず、大崩れしたわけではない。9戦4勝とキャリアの浅い4歳馬だけに伸びしろはたっぷりとありそうで、この馬にとっておあつらえ向きの舞台と言える広い府中の芝コースで、世界を驚かせる大駆けがあってもおかしくはないと言える。国外のレースに出走するのはこれが初めてだけに、環境の変化に戸惑っていないか、直前のチェックは重要だろう。